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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 最終章:世界探訪「世界の境界編」
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魔王討伐

よろしくお願いします。

早いもので次話で第1部最終回です。


第2部……書けるといいな~。

魔界ゲートを背に、魔王城へと向かう。

地面にはまだ、魔王たちが付けたであろう足跡などが残っていたので迷う心配も無い。

まあ、実際には魔力の反応を追っているんだが。


そうして進んでいくと、魔王城が見えてきた。

いや、正確には魔王城跡と言った方が正しいかもしれない。

なにせ俺が来る前に、既に何者かの攻撃を受けたらしく、本来あったはずの防御結界は破壊され、城の中央部にも見事な風穴が空いていた。


まあ、何者かも何も原因は足元を見れば一目瞭然だ。

暗黒龍が最初に放ったブレス。あれが上手い具合に魔王城まで届いていたらしい。

……魔王、死んでなければいいけど。



そんなことを考えながら魔王城を眺めていると、向こうから出迎えてくれた。


「強力な魔力反応が近づいてくると思えば、貴様が勇者か」


そう声を掛けてきたのは、幻影魔法で映し出されていた魔王だ。

右手に禍々しい杖を持ち、左手に黒い卵のバクを抱えている。

魔王の他には幹部クラスなのだろう、強力な魔力を放つ存在を中心に20体を従えている。


『遅くなってごめんな、バク。無事だったか?』

『……(ぐるる~)』


念話でバクに声を掛けると、小さな反応だけが返ってきた。

これは、お腹の鳴る音か。多分魔王の手に渡ってから、魔力は出る一方で供給されなかったんだろう。

でもこの分ならまだ心配は無さそうだな。

っと、魔王を置き去りにしたらかわいそうか。


「正確には勇者代行だ。本来の勇者は既にこの世界を去っているからな」

「ふん、それでか。突然遠距離から魔道砲を撃ち込んでくるとは勇者らしからぬ行動だと思っていた」


いや、魔王から勇者らしさを求められてもな。


「そちらこそ。魔王なんてものは玉座で踏ん反り返って勇者を待つものだと思っていたが?」

「きっ。貴様のせいだ! あの魔道砲のせいで玉座の間が半壊してしまったので、仕方なく出てきてやったのだ!!」

「残念。そのまま魔道砲に撃たれて死んでくれれば楽だったのに」

「ふんっ。あの程度の一撃。我がこの杖を一振りしただけで消し飛ばしてやったわ」


そう言いながら、これ見よがしに持っている杖を見せ付けてくる。

偉そうに言ってるけど、言い換えれば、その杖が無かったらピンチだったんじゃないだろうか。

まあ、どちらにしても俺のやることは変わらないか。


「なあ、一つ提案なんだが、その左手に抱えている、お前が新魔結晶って呼んでるそれを置いて魔界なり元の世界なりに帰ってくれないか」

「なんだ、命乞いか。見苦しい。貴様こそ、降伏するなら楽に死なせてやるぞ」

「あー、まあ当然聞き入れてはくれないよな。仕方ない。それなら力ずくで返してもらうよ」


地面に手を当てて魔法陣を作成する。

広さはちょうど魔王たちが全員納まるようにして、結界を展開する。

さながら白いドームに覆われたような状態だ。


「ほう、聖域結界か。この広さの結界を張るのは褒めてやるが、残念だが我々には大した効果は出ていないようだぞ」

「いや、聖域じゃない。単純に外に出れないように一方通行の壁を作っただけだ」

「自分ごと我々を封印するつもりか。小賢しい」

「いやだから違うから。俺が死ねば結界も壊れるから安心してくれ」

「ふん。そんなに死にたいなら一思いに殺してやれ」

「「はっ」」


その声に呼応して部下の魔物たちが飛び出してきた。

しかしその時、結界の壁を突き抜けて弓矢と投槍が飛んできて魔物に降り注いだ。


「ぐぁっ。なんだこれは」

「くそっ、騙しやがったのか、勇者の癖に!」


いや、最初から一方通行だって言ったはずなんだが。


「所詮魔王と言っても、魔物の親玉ってだけで頭の方は大したことないのね」

「全くだ。この結界、外から中は丸見えだったぞ」


俺の気持ちを代弁しながら結界の中に入ってきたのは、竜人族の突撃部隊の青年とエルフのララだった。


「隊長。竜人族突撃部隊100名、参上致しました。

隊長ひとりで魔王城に突撃なんて水臭いですぜ」

「ジン様。エルフ青年隊。バカウマさんの協力の元、精鋭を10名連れて来ました。

射撃支援はお任せください。

あ、バカウマさんは既にエリーさんのところに戻っていきましたよ」


なるほど、足の速い部隊だけで駆け付けてくれたのか。


「みんな、来てくれてありがとう。

ところで魔王配下の魔物ってもっと沢山居るはずだけど、そっちはどうなってるんだ?」

