表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフター・ワクチン ――君打ちたもうことなかれ――  作者: 星香典
第六章 そして僕は殺され続け
46/66

第六章 そして僕は殺され続け 03

 コロナ過ということもあり、二次会は設定しなかった。この時代の僕と理恵は明日からの旅行の準備に取りかかる。国外は無理だったので、国内旅行。結局、僕たちは一度も海外へは行かなかった。


 海津は友人達と飲みに行くという。そういう約束になっていたようだ。去り際に、彼は僕の耳元に口を近づけ、


「風が吹けば桶屋が儲かる。時間の改変はどんな些細なことでも、将来なにが起きるか分からない。このことは誰にも言うな。おまえが未来から来たことを知られないようにしろ」

「なんで?」

「おれがそんな技術を造ったということは、未来から現在に来ているのはおまえだけじゃないかもしれない、ってこと」


 地球以外に生命体はいないと考えるのが非合理なように、未来から来た人間が自分だけというのも非合理だ。もし、僕よりも先にこの時代に来ている人間がいたら、その人間は必ず海津を観察しているはずだし、海津と接触する人間を観察するはずだ。


 ただ、僕はもうツイッターなどに未来の話しを書き込んでしまった。この時代の人間があれを見ても荒唐無稽だと思うだけだけれども、未来から来た人間が見たら、一発でなんのことか分かってしまう。それを考えるとゾッとした。だけど、逆に未来の知識がある僕は、この時代に存在する未来人を見つけることだって出来るのではないだろうか。僕と同じようにツイッターなどに書き込みをしていないだろうか。


 いや、僕が最初に書き込みや軽率な行動をしてしまったのは、偶然に過去に戻ったからだ。今回のように、明確な意志のもと過去に戻ったのなら、そんな軽率なことはしないだろう。


 今日のデモは特に何ごともなく、無事に終わりました。


 届いた由奈からのラインにはそう書かれていた。


 僕は一度死んで、再び未来から来たこと、海津と会ったこと。そんなことを返信に書いていたら、やたらに長文になってしまった。それに、こんなことはラインで告げるものじゃない。データとして残すのもよくない。その文面を消去して、手短な返信をしようとしたが、電車を乗り換えたり、晩ご飯を食べているうちに返信するのを忘れてしまった。


「おはよう、裕二。昨日の結婚式、どうだった?」


 月曜日、由奈はいつものように声をかけてきた。


「ああ、おはよう」

「昨日わたしのライン無視したでしょ?」

「あ、ごめん、返信忘れてた」

「なんかあった? 結婚式。あったんでしょ。見れば分かるよ。なんかいつもと違うもん」


 見抜かれて、僕は肩の力が抜けた。


「さすが彼女なだけあるなぁ」


 そう言って、僕は数日間を過ごした2031年の妻の肌を思い出してしまう。記憶がないとはいえ、由奈に申し訳ないと思ってしまう。同時に、2031年の妻にも。


「で、なにがあったの?」

「昼飯の時にでも話す」


 僕はその後も浮かない感じで仕事をしたものだから、部長から小言を食らってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