暗黒龍
よろしくお願いします。
これを含めて後3話で第1部完結の予定です。
第2部についてですが、シリーズものとして書いていく予定です。
=第1部が終わった時点で一度「完結」という形を取ります。
魔界に繋がるゲートから瘴気があふれ出す。
飛び出してきたのは数十体の漆黒のワイバーン。
そして、仮面をつけた暗黒龍だった。
「グオオオォォ!!(―――!)」
暗黒龍は一声あげると同時に大きく息を吸い込む動作をした。
って、ブレスか!
俺はすぐさま横に駆け出して、ブレスが吐かれる瞬間、逆方向にジャンプする。
カッ!! ズドドドドッッ!!
凄まじいな。
フレイさんのブレスを火炎放射器に例えると、暗黒龍のブレスはまさにレーザーだ。
ブレスが通った後は、幅2m程の跡が地平線まで続いている。
これは下手に地上で戦うと周囲への被害が酷いことになりそうだ。
ただ俺を逃がすまいとワイバーンたちが周りを囲み始めた。
と、その時。
西の空から巨大な火炎弾が5発飛来してワイバーン達を爆散させた。
「クルオオォォ(おとうさま~)」
「ガオオッ(ジン様、助太刀に来ました)」
そんな鳴き声と共に5体のドラゴンが飛来してきた。
1体は子供、ってレンか。
どうやらフレイさんに付いて来たみたいだな。
3体のドラゴンが上空でワイバーンを牽制するなか、フレイさんとレンが俺のそばに着陸してきた。
流石に戦闘状態だから人の姿にはならないけど、スッと俺に頭を寄せてきた。
『おとうさまのお手伝いにきたの』
『ありがとう。無理はしないよにな』
『うん♪』
レンの頭の角の間くらいを撫でてあげると、レンは嬉しそうに目を細めた。
おまけで防御魔法を展開しておこう。
『ジン様、少しだけお話があります』
フレイさんは真剣さと悲しみを湛えたような目をしていた。
『分かりました。さ、レン。あのワイバーン達の相手を頼むな』
『はい、行って来ます』
そう言って飛び立つレンを見送ってフレイさんと向き合う。
『あの暗黒龍についてなのですが、出来れば殺さないであげて欲しいのです』
『それは、何か理由があるんだね』
『はい。何というか、先日戦った時に、あのドラゴンからはジン様のにおいがしたんです』
『におい?俺ってそんなに臭うのか』
『いえ、ジン様はいい匂いで……ではなく、魂のにおいというべきものです。恐らくジン様に近しい存在ではないかと。
それと、泣いているような助けを求める思念も発していました。だから出来ることなら助けてあげてください』
『暗黒龍に知り合いはいないはずなんだが。
でもまあ、あの邪魔くさい仮面を外して、話をしてみる。大丈夫、何とかするよ。
っと、急がないとまずいな』
話をしている間に、暗黒龍がブレスの2射目を準備している気配が伝わってきた。
俺は一気に暗黒龍の懐に飛び込んで胸元に手を当てる。
「どっせい」
思いっきり突き飛ばせば、ブレスをキャンセルさせつつ、100m程吹き飛ばすことに成功した。
よし、このまま回りこんでワイバーンの制空権から外れよう。
そうして無事にフレイさん達vs漆黒ワイバーン、俺vs暗黒龍の状態に持ち込めた。
これで、後はあの仮面を外すだけだな。
「グルルッ!(―――)」
暗黒龍の鱗が一瞬光ったかと思うと、そこから大量の魔力弾が生成されて撃ち出される。
くっ、まあ、そう簡単には行かせてくれないか。
流石に数が多すぎて捌き切れないので、避けるしかない。
「ガアッ!(―――)」
横っ飛びに避けた先に右手の爪撃が迫る。
「ちっ」
さらに避けようとした先に魔力弾が待ち構えていて逃げ道を塞がれた為、慌てて盾を創り出して、魔力弾の雨の中に突っ込む。
ズシャアッ!!!
