三条大橋
フロアで人混みの中のキス。
タツヤの薄い唇は柔らかくて。
首筋からほのかに匂うコロンの香り。
柑橘系の優しい匂いも手伝って、
私の身体中が火照っているよう。
我にかえると、周りの人に見られていないかと
少し慌ててタツヤの胸に頭を預けた。
背の高いタツヤの肩から胸にかけて
私の頭がちょうど収まる。
『かんにんな。いきなり。』
『ううん…。』
エンドレスラブの歌か終わると
どちらともなく離れ席に戻る。
ウイスキーの水割りを一気に飲み干し
『あっ、リサ門限の時間大丈夫か?
そろそろ帰らないかんなぁ。』
会計を済ませ店を出る。
年末の寒さが火照った身体には心地良かった。
近鉄三条駅に向かって歩く。
途中三条大橋の半ばで足を止め下をみると
この寒空の中、
それでも等間隔でカップルが
仲良さそうに座ってる。
『私もああやって、一度鴨川のほとりに
彼氏と一緒に座りたいと思ってたんだ。』
『ほんなら次の時に。せやけど今は寒過ぎるやろ。
もうちょっと、あったかくなったら座ろ。』
さっきキスして気まずい感じだったけど
暖かくなったら…ってことは、
まだまだ付き合いは続けてくれるつもりなんだ。
実は、少々不安を抱いてた。
こんな素敵な人が、
こんなにあっさりと私と付き合い出して、
せっかちなくらいにキスまで。
遊びなのかな?
お試しかな?
なんて、すっかりいつもの自信はどこへやら、
私だけが好きになっているかのように思ってたから。