新たな冒険、開始! 4
次なんていう脅しに怯えながら単調な一本道を進んでいくと、先ほどの泉とにたような場所に行き当たった。振り出しに戻ったと勘違いしたけど分岐する道はない。
「ねーさま、何してるの?」
「マッピングよ。迷子にならないようにね」
5L4R/C→10+2R≳8Rlg+4。
書き込まれたノートを見せてもらったけど意味がわからない。
矢印とマルバツ、数字と記号が組み合わさった暗号が羅列していた。
「ハンターギルドで習う初歩的な技術よ。特にここは高低差もあるでしょ。実際に歩いた距離や角度、目印なんかも書き込むと安心できるわ」
訓練したらボクにもできるのかと考えながら進んでいくと視界に違和感を覚えた。風もないのに、ところどころの水たまりが波を打って光を乱反射させている。
「何だこれ、生き物か?」
クラゲのような半透明の何かが僅かににじりながら動いている。注意深く観察しなければいけないくらいに歩みは遅い。
「水っぽいけどプルプルしてんな。例えるならグミか…………水ようかんってところか」
「食べ物で例えないでよ。でもおばけじゃなくてよかった」
「あんたが怖がる境界線がわからないわ。おばけがダメで魔物だったらいいなんて。これ、スライムよ」
ジュディスは少し考え込んでから思い出したように悲鳴をあげた。叫び声にはもう慣れっこになりつつあった。
「あああああああああっ!! そうだよ、おかしいよ! どうしてエスカレアに魔物がいるんだよ!? 魔物なんて存在しないってのが常識だったのに!!」
「んー……。あんたの言う通りね。ソードシステムがあるんだもの、魔物なんているわけがないわ。いやでもさっきのゴーレムだって…………だけど、うーん」
「お前ら何ホザいてんだ。んなこと言っても目の前に実際いるじゃねぇか」
ジュディスとジュディア、カイザーが難しい言葉を並べて協議を始めてしまった。
蚊帳の外に置かれたボクとレナはスライムを突ついたり、石を投げて暇を潰す。
「魔物って今までも散々見てきたからさ、別に珍しくもないよね」
「でもでも、水のように透明になるスライムって稀なんじゃないかな。廃坑内の資源が乏しいからっていうのもありそうだけど、魔力に混じりけがないからキレイなんだよ。ほら見て見て、これはね」
こちらでも解説まじりの協議が始まってしまった。
魔法の話になると話が止まらなくなるレナ。暇さえあれば魔法関連の本を読んでいるし、珍しい魔法があると聞けば見たい知りたいと駄々をこねる。
実際、エスカレア特別区への到着が遅れた理由は旅の途中での度が過ぎた寄り道が原因だった。
「魔法を使うと『魔力の余り』が出るの。それが生き物に定着すれば魔獣なんて言われるし、いろんな物質に結びついたり、魔力単体で具現化すれば魔物になるの。つまり、魔物は魔法から生まれるんだよ」
今まで冒険してきた国や地域でも、魔法が発展する裏では魔物による危険が常に付きまとっていた。
魔物や魔獣は野生動物と同じで、人里離れた場所で存在するだけなら問題視されない。街や街道に出現するから厄介で、その場合は排除しなければならない。
ボクが今まで冒険の旅を続けられたのは、魔物や魔獣を討伐して路銀が稼げたからだ。
そう考えるとボクだって魔法の恩恵を多大に受けているといえる。




