見返りはダンスで。
さぁ、困った。
いくつもプレゼントをいただいた結果、頼み事があるとシヴァさんに相談されたのだ。
一緒にダンスをするだけで良い。隣に立って笑っているだけで良い、と。
上手い話には…と言う言葉本当だった。
「む、無理です無理です!」
「大丈夫だよ、人助けだと思って?」
人助けにダンスは無いだろう。人選ミス!と、断りは何度目か。最後には一生のお願いと言われてしまい、私は負けてしまう。
「じゃあ明日、ドレスを選ぼうね。」
そのペンダントも着けてくれると嬉しいとにっこり。
彼の一生のお願いに負けてしまった。ダンスなんてした事が無い。そもそも社交界?なんてもの絵本や小説の中の話だけではないのかと本番前から既に心臓がバクバクしている。
次の日、シヴァさんのご自宅、というよりお城へ向かうことになった。
「…冒険者じゃなかったの…?」
呟きは聞こえていたようで、にっこりと笑顔で流される。
そして、大勢の使用人さん達のお出迎えだ。
「「お帰りなさいませシルヴィア様。」」
えっ、偽名だったのシヴァさん、と唖然と彼を見つめるがまたしても、笑顔でスルーされる。
「じゃあ話してた通り、彼女のドレスをお願い。」
「「かしこまりましたシルヴィア様」」
一体どんなお願いなのかわからない。頭が反曲がるんじゃないかと思うほどあちこち見ては混乱し、現実についていけない。
ザッとメイドさんに囲まれたところでもう逃げられないと悟りまな板の上の鯉となった。
次々とドレスの合わせ。赤のドレスはドレープが美しく紫のドレスは背中側がパックリ開いたセクシー過ぎなデザイン。水色のドレスは少し可愛すぎて私には不向き。
結局いくつものドレスの中決定したのは真っ白なドレス。
フリルも可愛すぎずスリットもほんのりで大人っぽい。デコルテは全面に出して元々ペンダントが目立つようデザインされたかようなドレスに決定した。
「シヴァさん、あ、シルヴィアさん…あの、」
「シヴァでいいよ。とても綺麗だ。似合ってるよ。」
もっとよく見せて、と顔が近くに寄る。
とても優しい顔で綺麗だなんて言うから、何だか結婚式でも挙げちゃうんじゃないかなんて妄想で顔が熱くなった。
一度目をゆっくり綴じて、一呼吸。そうそうこれは人助けなのだ、と自分を律する。
「…シヴァさん、ありがとう。こんな経験中々できるものじゃないから、記念になるよ。」
ふふっと笑った彼はこれから何度もあるよ。と、驚愕な事を口にするから、えぇ!?と聞き直そうとしたら大切なものを扱うように私の左手を持って紅い宝石の指輪を薬指に嵌めて満足そうに笑った。
「これもプレゼントだよ。」
「そんな、もう!」
返せないですよ、と言うところで左手を引っ張られ優しく抱きしめられる。
混乱と緊張で固まる身体。右耳に吐息と言葉がかかる。
緊張の汗が手全体に広がって握られた左手が恥ずかしい。
囁かれたのは勘違いさせるような言葉。
「このまま君を攫うからね。」