「心配には及びません。魔王城の反対側にて冒険者、騎士団などの各種混成部隊とにらみ合いをしています」

「エリーさんやミスリニア、港町などから応援物資も届いていますし、戦力的にも申し分ないはずです」


そうか、みんな来てくれているんだな。

ならこっちをさっさと終わらせて、向こうの負担も減らせるようにしよう。


「魔王の相手は俺がするから、皆は他の魔物へ牽制だけ頼む」

「牽制だけ、ですか」

「そうだ。魔王が居なくなれば、他の魔物は魔界に帰るだろう」

「なるほど」

「じゃあ行ってくる」


俺は全速力で魔物たちの脇をすり抜けて、魔王の所まで駆け抜ける。

流石というか、途中何体かはその動きに合わせて攻撃を仕掛けてきたので、手を当てて受けたり反らしたりする。


そして、目の前に来た俺を見て、魔王がニヤッと笑って杖を突き出してきた。


「馬鹿め。魔族の中で最強だから魔王なのだ。

それをその身で味わうがいい!」


その杖を左手で受け止める。

それを見て魔王はさらに笑い出した。


「フハハッ。本当に馬鹿な勇者だな。

いいか、この杖はありとあらゆるもののエネルギーを吸収し、無力化できるのだ。

先程の貴様の魔道砲もこれで消し飛ばしてやったのだ。

どれ、貴様の力も吸い尽くしてやろう。

ふむ、勇者を我の下僕とするのもまた一興だな。ハァッハッハッ」


……えっと。


「すまん、魔王。何も起きないんだが」

「はぁ!? そんな馬鹿な。貴様、いったい何をした!!」

「いや、何もしてないぞ。

えっと、調べるからちょっと借りるぞ」

「なっ、おい!」


魔王から杖を取り上げてアイテム空間に入れてみる。


【救神の左手。救神の力の一部を宿しており、触れた対象のエネルギーを支配する効果を有する】

【魔結晶の杖。大量の魔石を合成し結晶化させた杖。使用者の魔力適正を3ランクアップさせる】


なるほど。さっき言ってた吸収とか無力化ってのは『救神の左手』の効果か。


「貴様!我の杖を返しやがれ」

「あ、はいはい」


魔王に『魔結晶の杖』を返してあげる。

魔王は受け取った杖を大事そうに抱きしめると、距離をとって今度は左手に持った神魔結晶(黒い卵=バク)を掲げた。


「まったく、油断もスキもあったもんじゃない。

だが、これで今度こそ貴様も終わりだ!

この神魔結晶の力を全て解放すれば、貴様など跡形もなく消し飛ぶだろう」

「全てって、それはまずいだろう」

「フッ。ようやく貴様も焦りが見え始めたな。それが貴様の限界というものだ」


魔王がそんな見当違いの笑いをしている間に、表面に小さな罅が入り出した。

これはやばいな。


『バク、大丈夫か??』

「……うきゅぅ(……おなかすいた~)」

「は?」


俺の問いかけに、念話ではなく、直接鳴き声が返ってきた。

あ、これってもしかして孵化してるのか?

それを肯定するかのように、罅が卵の上半分に広がると、一瞬にして砕け散り、中から黒いドラゴンが顔を出した。


「くきゅう!(おなかすいた!)」

「なっななな」


それを見た魔王は開いた口が塞がらないようだけど、ボーっとしてると喰われるぞ。

バクはふわっと飛び上がると魔王が持っていた魔結晶の杖に噛み付いていた。だから言わんこっちゃ無い。


「ハグハグ」

「な、き、ちょ、え、はぁ!!!?」


さらには魔王からもエネルギーを吸い取ってしまっているのか、みるみる魔王の身体が普通の人間サイズまで小さくなってしまった。


「けぷっ」

「バク、魔力あげるからこっちおいで」

「きゅ~(はーい)」


ぱさぱさと可愛らしく翼をはためかせて、俺の肩に乗ったバクの頭を撫でながら魔力を食べさせてあげる。


「きゅい~(ごくらく~)」

「食べ終わったらプライベートルームで休んでて」

「きゅ!」


さて、これで後は、そこで呆けている魔王と魔物たちを何とかするだけだな。


魔王様はやられ役です。ラスボス、なんですけどね(汗)

結局最後までまともな戦闘はしませんでした。


########


自慢の武器を失った魔王と、その配下の魔物たち。

彼らの処遇について一計を案じるジン。

そして……。


次回(最終回):この手で紡ぐ未来


########


次回作について


以前活動報告にも書きましたが、

第2部を書き始めるまで時間が空きます。

それまでの間、習作として、学園ものや恋愛ものを書いてみようと思っています。

全く毛色が異なりますが、もし良かったらそちらも目を通していただけると嬉しいです。


「Eランクの僕とSランクの彼女」

https://ncode.syosetu.com/n9522fc/


なぜか甘甘のラブコメになりそうな予感です。

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