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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 序章:ここはVR?それとも異世界?
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事実の再確認

よろしくお願いします♪

イケメンのイメージがつかない今日この頃。

夜も更け、少し前に夕食を乗せたワゴンが神殿横の3階建ての建物に運び込まれ、空になったと思われる食器を下げて行くメイドの姿を確認した。

おそらくこの建物が洗脳部屋って呼ばれていた部屋がある建物なんだろう。

あ、そういえば、飯食ってないな。用事が終わって余裕があったら食堂か調理場を探すか。


食器が下げられてから、30分が経ったのでそろそろ頃合か。

まずは建物の周りの警備や監視を確認する。って、居ないな。単純に警備がザルなだけなのか他の理由があるのかは分からないが、こちらとしては好都合だからいいか。


外から建物を確認した限り、明かりの付いている部屋は2階に2部屋、3階に1部屋。単純に考えれば男女で階を分けたんだろう。であれば、向かうべきは3階か。

というのも、これから突然部屋に押し入って話をしようと思ったときに、太陽って少年はまず話を聞かずに騒ぎ立てるイメージしかないし、晴明の方も冷静に話せたとしても理屈であれこれ考えこまれて話が先に進まない気がする。それに何より、こういったケースでは女の子の方が強姦だか和姦だか分からない状況になって傷つくことが多い。

俺は窓枠の窪みを使ったり、土魔法で外壁に出っ張りを作って3階まで上っていく。

うーん、傍から見たら不審者にしか見えないだろうな。

そうして窓から明かりの付いている部屋の様子を伺う。


「セイラ。俺は君をひとめ見たとき、心を奪われてしまったんだ。これほど美しい女性がこの世にいるのかと。

セイラ、君は俺の天使だ。どうかこれからは俺に君の全てを守らせてほしい」

「そんな・・・・・・天使だなんて」


そう言いながら、例のイケメン騎士がワインを片手に聖良に詰め寄っている。聖良の方もまんざらではない様子で、ワインを飲みながらもじもじしている。

一瞬俺のやってることって、逢瀬の邪魔をしているだけなんじゃないかとも思えてきたが、もう少し様子を見ながら洗脳部屋と呼ばれている理由を探してみる。

考えられるものとしては、ひとつは部屋もしくは建物自体に何らかの魔術が掛けられていること。だけどそれなら、俺がここに上ってくるまでに『手当て』で感知できているはずだ。

続いて、夕食とあのワイン。催眠薬や媚薬の類が含まれているとか。騎士の方は事前に解毒剤を飲んでいると考えれば可能性はありそうだ。でもそれだと洗脳「部屋」と呼ぶには弱い気がする。

あとありがちなのは、お香か。部屋の中に香炉っぽいものは、あった。ならその線が濃厚か。

っと、考え事をしていたら、話が随分進展していたみたいだ。いつの間にか聖良がベッドに押し倒されてるし。


「なあ、良いだろう。俺はもうこのままだと君を想う気持ちを抑えられそうにないんだ。一度きりでいい、君の全てを俺に見せて欲しいんだ」

「え、でも……」


さすがにこれ以上進まれると、割り込みにくいな。なので、ただの邪魔かもしれないが、入らせてもらおう。

俺は宝物庫の扉と同じ要領で窓をアイテム空間に仕舞うと、音を立てないように部屋に侵入しながら急ぎベッドに近づき、男の首筋に手刀を入れて気絶させる。


中は案の定、甘ったるい臭いが充満していたので風魔法で換気をしつつ、ベッドでぼーっとなってる聖良のおでこに手を当てて状態を確認する。やっぱり魅了状態になってるな。そのまま解毒して意識がはっきりするのを待ってやる。


「あれ?わたし、どうして……」

「お、気が付いたか。お前さん、さっきまで媚薬入りのお香を嗅がされて、意識が朦朧としていたみたいだな」

「媚薬?って、あなたはどうしてここに?たしか私たちと一緒に召喚されてきた人ですよね」


意識が戻ったら騒ぎ始めるかとも警戒したが、大丈夫そうだな。


「そうだ。今日は君達に質問があったのと、この部屋と君達の現状について伝えておきたいことがあったんでな。ちょっとお邪魔させてもらったんだ。後はさっきみたいな事になってるなら助けてあげようと思ってな」

