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秘密のメテオとリフレクト  作者: Flying Bear
新たな冒険、開始!
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新たな冒険、開始! 7

 カイザーとジュディスの蘇生を待ってもう少しだけ進もうと決めて歩き出すと、洞穴に明らかな変化がでてきた。

 岩石むき出しでゴツゴツした通路が一変、壁も天井が建造物のようにキレイに整備されるエリアにやってきた。床は石畳で、まるで都市のようになっている。


「ここは……なんだぁ?」


「あそこに建物があるよ。崩落してボロボロだけど」


「坑夫の休憩所だったのかもしれないわ。金目のものもなさそうね」


 昔は石炭や鉄鉱石が採掘されていたんだろう。すでに人の気配はなく、長年にわたって放置されているようだ。


「導魔器が普及したから閉鎖したんだろう」


 魔法と科学の研究が盛んなエスカレア特別区では、他国に先駆けていち早くエネルギー転換に成功していた。

 街を照らす灯りに調理用コンロ。食材を保管する冷蔵庫なんてものも存在しているけど、様々な便利アイテムの中で最も革新的な発明はマジェクタル。


「魔法が使えない人でも導魔器は使えるんだよ。なぜだと思う?」


「導魔器に魔法がかけられてるから?」


「ラド、残念。間違いってほど離れてはいないけどね」


「それは何かしらの『魔力の源』が組み込まれてるから、かな?」


「レナちゃん正解。導魔器にはどれも『ジェムストーン』っていう宝石が入ってるんだ」


 ジェムストーンは自然の状態だと石ころと変わらず、宝石としての価値は低かった。

 高値で取引されるようになったのはせいぜい三十年ほどらしい。


「授業でもならうんだよ。魔力を貯められるバッテリーのようなものなんだ」


「マジェクタルは米粒ほどのジェムストーンで動いてるのよ。不思議なものよね」


 魔力が源になっているのだから、本来ならば使った分だけ補充しなければいけない。しかしソードシステムは魔力の充填もしてくれる万能な仕組みだった。


「エスカレアって国家じゃねぇからな。寄付と支援でなりたっている代償として、研究結果はすべてオープンになってんだ。でもよ、魔物は出ない、魔力は使い放題なんていう夢のような技術だけは頑なに開示されねぇんだわ」


「偶然の産物であって、理論的に説明できないからって聞いたわ」


「ぼくはこの土地の地場が関係している説が有力だと思っているんだよね」


「はいはーい! あたしは、すっごく魔力がある誰かが必死でがんばってる説を提唱しまーす」


 難しい内容を当たり前の常識のように語り始めて理解が追いつかない。レナはいつの間にか魔法談義に割り込んでいるし。


「んなバカな。クソでけぇソードシステムを人力で、二十四時間年中無休って無理だろ。しかも五十年以上存在してるんだぜ」


「あはは。面白い説だね。管理者がいるとすれば何代か入れ替わってるだろうし、複数人いればどこかで秘密がバラされるものだよ。着眼点は素晴らしいと思うけれど」


「ま、魔法の話はおいといて。結局お宝なんてなかったのね。あーあつまんない」


「ぼくは楽しかったよ? みんなで探検できたことだし」


 成果はなくとも、ジュディアとジュディスは満足して笑顔になっている。


「強欲メイセンが密かに出入りする場所だからな。何もないっつーことはねぇだろうが、金銀財宝の類いじゃなかったのかもな」


「どうしてそう思うの?」


「ラド。お前はまだメイセンの本性を知らないだけだ。あいつはテメェで盗掘なんて手間がかかることはしない。誰かが手にしたものを横からかすめ取るタイプだ」


 どんな因果がふたりを紡いだんだろう。メイ先生に対しては最大限の悪口を遺憾なく発揮している。


「あのぉ……あたしも楽しかった。今日初めて知り合ったばかりなのに、一緒に冒険までできたし。それで、途中入学することになったんだけど……これからもよろしくお願いします」


 これから始まる学園生活。

 たくさん不安が募っても仲間がいれば心強い。金銀財宝は見つけられなかったけど、今日の経験はそれに勝る価値があった。


「じゃ帰るか。ジュディア、道案内を頼むわ」



「こうそく、する」



「あぁ? 何言ってんだジュディア」


「わたしは何も言って……ってうわっ、あんた誰よ!?」


 見知らぬ女の子がボクたちの僅か数メートル背後に立っていた。音も気配もなく完全に油断していた。


「ぎゃああああああああああああっ!! おばけだよぉおおおおおおおおーっ!!」


「うるせぇジュディス、黙ってろ!!」


 女の子だと判断した理由は明快で、スカートをはいていたから。

 今まで出会ったマッドゴーレムは土でできたマネキンみたいだったのに、女の子には顔もあって髪も伸ばしている。


「顔の造りといい肌の色といい、見た目は人間と変わらないのが逆に気味が悪いわ」


 もしかすると人間?