爪撃が当たった地面は深く鋭く抉られていた。
ただそれを眺める暇もなく魔力弾が撃ち出されて来るので動き続ける。
なるほど。
ボクシングで言えば、魔力弾がジャブで爪撃がストレートって所か。
多分後ろに回り込めば爪撃の代わりに尻尾で吹き飛ばすのだろう。
良いコンビネーションだ。
ただ、惜しむらくは、攻撃が素直過ぎだな。
俺なら魔力弾に強弱を付けたり、フェイントを混ぜたりするだろう。
それと、さっきから動かしているのは腕ばかりで身体が止まってしまっている。
多分、対等に戦える相手に恵まれて来なかったんだろうな。
5度目となる爪撃が放たれたのを見て、俺は避けるのを止めた。
その代わり転移魔法を発動して暗黒龍の額に転移した。
そして暗黒龍の顔に付いている仮面に手を当てて、アイテム空間に回収した。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
【救神の右手。救神の力の一部を宿しており、触れた対象を掌握する効果を有する】
また神様か。この世界の神様は碌なことをしでかさない気がするな。
まあ、それはどうでもいいか。
それより今は仮面が無くなって大人しくなった暗黒龍だ。
そっと頭に手を置いて念話を送る。
『やあ。洗脳は解けたと思うけど、気分はどう?』
『……怒って、ない?』
『怒る?何か怒るようなことがあったかな』
『え。だって、あんなに大暴れしてフレイさんに大怪我負わせたり、今も攻撃してたし』
『それはあの仮面のせいだろ。それに、ずっと「助けて」って言ってたの聞いてたからな』
そう、ブレスを吐いた最初だけ「避けて」って言ってたけど、それ以降はずっと「助けて」って言ってた。
それならまあ、俺としては助けるほか無い。
『でも、もしそれで助けた後、僕が再び暴れ出したらどうしていたの?』
『その時はその時だな。改めて倒すしかないだろう。
それで、これからどうするんだ? 元の次元に帰るなら送り届けるけど』
『うん、元の次元に戻らないと。僕は本来、まだ存在していないはずだから』
『そっか。……あ、戻る前に、あのワイバーンに魔界に帰るように命令することってできるか?』
そう言った視線の先には、フレイさん達にやられて半数まで数を減らしたワイバーンの姿があった。
「グオオオォォ!!(みんな、魔界に帰って)」
「ギャギャッ(了解)」
「ガァッガァッ(ひぇ~助かった~)」
暗黒龍の鳴き声に呼応して、生き残ったワイバーン達が魔界ゲートへと入っていく。
フレイさん達もほぼ無傷だし、後は暗黒龍を元の次元に帰せば一件落着だな。
俺は暗黒龍の全身を包み込むように魔力を展開していく。
『よし、じゃあ元居た世界をイメージしてくれ。お前程の存在であれば、それだけで向こうとリンクが繋がると思う』
『うん。えっと、こうかな……』
……よし、繋がった。
『大丈夫だ。それじゃあ、行くぞ。向こうに戻っても元気でな』
『うん。パパも元気で』
そうして暗黒龍は無事に元の次元に転移していった。
……って、パパ!?
なんか最後に爆弾発言投げていったけど、どういう意味だったんだろう。
ま、まあ。もう送ってしまったし、今更考えても分からないか。
暗黒龍とワイバーンが居なくなったので、フレイさん達が俺の元までやって来た。
「ジン様。暗黒龍はどうなったのですか?」
「無事に召喚元の次元に送り返しておいた。今頃は向こうで元気にしているだろう」
「そうでしたか。良かったです」
「おとうさま。わたしワイバーンを5匹も倒したんだよ!!」
「おぉすごいな。よくやった」
「えへへぇ」
抱きついてきたレンの頭を撫でてあげつつ、残った魔界へのゲートをみやる。
うーむ、これは流石に穴が大きすぎて手当てでも直ぐには閉じれないな。
なら今は魔物が出れないようにだけしてしておくか。
魔王の対応も残ってるし。
俺はアイテム空間から、以前南海で漁をしたときに作った網を取り出した。
流石にこのままだと大きさが足りないので、材料を継ぎ足しして、何とか穴を覆えるサイズまで拡張する。
後はこれに結界系の魔法を重ね掛けして破られないようにすれば、そう簡単には魔物は出て来れないだろう。
念のため、フレイさん達にここの守護をお願いしておく。
よし、これで後は魔王をぶっ飛ばして、バクを取り戻せば全て解決だな。
本来なら数話に跨ってもおかしくないラスボスなのですが、いつものように1話で終わっていくという。
あ、「パパ」については皆様の想像通りと思っておいて下さい。
特にそれ以上の衝撃の事実は用意していません。
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暗黒龍を元の世界に帰し、魔王城へと向かうジン。
果たして最終決戦の幕が開ける。
次回:魔王討伐
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次回作について
以前活動報告にも書きましたが、
第2部を書き始めるまで時間が空きます。
それまでの間、習作として、学園ものや恋愛ものを書いてみようと思っています。
全く毛色が異なりますが、もし良かったらそちらも目を通していただけると嬉しいです。
「Eランクの僕とSランクの彼女」
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