はじまり
ーーー舞い上がる砂埃
ーーー鳴り響く怒号
ーーー飛び交う銃弾。
誰かが誰かを斬り、誰かが倒れる。
血の匂いが立ち込めたこの場所で、敵か味方かもわからない誰かが声を上げて倒れる。
1600年10月21日。美濃国関ヶ原。
打倒徳川を掲げた石田三成・毛利輝元の連合軍によって、桶狭間の戦いの火蓋が切って落とされた。
ーー西軍石田三成軍拠点ーー
紋之丞「そうか…逝かれたか」
わずかに悲哀の籠った声で、紋之丞はそう言った。
少しの間、虚空を見つめたあと、覚悟を持った眼を戦場に向けた。
義虎「勇ましい最後であったと」
紋之丞「ならばよい。ゆくぞ」
紋之丞は刀を強く握り直す。
紋之丞「戦況は」
義虎「非常にまずい状況かと…。小早川軍一万の軍勢が東軍に寝返ったようです」
紋之丞「南宮山の秀元はなにをしておる」
義虎「軍を動かせず、静観しているようです」
紋之丞「そうか。どうやらここが儂の死場所のようだな」
義虎「紋之丞様…」
紋之丞「お主にも世話を掛けた」
義虎「そのようなこと。おやめください」
紋之丞「あとのことは頼んだぞ」
そういい残し紋之丞は、戦場に歩を進める。
ーー東軍黒田長政軍
長政「撃てぇい!それ以上やつの好きにさせるでない!」
敵地へと単身乗り込んだ紋之丞は、次から次に襲いくる黒田軍の兵を斬り捨て、鬼気迫る勢いで猛進する。
長政「なんじゃこいつは!なぜそのような男一匹殺せん!」