異世界でも紅茶ってあるんですね
ポーション用の薬草採取。
シヴァさんのおすすめスポットだ。かなりの群生地でそこら中に薬草が生えていた。
一つ一つ丁寧に採取していく彼を手本にしながら私も黙々とと採取していく。
今日は天気が良い、少し汗ばむおでこを拭って話しかけた。
「少し休憩しませんか?」
「良いですね、ちょうどキリがいいところでした。」
彼はニコニコと採取袋に最後に一つ薬草を仕舞い込んだらふぅっと息を吐いて立ち上がった。
紅茶を持って来たんだ、と魔法瓶のようなものからマグカップへ入れ私に手渡す。暖かい紅茶、一口飲むと湯気が出て柔らかな甘味のある香りが口に広がる。
「ピーチティーですか?」
「当たり。」
嗚呼、またそんな笑顔で私を見ないで。と、心の中で叫びながら平静を保つ。まったりとした時間が嬉しかった。
「あとクッキーも。」
鞄から白い包みを出して開き、チョコチップの入ったクッキーを振る舞ってくれた。とてもサクサクして美味しいクッキーだ。彼の手製だという。
「シヴァさんは色んなことができますね。」
「そんなことはないよ。いつも何かに頭をぶつけてるさ。」
冗談混じりにまた笑って、私もクスクスと茶目っ気のある部分を彼からまた一つ知ることができて嬉しかった。
なんて優しい時間。なんて嬉しい時間。
「さて、最後にもう一踏ん張りしましょうか。」
私が腰掛けていた切り株から立ち上がった瞬間、草むらからガサガサ!とモンスターが飛び出して来た。
油断していた私は心臓部に手を当てながら右足に備え付けたホルスターから銃を取り出す。
「シヴァさん、下がってください!」
「いや、僕も戦うよ。」
全身の毛を逆立てた犬型のモンスター。胸にはモンスターである証の魔石がついている。3匹いる。
グルグルと唸りながら牙を見せてくるモンスターは今にも飛びかかって来そうだ。
先ずは足を狙う、
「…動かないでよねー…」
ボソりと独り言を呟きパン!と銃声が一つ。
「当たった!後2匹!」
「ウォーター。」
2匹目に狙いを定めてる間にシヴァさんは魔法陣を空に描き巨大な濁流を作り出し3匹を押し流した。あっという間にモンスターは逃げて行く。
「…シヴァさん、Cランクとか嘘でしょ。」
少し不貞腐れた様に呟くと彼は苦笑いしながらこっちまで飛んできた水飛沫をハンカチで拭ってくれた。
嬉しいが恥ずかしい。
「僕はCランクです。本当ですよ。」
私が居てくれて良かったと笑うから、私もシヴァさんが居てくれて助かったと笑う。
「ティアラさん、シヴァさんはすごい魔法を扱えるんですよ!何でCランクなんですか?」
ギルドに戻るなり、受付に詰め寄る。少し引き気味にティアラさんは営業スマイルで答える。
「私がランクを決めている訳では無いので。」
でも!と、更に詰め寄ろうとするとシヴァさんが採取してきた薬草をドンと大量に受付に持って来た。
「その話はまた今度で。薬草、足りますよね?」
「はい、お疲れさまでした。承ります。」
2人は淡々と任務完了手続きを済まし、私だけが喚いているようで恥ずかしくなった。大人しくしようと、シヴァさんの後ろを歩く。
寄って行きたい場所があるからついて来て欲しいとのこと。
「僕のために聞いてくれたんでしょうが、僕はCランクでいいんですよ。」
後ろを歩く私を横に並ぶよう促しながら彼は言った。
でもあの初級魔法で特大なものがCランクで放てるモノなのか疑問で仕方がない。
「シヴァさんの魔法はじめて見たから、あんなすごい初級魔法聞いたこともなくて。」
「ま、僕の特技、個性と思ってくれたら。」
個性で済むようなモノではないが。
彼がそう言い切ってしまえばそれはもう彼の問題だから私が口出すものではないのだ。
「…わかりました、で、行きたいところとは?」
「ごめんね、行きたいところは調合屋です。」
調合屋?と、首を捻る。行った事も無いし行ったという人の話も聞いたことも無い。
「あるものの調合とアリアさんにプレゼント。」
「えっ!プレゼント!?」