「そうだったんですか。ありがとうございます。それで、質問というのは?」

「ああ。変に思わないで欲しいんだが、君達は、VRを知っているか?」

「VR?えっと、すみません。何かの略語なんでしょうけど、ぱっとは分からないです」

「やはりそうか。じゃあ、君達はこの世界に召喚される前はどこで何をしていたかは覚えているか?」

「はい、私たち3人は喫茶店に季節限定のスイーツを食べに行っていたはずです」

「そうか」


これで、この世界がVRゲームの世界ではないことが確定したようなものだな。ということは、これまで人を何人も殺してたことになるのか。まぁ今更だな。


「ありがとう、これで俺のほうの質問したいことは解決した。

次に君達の現状についてだけど、あいつの事で薄々分かると思うが、君達を篭絡して体の良い兵器や捨て駒として使おうとしているみたいだ」

「兵器って。そんなことがありえるんですか?」

「それを言ったら、この異世界か?の方がありえない話だろう」

「まぁそう言われてしまうと、そうなんですけど」

「ちなみに、俺は召喚された神殿を出たあと、外の森で殺されて捨てられそうになったところを、命からがら逃げてきたんだ。

他にも世界の危機って言う割には、この城は裕福すぎるし、君達みたいな子供に命がけで戦えっていうのも俺達の常識で考えれば異常だ。そうだろう」

「確かに、そうですね。なんで気が付かなかったんだろう」


まあ、恐らくは召喚のショックで頭が回らなかったとか、そんなところだろう。もしかしたら、魔法で意識誘導されていた可能性もあるしな。


「それで、これからどうする?」

「え、どうするって?」

「もしここを出るのであれば、今なら連れ出すことは可能だ。もしくは騙されたフリを続けてここに居続けるのも一つの手だ。少なくともここに居る限りは衣食住に困ることは無いだろうしな」

「あの、ここを出る場合はどうなりますか?あと騙されてるなら太陽と晴明も連れて行かないと」

「一緒に召喚されたふたりか。残念だが今の俺の実力では、そっちまで手が回せないから置いていく事になる」


実際には、あっちのふたりは今の状況に満足している可能性が高いから、その場合、騙されているって言っても信じないし、最悪騒がれたら脱出が困難になる。特にあの太陽って少年は異世界転移を喜んでた節もあったし、なおさらだろう。


「あと、俺と一緒に出た場合、当面は面倒を見てやってもいいが、ずっとは無理だ。あと行き先がどうなっているかは俺も分からないから衣食住も安定している保証はないな」

「そんな……」


城下町の様子を見ても、この国の景気が悪いのは明らかだ。下手に安請け合いする訳にもいかない。

そんな俺の言葉を聞いて、考え込んでいたが、結論が出たようだ。


「すみません、やはりふたりを置いては行けません。ちゃんと説明して、隙を見て一緒に逃げ出す事にします」

「分かった。大変だとは思うが頑張ってくれ」


さて、後は何か餞別でもあげられたら良いんだが。そう思ってアイテム空間を確認する。宝物庫で手にいれたアイテムで役に立ちそうな物はっと。あ、これは良さそうだな。


「じゃあ、そんな仲間思いの君にはこれをあげよう」

「何ですか?……腕輪?」

「ああ。若干状態異常に耐性が付くみたいだ。今後も魅了やら暗示やら麻痺やら色々仕掛けられる可能性が高いだろうからな」

「そう、ね。ありがとう、お兄さん。有り難く使わせてもらうわ」

「あと、老婆心でひとつ言っておくが、他のふたりは間違いなく魅了されてると思う。状態異常って意味合いでも、勇者っていう今の状態にも。だからいきなり騙されてるんだ、なんて言っても信じては貰えないし、逆に不審がられる可能性もあるから慎重にな」

「分かったわ。気を付けてみる」

「じゃあな。縁があったらまた会おう」


そう言って俺は入ってきた窓から外に出る。あ、ちゃんと窓は元通り嵌めておいた。

地上に降りて振り返れば、聖良が手を振っていたので振り返して移動を開始する。


さ、まだ夜明けまでは時間もあるし、ちょっと寄り道していくか。

一方その頃。少年達の部屋はエロエロな事になってる模様。書かないけど。


次回の間違った予告

国を出る俺の前に現れる王女「わたしを見捨てるなんてひどいわ!」

(本編で王女はもう出ません)

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