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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
4章 Mayhem City  傀儡師と悪魔女史とネズミ捕り
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5話


砂漠に二つの人影がぽつんとある。

黒い外套にフードが付いており、顔はあまり見えない。

うち一つはシルエットから女だと言うことが伺い知れた。

女性のシルエットの方が空を見上げて言った。


―眩しい、ここの太陽は意識高いのね。

アタシたちの街じゃ陽は鬱で沈みっぱなしだから、新鮮に感じるわ。

ま、どうでもいいけど…



「さて、じゃあ早速潜入していくからな、エレーニ。」

「糞餓鬼、アンタの元地元なんだからさっさとジョンを探しだしてよね。それと夜よりもあたし弱くなっているみたいだからアンタがカバーするのよ。」

「クソガキじゃねぇーわ! このバカ女。それより俺の息のかかった傭兵が迎えに来るからさっさと待ち合わせ場所までいくぞ!」



荒野の中に佇んでいたあばら家で待っていると

兵士風の格好の男が一人車で迎えに来た。


全く、ウチのオーナーが迷子だか行方不明になってるとはいえ…

何でこんな砂漠なんてある田舎に来なきゃいけないわけ?

窓の外を眺めながら思わず独り言ちた。


行方不明のリーダーの手掛かりは一つだけ。

墓所のポータルと繋がっているこの荒野のポータルの岩山付近で

見つかった朽ちた鳥型傀儡が咥えていたノート。

どうやらジョンは横にいるクソガキの元居た勢力の都市に潜入しているみたいだけれど。

何かしらの理由があって戻って来れない? 内容はなんだっけ。

ええと… メイヘム、潜入、マチルダ、契約。だったかしら? 意味不明だけど。

考えてみても良くわからない。


あれ? そういえば何でジョンはあたしを総長代理にしたんだろう。

え? もしかして何かしばらく戻って来ないとかアタシに言ってたっけ?

