表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフター・ワクチン ――君打ちたもうことなかれ――  作者: 星香典
第三章 ワクチンで死んだ少女
26/66

第三章 ワクチンで死んだ少女 12

 だってアンタ、裕二じゃないでしょ?


 いつかは誰かにバレることは覚悟していたが、唐突に言われたので驚いた。


「なんでわかった?」

「は? バカ? 冗談に決まってんじゃん」


 僕も冗談めかして笑って見せた。三杯目の生を飲み干して、お変わりを頼む。バレてないのはよかったが、信じられていないっていうのも、自分が認められていないようで複雑な心境だった。


「アンタはどこから見ても裕二。でも」と由奈は眉間を寄せて、「裕二は字が下手だった。社内イベントで、ほら、式次第みたいの書いて壁に貼ったでしょ。アンタ子どもの頃習字習ってたとかで、書かされてたけど、笑えるくらい下手だったじゃん」


 裕二は僕と一緒に習字教室に通っていた。でも、裕二はすぐにやめてしまって、僕だけ大人になっても続けていた。


「あれは、わざと下手に書いた」

「ふーん。そうは見えなかったけど。アンタが最近変なことは確か。仕事も忘れちゃう。ワクチンも急に嫌いになって、前はさ、わたし、なんか避けられてたような感じだったけど、今はそんな気がしないし。デモなんか絶対に来ないと思ってたけどアンタは来た。お酒だって、そんなに好きじゃなかったよ、つきあいでは飲んでたけど」


 そう言えば、裕二はいつも控えめで、僕が二杯飲むと一杯飲む、みたいな感じだった。ほんとは酒、好きなんだよ。と運ばれてきた四杯目も半分くらい一気に飲む。


「どっちだよ。僕は裕二か? それとも裕二じゃないのか?」

「アンタは裕二だよ。それは間違いない。ただ、コロナに罹った後性格が変わったのも間違いないと思う」


 人間の中身が入れ替わりました、などという話、信じろという方が無理なのかも知れない。


「まぁ、この際、僕が誰であるかはひとまず置いといて、信じてもらいたいのは、僕が未来で見てきたこと。ワクチンパスポートは実用化され、来年には接種が義務化される。毎年二発ずつ打たれて、五年後にはみんな死ぬ体になってしまってる。だから、僕たちはこの災害を止めなければならない」

「昔のアンタは、ちょっと頼りない感じで、優柔不断で、世間の空気に流されまくる感じで、でも、すっごく優しいとことか、同期だったし、わたしの相談や悩みもよく聞いてくれたし、それで、ちょっと好きだった。付き合えたらいいかなぁ、なんて思ってた。でも、今のアンタにはそんな風には少しも感じない。アンタと恋愛しようなんて思えない」

「嫌われた、かな?」

「違うよ。今、アンタとわたしは、同士だ」


 この日も由奈は普通に帰っていった。飲み過ぎた酒で、足元がちょっとおぼつかなかったが。月曜からの仕事の段取りはまかせて、と改札の向こうで手を振っていた。


 部屋に戻って、ネットを開くと、YAHOOのトップに今日のデモが載っていた。これほど大きく取り上げられたら、過去の僕だって気がつかないはずがない。ひょっとしたら、僕が過去に来たことによって、歴史が変わったのかも知れない。


 SNSでもデモ、暴動は大きく取り上げられていて、賛否は分かれていた。もう六割がワクチンを打っていて、ワクチン非接種組はどんどん少数に。でも、接種した人でさえ、ワクチンパスポートはおかしいと声を上げてくれている。


 二回打ったが三回打つのは嫌だという人もいる。話が違うと言う人も。ワクチンの効き目が科学的に揺らいできている。というより、科学を騙った目眩ましにもだんだん目が慣れてきて、真実の輪郭が見え始めてきた。面白いコメントがあった。曰く、数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う。三回目、四回目を阻止しなくては。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