 そんな疑問は浮かばなかった。あまりにも動きが不自然すぎる。


「るから。わたしは、るから。ふきょかの、しんにゅうしゃ、こうそく、する」


 氷の上を滑るように歩き、声を発しても口はおろか表情すら変化がない。今まで出会ったマッドゴーレムとは違った意味の不気味さがある。


「うるせぇ吹き飛べやぁ!!」


 カイザー得意の不意打ちドロップキックを胸元に喰らってもよろめくことなく、地面に倒れ込んだカイザーがピンチになってしまった。


「こうそく、する」


「カイザー危ない!」


「おめぇじゃ無理だっ!」


 女の子はゴーレムだという予感はしていた。だとしたら勝機はある。


「任せてよ!!」


 ガード姿勢を取りながら体当たりした時に反撃をくらった痛みが走った。その直後、目の前が真っ暗になる。


「うぅ…………ぶはっ、全身、砂まみれだよ」


 煙たい砂埃とは別に、身体にまとわりつく生温い不快感。その正体は女の子が着ていた衣類だった。


「一か八かだったけど成功だったよ。相手が本当におばけだったら勝てなかったな」


 レナの手を借りて起き上がると、全身から砂がこぼれ落ちていく。服の中まで入り込んでいてやっぱり気持ちが悪い。


「ラド、お前何したんだ」


「服だけ残して消えちゃうなんて。これ、エクリル女学院の制服よね。……売れるかも」


「やっぱりおばけだったんだよ! 煙みたいに消えちゃったんだ!!」


 脅威が去ってひと安心、身体の無事を確認する。


「おい」


「う…………」


「ラド!」


 問いつめてくるカイザーの顔が怖い。


「あんたの言い方じゃ叱りつけるようにしか見えないのよ。助けてくれた恩人に何を怒ってんのウケるんですけどー」


「別に怒っちゃいねぇだろうが」


「怖いのは顔だけにしときなさいよ。下がってて。それでラド、何をしたの?」


「えーっと……ボクの…………必殺技、かな。相手を一瞬で」


「……ラド?」


 誤魔化そうとするとジュディアの顔つきが険しくなった。カイザーを止められる唯一の存在なんだから、キレさせたら恐ろしいことになる。



「実はボク、魔法を跳ね返すんだ」



 火や水といった属性の攻撃魔法。

 心身に影響を及ぼす補助魔法や回復魔法。

 ボクに触れた魔法はすべて跳ね返って、どこかへ飛んでいく。

 それでも、光を放つ魔法を見れば眩しいし、火の魔法に近づけば熱い。

 ジュディスが放った風の魔法ではしっかりと空気の流れを感じていた。



「鏡が光を反射するようなものだよ。ボクが魔法を受けたら、きっと周囲の人たちが巻き添えになっちゃう」


「お前の能力を疑うわけじゃねぇが、それが今のゴーレムと何の関係があるんだ」


 マッドゴーレムは土や岩などを素材にして、魔力を『つなぎ』としている。

 ボクが触れれば魔力が乱反射して行き場を失い、内部から破壊へと繋がるのだ。

 …………なんて内容を、ボクに代わってレナがわかりやすく説明してくれた。


「ラドくんだったら魔物にも負けないもん。スゴイでしょ」


 まるでレナの手柄のように振る舞うけど、ボク自身はこの能力を誇らしいとは思っていない。かといって卑下するわけでもないんだけど。


「どういう鍛錬をすれば、そんな能力が身につくんだい?」


 ジュディスが興味津々に訊いてくるけど、答えられない。


「ボクの意思でコントロールしてるわけじゃないし。多分、体質みたいなものだと思う」


「良いか悪いか知らねぇが…………面白ぇ。上手くやれば魔法至上主義のエスカレアでアタマ取れるぜ!」


「都合が悪くなったらすぐに魔法を持ち出す連中相手には愉快なことになりそうね。フヒヒヒヒ」


「グヘヘヘ、まったくだぜ、たまんねぇなオイ!」


 不敵な笑みを浮かべて悪人面をするカイザーとジュディアはやっぱり似ていると思う。新しいおもちゃを子供から取り上げるような罪悪感があって言い出せなかった。


 ボクは入学を断られたんだと。

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