第五章 寿命はあと十九日 02
テレビが嘘みたいに明るい声を張り上げていた。
十月十日、時刻は午後八時三十分です。さぁ! 今日取り上げるのは、こちら! 【エクストリーム系アミューズメントが大流行】ということで、エクストリーム・スポーツと言えば、ロッククライミングやフリースタイルスキー、ラフティング、ムササビスーツなどが有名ですよね。ですが今回の特集はストリートリュージュです。二千年初頭に流行したアミューズメントがリバイバル。しかし、今回のは以前のとはひと味違うんです。どこが違うかと言いますと、わざと交通量の多いところで行います。そんなことをして、車に轢かれたりしないの? と疑問も持たれたかたも多いと思いますが、実際に今年に入ってから、二百五十名弱のかたがお亡くなりになっています。そんなストリートリュージュ、実際に取材をしてわかったことは、危険だからこそ面白いということなんですね。ストリートリュージュに限らず、雪山やムササビスーツなど、最近非常に人気が高くお亡くなりになるかたも後をたちません。お気づきの視聴者のかたもおられるかも知れませんが、一昨日からお天気お兄さん変わりました。気象予報士の斉藤さんも雪山に登ったまま――
テレビを消すと部屋が落ち着きを取り戻した。
十月十日。結婚記念日。僕たちは式を挙げた日を記念日にしていた。そして、この日は裕二の命日でもあった。だから、お祝いはいつもぎこちない。裕二はきっと僕たちがぎこちなくすることを喜ばないだろうから、もっと賑やかにやればいいのだけれども、簡単に気持ちは割り切れない。
いつもは墓参りに行って、そのあと結婚記念日を祝う。今日は理恵がどうしても外せない仕事があったので、明日土曜日に行くことにしていた。墓参りは故人のためというよりも、生きている自分たちの免罪符のようなもの。今日は免罪符を持っていなかったから、ケーキの甘さがいつもより口に残る。
僕は妻にダイヤのネックレスを買ったつもりでいて、開けてみたらイヤリングが出て来たのでちょっと焦った。最近、こういう勘違いが多い。定員にスイートテンダイヤモンドのお薦めを聞いたら、ネックレスとのことだったが、裕二が結婚記念にくれたのがダイヤのネックレスだったからイヤリングにしたんだ。
理恵ははにかみながらイヤリングを両耳に付けた。わざと薄暗くしている室内で、ダイヤモンドが高貴な光を放つ。
「ありがとう。高かったんじゃない?」
「実は貴重な清代の一面持ってたんだ」
「あんな石くれお金になるの?」
「なるよ。そんなこと言ったら、ダイヤだって石くれ。他の硯や墨も、僕が死んだら売ってくれて構わない。そんなに高いものじゃないけどね」
話しながら、デジャブを感じる。デジャブは記憶の綾でしかないが、どこか別の時空に自分がいたような、そんな錯覚に震えを覚えることがある。
「わたし、まだ達也に死んで欲しくない」
理恵は涙声だった。
モバイルを確認すると、僕の寿命はあと十日だった。




