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アフター・ワクチン ――君打ちたもうことなかれ――  作者: 星香典
第五章 寿命はあと十九日
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第五章 寿命はあと十九日 06

「冗談だろ? そんなのあるわけない」

「でも、記憶のエラーだっていう確証もないんだぜ」

「おまえ、科学者だろ? 本当に信じてるのか、前世とか」

「科学者はあらゆる可能性を排除しない。あり得ない、とか頭から否定するのは素人だ。もちろん、前世の記憶が残っているという確証もないがな」


 海津は楽しそうにワインを傾けた。


 時計は日付をまたいでいた。理恵がうとうとし始めた。


「理恵、寝てくれば?」

「……うん。男だけの話もあるでしょ。わたしは落ちます。おやすみ」


 眠そうな目を開いて、理恵は寝室に下がった。


 海津のグラスにワインを注ぐと、ボトルが空になった。新しいボトルを開ける。


「そうだ。一つ気になってた。どうして僕の番号、知ってたんだ?」

「知ってるもなにも、おまえ前から変えてないだろうが」


 だったら、


「なんでもっと早くかけてこないんだよ」

「いろいろ迷惑かかると嫌だったからな。ほら、おれは非接種の嫌われ者だ」


 海津は自嘲する。


「で、僕が死ぬ前に一度会っておこう、ってことか。旧友に会えるなら、死ぬのも悪いことばかりじゃないな」


 僕の冗談に、海津は困ったような表情を浮かべた。そして、ある決断をするように口を開く。


「達也、論理的じゃないな。どうして、おれがおまえの寿命を知っていると思った?」


 不意に酔いが醒めた。海津が僕の寿命を知るすべがあったのだろうか?


「なんで?」

「実は理恵ちゃんと一年ほど前にばったり会ったんだよ。その時、番号を交換した。おれはおまえに会うつもりはなかった。理恵ちゃんから連絡が来ることもなかった。でも、一週間くらい前だったかな。理恵ちゃんから連絡がきて、おまえがもうすぐ死ぬことと、あと、おまえにデジャブがよく起きる、という話しを聞いた。それで、ひょっとしたら、と思った」


 海津はポケットから高さ五センチほどの小瓶を取りだし、机の上に置いた。中には液体が入っているようで、夜の光に揺らいでいた。


「なんだよ、それ」

「覚えてないか?」

 

 僕が知っているものなのだろうか。思い出そうとするが、記憶の隙間をすり抜けていく。


「ま、おれの研究だ」


 海津はつまらないおもちゃであるかのように吐き捨てる。


「ワクチンならお断りだぜ」

「ワクチンじゃない。飲み薬だ」

「飲むとどうなる?」

「おれは一晩苦しんで翌朝目が覚めた」

「なにそれ、副反応?」

「副反応と呼んでいいのか、残念なことに主作用がなにも認められなかった」

「なんの薬だよ、それ」


 海津はあごを撫でながら、


「これは、人間の意識を体と分離させることが出来る……、はずなんだけどな」

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