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アフター・ワクチン ――君打ちたもうことなかれ――  作者: 星香典
第四章 生きている妻
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第四章 生きている妻 06

 フランチャイズ系の中華料理屋に入った。ランチメニューが安いのはいいが、目の前のアクリル板の邪魔なこと。話しづらい。店舗を経営している人だって、外食とかするだろうに。このアクリル板の邪魔さ加減をなんとも思わないのだろうか。しかも、こんなものでウイルスを防げないのは、一目瞭然じゃないか。感染対策やってますのフリには飽き飽きだ。


 僕たちは注文が運ばれてくるまでの間、ツイッターの「#馬鹿馬鹿しい感染対策大賞」を見て笑っていた。一つ一つは面白いのだけれども、こんなことがこの社会で起こっていると思うとうんざりというか、社会は壊れてしまったんだな、と実感する。


 意味のない感染症対策の延長に、意味のないワクチン接種がある。結局ワクチンも、感染症対策やってますのフリ、以外の何ものでもないのだ。


「おまえら、反ワクなんだろ?」


 ニラレバを摘まみながら山沖先輩は言った。山沖先輩の方からワクチンの話題に触れるとは以外だった。


「その反社みたな言われかたは気に入らないです」


 ワクチンが正義で、それに反対する人たちを反ワクと呼ぶのは明らかな悪意である。


「べつに、そんなつもりで言ったんじゃない。反対、が嫌なら、疑念をもってる、とかならどうだ?」

「わたしたちに言わせたら、疑念を持っていないで信じ切ってるほうが不思議ですよ」

 由奈がカニ玉を頬張りながら反駁する。

「ああ、もう、この際呼び方はどうでもいい。おれはおまえらを反ワクと呼ぶ。そんなことより、おれは今困ってるんだ」


 山沖先輩は常に相談される側だった。先輩のほうから悩み事を打ち明けるなどということはこれまでになかった。


「ここだけの話にして欲しいが、実はな、うちの家内が反ワクチンなんだ」


 冗談ではないらしい。かつてない深刻な表情で打ち明けられた。ニラレバを食いながら話すような話しではないかも知れない。


「なるほど。それで、お弁当作ってもらえないってわけですね?」

「手短に言うと、そういうことだ。でも、テレビでも新聞でも、ワクチンは効果がある。打ったほうがいいって言ってる。でも、おまえ達は違うんだろ?」

「奥さんは、どうして打ちたくないんですか?」

「副反応が出るし、政府の陰謀だ、って」

「先輩はどうして打たせたいんですか?」

「打たせたいもなにも、八割打ってるものだぜ。打たないのは変だ」

「わたしたちだって打ってないですよ。わたしたちも変ですか?」

「ああ。変だね。前にも言ったけど、あんなものチャッチャって打っちまえばそれで終わる。でも、おまえらはどうでもいい。所詮他人だ。でも、妻は身内だ。たとえば、おれの実家に行ったときに、おれの両親からワクチン打ったか聞かれでもしたら、どう思われるか」


 ワクチンを打ってない人間を白い目で見る人間こそ白い目で見られるべきであるが、ワクチンを神と崇めている人々には通用しない。特に高齢者のワクチン崇拝ぶりは異常である。


「わたし、ワクチンが効かないっていうのと、副反応のデータ、危険性のデータ、集めてるんで、送りましょうか? いくらでも出て来ますよ」

「ワクチンが効かないっていうデータがあるのはおれも知ってる。でも、効くっていうデータもあるんだよ。いいか。人間は信じたいものしか信じない。副反応の死も、本当に因果関係がないと信じる奴もいる」

「ま、ご両親のところに行くだけなら」と僕は口を挟む。「わざわざ正直に答えないで、それこそチャッチャと打ちましたって言っとけばいいんじゃないですか? アメリカの大学でも、九割接種だと思いきや、そのうちの五割が虚偽報告だった、なんていうニュースあったじゃないですか」


 嘘つくのか? と先輩はため息をつき、セットのスープを飲み干した。

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