急に自分の連絡ミスかと思い、糞ガキを見る。


なんだよ? という顔をして見返してくるが、何でもないと答える。

いや、そんなはずない。そうね、あたしがそんな失態犯すはずないわ。

あーあ、さっさとジョンを見つけて連れて帰ろう。

気が抜けると同時に欠伸が出た。全く太陽がある街は眠いわ。


荒野を抜けて20分ほど車を走らせると道の両脇はトウモロコシ畑に変わる。

そこにくたびれた一軒家。

ここがアインの知り合いの持っている隠れ家の一つらしい。


ふぅん、しょぼくれてるけど悪くないところね。

定年して年金生活に入ったらこういう所に根を下ろすのもいいかもしれない。

家の中はなかなかに広くて、薄汚れた家具と、いくつかの死体にハエや蛆が湧いているくらい。

午後の日差しが窓から差し込んできている。陽射しに当たったら弱くなりそうだけど

気持ちよさそうに見えた。光を見てると眠くなってきた。昼寝でもしたい気持ちを抑えて家を見て回る。


ガレージには人間の死体が吊るしてあった。


ドサッ


後ろで人間が倒れる音がした。

ここまで送ってくれた男をアインが始末したところだった。


「……アンタ、何やってんの?」

「いや、ちょっと…」


クソガキは地面を見ながら唇に人差し指の第二間接を当てて何か考え込んでいるようだった。


「おい、糞女。 もしかして嵌められてるかもしんない。」

「誰に?」

「わ、わかんない…」


子犬のような目でこちらを見てくる。


「アンタさ! 何いきなり嵌められた挙句子犬みたいな目で見てきてんのよ!」

「だ、だって! この傭兵の男が俺と通じているなんて誰にもバレてないと思ったんだよ!」

「チッ、まだ大したことは起こってないでしょ?」

「う、うん。」


「で、ここからどうする予定だったの?」

「ここでこの街の案内人をやっているやつと落ち合ってジョンについて調べてもらおうとしてたんだ。」

「案内人ね。ここに来るはずなの?」

「いや、今の奴に呼んでもらったから、どうなってるかわかんない、っていたぁ! 」

「いた? どこに?」



そこに…と言いながら吊るされた肉塊の一つを指す。


死んでるじゃない。頼りにならない奴ね。

取りあえず体から蝙蝠をいくらか出して

家の出入り口を見てこさせる、特に何もいないようだけど。

死体の感じからして経った今殺された感じでもないし当然か。


「アイツに不意打ちされただけでアンタ殺せると思われてたわけ? 」

「それは、流石にないから。だからこそ意味わかんないんだけど…」


このクソガキ。悪魔派で一番強い人間の一人とかほざいといて…

全く呆れた。


「やぁ、ヤァ、申シ訳ナイぃ。」


その時開けっ放しだったガレージのほうから人間が入ってきた。

清掃員のような服装をした中年の女性だった。

チッ、さっき蝙蝠出したのに。見逃しちゃってたか…

もうちょっとちゃんと調べりゃ良かった。


「誰?」

「わ、わかんない…」


アインは驚きの表情で女を見ている。


清掃用具のバケツとモップを壁に立てかけて、こちらを無言で向いた後。

口を大きく開ける。この女…

口を開き過ぎて出血して、顎まで外れている。

口からテープレコーダーのようなもの。


―おめおめと逃げ帰ってきた裏切り者には死を…


清掃員の女性がそれを吐き出した後

今度は自身の口で言う。


「ウラギリモノには死ヲ。」


途端、女性の体から黒い触手のようなエネルギー体が突き出して

暴れまわる。

黒い触手、いや炎のようなものがバチバチと鳴る。

音が振動を始めた。


咄嗟に近くのレコードプレイヤーからショットガンを作り出して女の頭部にぶっ放す。

頭が3分の一吹き飛ぶが、体から傷口から電気を纏った黒い手が出てくる。


何こいつ!


「やばい! 逃げろ!」

アインの掛け声と共に家から脱兎のごとく逃げ出す。


数瞬の後、


-----轟音


大爆発が一軒家を跡形もなく吹きとばした。

足が爆発に巻き込まれて欠損する、アインが咄嗟に肩を貸してくれた。

二度目の爆発が起こる。


クソガキがアタシをお姫様抱っこして逃げる。

脚の千切れた部位が変化して数百の血まみれの蝙蝠が飛び出していき、

蝙蝠たちは舞い戻って再びアタシの足になった。



「ば、ばれてる! 

離反したのがバレてる、MR・アドリエルに…」

アインがこの世の終わりのような顔をして呟いた。


「おい! アイン、アンタのファッキン元上司はどんだけ狭量なわけ? ふざけやがって!」

「と、とにかく一度戻ろう! 絶対体制を立て直したほうがいい!」

「はぁ? 何でわざわざ戻るのよ! 何しに来たと思ってるわけ?」

「きっとジョンも簡単に動けない事態なんだよ! 慎重にいこう、敵は強い! お前も昼は弱体化してるんだろ! さっさと逃げるぞ!」

「チッ、仕方ないわね。 この借りは10倍にして返してやるから!」


来た道を全速で引き返していると

半分機械のような人間達が道をうろついている。

アインに言われるがままにそれらに見つからないように逃げていく。




===================



---JOHN・SMITH(ジョン・スミス)


