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様式美。


「どういう事ですか!婚約破棄なんて…!」


美しい御令嬢。濃紺の髪色に空色の瞳。狼狽え、彼シルヴィアに詰め寄る女性は何と婚約者様であった。

怒るのも狼狽えるのも当たり前だ。本来彼の隣に立って笑っているのは彼女、アイリーンだから。


先ず最初にワイングラスを持って近付いて来たのはアイリーンさんのお友だちか分からないが要は取り巻きさんが私にワインをぶっかけようとした。

が、どういった術式がかかってるのか知らないがペンダントが煌めきワインが跳ね返った。

きゃっ!何て酷い!と、言われても私は何もしておらず。

大丈夫ですか、とハンカチを渡そうとしたところで彼女、アイリーンさんが登場した。

そうして、シルヴィアさんが婚約破棄を言い渡した。


「アイリーン、今までありがとう。お互いこれからも一族のため頑張ろう。晴れてようやく婚約破棄だ。」


「お待ちください!私は婚約者です!今までもこれからも変わらずシルヴィア様を思い続けております!」



はい、きたー。と、私は呆然。

小説でよくあるやつー。と、ワインがドレスにかからなかっただけ助かったと思ったが後は大火傷の展開だ。

私は婚約者を奪う悪役にされている。後は野となれ山となれだ。もう時間は戻らないのだから。


「僕は彼女、アリアを愛している。残念だがブラッドムーンも捧げた彼女以外もう考えられない。」


「ブラッドムーン…そんな、何故…。」


アイリーンは私のペンダントと指輪を見た。二つも身につけている私に、驚きに満ちた目で見たら叫ぶように言った。


「一族の秘術ではありませんか!何故、何故、貴族でもない女性をお選びになったのですか!!」


えー、と、とんでもないものをいただいたらしい自分が怖くなった。

カタカタと動揺と不安で震える肩をシルヴィアさんに抱かれる。そこでまた小声で言うのだ。「大丈夫だから」

いや、大丈夫ではない。



この騒動にダンスは取り止め。正式な婚約破棄は後日発表となった。

私はシルヴィアさんに利用されたのだろうか。ただ結婚をしたくなかっただけでは。

不安ばかりで彼の気持ちが分からないまま、碌な会話も出来ずに馬車に乗せられ家送られた。

ペンダントと指輪の何と重たいことか。





帰宅。

夜にも関わらず、家は相変わらず父が刀やロングソードを磨いていた。「お帰り」の一言が有り難かった。そうだ、ここが私の居場所で帰る場所。あんな煌びやかな世界は私には似合わない。相手を値踏みするような目線や嫉妬、そういった類の空気。あんな場所は肩が凝って堪らない。


「ただいま父さん。」


「寝る前に銃の手入れしとけよー。」



わかってるって。のいつもの一言が出なかった。

とても疲れたのが自分でもわかった。


寝る前、着ていた真っ白なドレスを思い出す。クスリと笑って、やっぱり自分には似合わなかったなぁと自嘲し、眠りにつく。叶うのならプレゼントを貰う前に戻れたらよかったと願いながら。







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