第七章 解を求めて 09
海津の薬を飲み干すと、激しい痛みが頭と胸を襲った。そして、僕はドラッグストアーののっぺりとした床に頬をくっつけて倒れている。記憶が怒濤のように押し寄せる。今回が三回目のタイムスリップ。
由奈が買い物カゴを放り投げて、駆け寄ってくる。
すぐに、頭と体はリンクして、動けるようになるはず。指先から徐々に神経が蘇ってくる。
「ちょっと、大丈夫っ!?」
由奈が僕を揺する。
脳と体がリンクして、手足が動くようになる。僕はゆっくり立ち上がる。
「大丈夫。ちょっと躓いた」
「そういう倒れ方じゃなかったよ」
このやりとりを覚えていた。これはデジャブじゃない。過去に実際、経験したこと。
過去に戻ってくれば、これまでの記憶が蘇るが、未来にいるとき、過去の記憶は分厚い氷が覆い被さるようにして、その輪郭が仄かに分かるだけだ。
「救急車とか呼ぶ?」
「由奈、ちょっと説明している暇ないんだ。とにかく、逃げろ」
「なにそれ」
僕は包丁を三本買う。
「ねぇ、なんで包丁なんか買うの?」
その質問には答えずに、会計を済ませる。店を出たところで、
「たぶん信じられないだろうけど、さっき未来から戻ってきた。僕の部屋にはあのガルシアがいる。僕も連絡するが、君からも警察に連絡を」
このふざけた歴史を終わらせて、このループも終わらせる。
僕は逮捕されて有罪になるだろうが、ここでガルシアを殺せば、その話題は全世界を駆け巡る。
「ねぇ、お願い、分かるように説明して!」
僕は逡巡して、
「無理だよ。でも、僕がこれを成功させれば、世界を救うことが出来るかも知れない」
僕は由奈の目の前で警察に電話をかける。由奈は寂しそうな目をして、僕のもとを離れていった。これでいいんだ。
―2031年―
僕は小瓶の液体を飲み干した。
―2021年―
あのボディガードをまず倒さなければ、ガルシアには到達しない。
―2031年―
僕は小瓶の液体を飲み干した。
―2021年―
また失敗した。ここでガルシアを殺すのは無理なのだろうか。
―2031年―
―2021年―
―2031年―
―2021年―
―2031年―
―2021年―
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