メイヘムシティ駅から真っ直ぐに歩いていくと

ホテルの廃ビルとホームセンターがあるストリートに向かった。


大きな交差点を渡りホームセンター向かいのカフェや床屋などが一列に並ぶ

建物を探すと『床屋の横の色んな店がはいってる建物』はすぐに見つかった。

元は何の建物だったのかはわからないがテナントを数十個程度は入れられる大きな施設。

大通りに面している箇所と屋内に店が並んでいた。そこ以外にも裏の方にビルとビルの

間に屋根を取り付けてアーケード街のようになっている通りがある。

全体的に薄暗く何か粘つくような雰囲気があった。


屋内の通路はショッピングセンターの様と形容して良いのか分からないが

低い天井と差し込む日光の少なさから裏にある陰気なアーケード街以上に殺伐としていた。

遠くからだとやっているのかも定かではない店が並び明らかに治安が悪そうな雰囲気。

通路床のタイルにはべちゃべちゃに濡れた汚いティッシュや、溢れ出しているのに誰も片付けない大きなゴミ箱と散乱したゴミ。


電気なども殆ど無く、タコ足から延長コードが伸びていて床に少しの照明が置かれていた。

日中なのに酷く薄暗い陰気さが漂っている。

通路沿いの店舗のショーウィンドウは割られているか、割られていない場合は

下手なグラフィティなどが描かれていた。


中を歩いていくと、屋内通路に置いてあるテーブルでカードゲームに興じている

男たちがジロジロと舐めるような目つきで見て来た。

その内の一人があらぬ方向へ目くばせをした。床屋の方か、人の気配がある。

他のメンツは俺を見ないように意識しているように思えた。


足を止めずに進んでいき、怪しげな男たちを通り過ぎる。

背後にある床屋から男が3人出てきてこちらを尾行し始めた。

角を曲がった所で振り返り待ち構えていると、男たちは一瞬動揺したように見えたが、

緊張しつつも表情は変えず2人が俺を通り過ぎて、もう一人は逃がさないためにか立ち止まりこちらを無言で見てきていた。


俺を通り過ぎたあたりで2人が大きなハンティングナイフを抜いて

こちらへ方向転換。

振り返った2人にこちらを挟み込むために

立ち止まった一人の頭を掴みひしゃげた顔面を見せる。

顔面が陥没し泡を吹いて失神している仲間を見た男たちが硬直。


ひとりが逃げようと咄嗟に駆けだそうとした所で

亡霊(ゴースト)の触手に隠形を掛け、透明化。足を打ち砕く。


突然脚をへし折られた仲間を見て

残ったほうは降参するように手を挙げた。


「ペスってやつを探している。知っているか?」


無言で首を振る。足をへし折られたもう一人がペスという名前に反応。

突然大絶叫を上げた。即座に頭部を破壊。死体をハンカチに仕舞う。


残った男2人を傀儡化する。


さっきの絶叫を聞いたのか、通路にいた男たちが集まってきはじめた。

失神している男を死体と共に仕舞い、隠形で姿を消す。

半傀儡に命令。

ー適当にごまかせ。



この場所は誰かの息がかかっていそうだ。

もう少し探ってみるか…


透明になりながら半傀儡に命じて捜査を続行する。

人が集まってきている隙に施設内。


おもちゃ屋に飾ってあるラジコンが少々気になった。がそこで

店舗横にバリケードで覆い隠された場所を発見。

怪しい地下通路の入り口だった。地下駐車場に通じていると思われるスロープであったが駐車場からは行き来出来ないように封鎖されており壁に扉が2つ。

秘密の小部屋があるのか?


どちらから入ってみようか… ペスが居たりして……

走だと話が早いんだが。などと思っていると背後から妙な駆動音。

スロープの入り口横にあったおもちゃ屋のラジコン車が高速で向かってくる。


 

こちらに向かってきていきなり爆発。

咄嗟に飛びのいて回避する。結構な威力だった。

隠形は解けていなかった。何かしらのセンサーに引っかかったか…


その時、建物各所から爆発。

通路にいた住人が吹き飛んでいく。黒い炎が屋内にあるものを容赦なく蹂躙する。


何が起こった? 通路では機械仕掛けのような人間が

ふらふらと歩いてきて同じ黒い爆発を引き起こした。

あの爆発攻撃は、やばい。

あれを喰らったらただでは済まないだろう…


捜査は中止だ。直ぐに施設を離れる。



----------


調査を終えて駅のハンバーガー店へと帰還する。

ベルシモックを連れて。正直疲れたな。精神的に来た。


ハンバーガー屋前。

監査部の人員。教団兵と傭兵に扮した

マチルダの部下たちがこちらをチラリと一瞥してきた。

互いに顔見知りになって来た所だ。


見知らぬ大男を連れて来たのを訝しく思っているのだろうが。

連絡はもう済ませてある。

マチルダが外に出てきて3人で夕食をとる。


「でかいな。 彼がジョンがスカウトした実力者か?」

「ああ、テストしてもらってもいい。」

「スタンの3次試験は突破できるレベルだと聞いたが、本当にそうなら逸材だ。名は?」

「ベック。あと、言葉が話せないやつなんだ。」

「そういうことか、それなら私たちと働いた方が便利だろう。素行は問題ないだろうな?」


「ああ、善良だ。善良なのがいいかはわからんが。

基本的に俺と一緒に行動することになる、それはいいんだろ?」


「かまわん、お前のやりやすいようにやってくれ。

それとベックのカードや端末も用意しなきゃな。

恐らく週末、火の夜には間に合うだろう。」


「火の夜?」

「ああ、暗黒教団の祭事だよ。お前は無条件で参加できるが。

他の傭兵や教団兵は選抜試験を合格しないと参加すら許されない。

逆に参加できる奴は大事にされる。経歴にも書けるぞ。

報告にあった、ペスという奴は見つけられたか?」


「いや、見つからなかった。また色々と調べてみるよ。」


―護衛と捜査は今は護衛を優先でいいからな。ただし私も気になって来た。

火の夜が終わったらもう少し本格的な捜査に乗り出そう。




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