表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフター・ワクチン ――君打ちたもうことなかれ――  作者: 星香典
第三章 ワクチンで死んだ少女
22/66

第三章 ワクチンで死んだ少女 08

 2021年十月一日。その日は台風だった。外では風が吹き荒れ、時折激しく降る雨が窓ガラスを叩く。


 緊急事態宣言が解除されたが、これでは宣言中よりも人流は少ないだろう。


 YAHOOニュースやツイッターでは、緊急事態宣言が開けてもコロナやワクチンの話題で盛り上がっている。専門家は急激な感染者の激減を適当な理由を付けてごまかしている。正直に分からない、という者もいる。


「東京の感染者は八月末までに一日三万人超、少なく見積もっても七千人超になる」という京都大学教授の予想は豪快に外れた。


 彼はどうして外したのだろうか。彼だけじゃない。多くの専門家が恥も外聞もなく桁外れに予測を外している。正しい予測が出来る専門家はいないのか。


 いや、実際に正しい予測をしている専門家も、詳しく調べるといるのだ。だが、メディアが出鱈目な専門家ばかりを選んでカメラの前に立たせるので、専門家と言われる連中がみんな出鱈目な存在に見えてしまう。


 政府とメディアはどうして出鱈目な専門家ばかりをかき集めるのか。その答えは、このパンデミックの正体を国民の目から韜晦するため、と考えるのが一番合理的だ。


 出鱈目な専門家、補助金詐欺の座長、デマを拡散する大臣、目が死んでいる首相。海の向こうでは老大統領が見境のない接種義務に乗り出した。イスラエルは給付金を止め、グリーンパスがないと働けないようにした。


 どさくさに紛れてHPVワクチンの積極的勧奨再開。ソトロビマブなる怪しげな新治療薬も登場。


 由奈からラインが来た。明日は十時に新宿パルコとのこと。僕は了解と返事を送る。


 雨が弱くなったのを見計らって、外へ出てみた。風が強い。小雨を避けるべく傘を開いたら、骨組みが裏返った。


 アメ横で適当に食事をして、趣味の書道用品を買って帰る。ゆっくりとした一日だった。筆で文字を書きながら考えた。


 来年、ワクチン接種法が制定され、ワクチン接種は義務化される。ワクチン接種法が改正されるまでの2026年までの間、国民は年二回の接種が義務づけられる。2026年ワクチンの副反応が明らかになる。それは接種から20年以内に死亡するというものだった。


 2031年に妻の理恵が死んだ。あと追うべく僕は自殺を試みる。しかし、目が覚めると2021年の弟の体に乗り移っていた。弟は2021年にコロナに罹って死んだはずだった。だけど、弟の命日に目が覚めて、僕は生き続けている。僕自身、達也としての自我と記憶を持ちつつ、弟の記憶も頭の引き出しには入っていて、人の顔や名前を覚えている。2021年、今この時代にも僕である達也はいる。今この瞬間、2031年から弟の体に入った僕と、2021年の僕がいる。僕が二人いる? 一体僕は誰なのだろうか。弟の魂はこの体に戻ってくるのだろうか。


 夕方、由奈が来るかも知れないと、ちょっと部屋を片付けたが、インターホンが鳴ることはなかった。その代わり、この時代の僕からラインが届いた。日曜日の待ち合わせ場所だ。


 御茶ノ水駅、水道橋口、十八時。式場との打ち合わせのあと行くから、もし後れたらすまない。


 と書かれている。式の一週間前の打ち合わせ。確か、打ち合わせが終わったあと、会社から呼び出されたような気がした。どこかの店舗でなにか問題が起きたような……。しかし、それは今の僕にはどうしようもないことだ。


 楽しみにしてるよ、と返事をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