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秘密のメテオとリフレクト  作者: Flying Bear
沈黙の魔法 ─ソードシステム・ゼロ─
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沈黙の魔法 ─ソードシステム・ゼロ─ 5

 学園長室の隣の部屋。

 廊下側には扉はなく、学園長室からのみ立ち入れる作りになっていた。この校舎がユーノシオ管区学校だった時に理科室と理科準備室だった名残だそうだ。

 そしてこの理科準備室だった場所が、つい先ほどまで牢屋として使われていた。


「思い入れがある場所がここだっつーことで、侵入者を飛ばす座標にしてたんだとよ。まあそれも、フェイリアが派手にぶっ壊しちまったがな」


 壁や天井は煤汚れていて、鉄格子はかろうじて原型を留める程度に溶けて歪んでいた。


「みんなはフェイリアの話、聞いてたの?」


「ああ。しかも学園長の姉貴ときたもんだ。にわかに信じ難い内容ばかりでなぁ」


「今までも何人か急に学園からいなくなったり、家の事情で退学になるなんて都市伝説みたいな噂話は耳にしたことがあったけれど…………なんとなく理由がわかったわ」


「あれで六十八歳ってのは初耳だがな。お前がいなかった時なんて大変だったぜ。学園長と口喧嘩を始めてな」


「何を言ってるんだよカイザー。あれは口喧嘩なんて生易しいものじゃないよ。言い返す隙すら与えず一方的に言い負かしてたんだし。ぼくも姉さんにはよく」


「今は黙ってなさい」


 フェイリアとフェイラー学園長が姉弟だと言われても信じられないし、容姿を見ればお爺さんと孫娘としか思えない。


「わたしはフェイリアの言い分がわかるわ。自分の手柄をすべて持っていかれた上に、口約束だけでずっと都合よく使われていたんだもの」


「ぼくはフェイラー学園長の気持ちがわかるよ。あれだけ人格を全否定されたんだもの。まったく何もしてなかったわけじゃなさそうなのに、意固地にもなるさ」


「なによ学園長の肩を持つ気? ひどいのはどっちなのよ。だいたいジュディスはいつも優柔不断で風見鶏、ワガママで鈍臭くて何もできやしないじゃない。それに今日だって」


「まてまてまてお前ら!! ここで口喧嘩を再現してどうすんだ、後にしろ後!」


 キツく罵られたジュディスには堪えたみたいで涙目になっている。カイザーが仲裁に入らなかったら再現シーンだけでタイムアップだ。


「それよりもだ。俺様たちが集まったところで結論なんて出ねぇと思っていたが、ラドには何か考えがあるってことなんだろ?」


「え? ないよ?」


「ねーのかよ!! かーっ、使えねぇな、オイ」


「だからみんなに聞きたかったんだもん」


 カイザーだって説得に失敗したんだろうし、自分の不出来を棚に上げてひどい言い様だ。


「ところでレナは?」


「そういえばいないわね」


「いたところでどうにもならんだろ。そういえばさっきの胸……ぐほっ!!」


 電光石火のボディブローがカイザーとジュディスに突き刺さる。屈強なカイザーはともかく、心も身体もボロボロにされたジュディスが気の毒すぎる。


「時間よ。戻りなさい」


 しびれを切らしたクリス先生に呼ばれて渋々学園長室に戻る。これといった結論も出せず苦悩をしていたボクたちなんてお構いなしに、ソファではレナとフェイリアが楽しげに会話を弾ませていた。


「へぇ~。ゴーレムを創る魔法ってウィザード自身の能力だけじゃダメなんだぁ」


「当然、能力も大きく左右されるがの。様々な要因を組み合わせて、上手く力を使うのがキモじゃな」


「じゃあテレポーターは? どんな仕組みなの?」


「あれはオリジナルじゃ。ジェムストーンの力を使わねばならぬし、飛ばす場所も細部まで脳裏に情景を思い浮かべねばならぬ。ワシの場合は自分自身に使えぬのが欠点じゃった」


「それでも十分すごいよぅ。理論も能力も完璧なんだもん。あたしよりずっと先輩だね。フェイリア先輩だぁ」


「だからずっと歳上じゃと言っておろうに! しかし素直に尊敬されて悪い気はせぬ」


 魔法の知識欲が半端ないレナから質問攻めにあっていただろうに、無碍にせず律儀に対応するあたりフェイリアはやっぱり大人だ。


「戻ったか。さぁ、フェイラーを説得してみせよ」


 レナとおしゃべりしていた無邪気な表情が一転して険しくなったのは、きっと結論が出なかったことを見透かしていたからだろう。


「フェイリア先輩、かぁ。ねぇフェイリア。やっぱり…………生徒になってみたら?」


「それは寝言にもならぬと何度言えば気が済むのじゃ」


「だって大人になれば学園長にだってなれるけど、生徒には子供のうちしかなれないんだよ。今と昔じゃ雰囲気や環境だって違うだろうし、ギルド活動だって楽しいんじゃないかな…………たぶん」


 ボクの言い分は大きく間違っていないはず。マジェニア学園の生徒ですらないということを除けば。


「しかし再び生徒からやり直せと言われてものう……」


 険しい表情が崩れて困惑顔になるフェイリア。

 あれ? 実はチョロい? もうひと押し?


「今のままフェイリアが学園長になっても、子供扱いする大人たちは誰も言うことを聞かないと思うんだ。だったらさ、生徒になって友達を作った方が楽しいよ」


「ふん。学園長の命令を聞かぬ痴れ者など、我が魔法と権力でねじ伏せてしまえばよいだけのこと。簡単な話じゃ」


 権力はともかく、魔法で強さを顕示するのって御法度なんじゃなかったっけ?

 魔法戦争の惨劇を繰り返さないためのソードシステムなんだよね?


「強大な魔法を使えるからって、それで人を従わせちゃダメよ。フェイちゃん、めっ!」


 正論だけど、正論だけどその人は偉い人!

 たとえ軽くでもおでこを叩いちゃダメ。レナの暴挙を止められなかったクリス先生は顔面蒼白になっていた。


「……マ…………マ……マ」


「マ?」


 それほど強く叩いていないのに、フェイリアの顔はみるみる紅潮していった。瞳を少々潤ませるほどのダメージがあったとは到底思えないんだけど。


「ど、どうしたのフェイちゃん? ごめんね痛かった?」


「いや……違う、なんでもない…………気にするな」


 しかし困った。

 ボクがすべきことはフェイラー学園長を説得させることであり、フェイリアの相手ではない。時間稼ぎもここまでかな……。


「コホン。少々昔を思い出しただけじゃて。それよりもじゃ」


「うっ。こ、これから学園長とお話をしてみるから」


「いや待て。そうじゃのう…………うむ、ワシは」

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