ダンジョン攻略、そして
よろしくおねがいします。
前触れもなく、この話で本章終了です。
そして、感想いただきました!!
ありがとうございます。
まずは。
物は試しに中に入ってみるか。まぁ嫌な予感しかしないんだけど。
そうして防御結界全開にしながらダンジョンに入る。
……何というか「ぎゅむ~」って効果音が出そうな状態だった。
東京の通勤ラッシュというか花火大会というか、つまりは超満員のぎゅうぎゅう詰めだった。
なるほど。ダンジョンの外に出て来たのは、この圧力に耐えかねて押し出されて来たんだな。
まったく、世界樹の地下のダニといい、こいつらといい、どうして異常繁殖してるんだろう。
誰かそういう研究が好きなやつは居ないだろうか。
まあ、ひとまず今はそれは横に置いておこう。
問題はこれをどう処理するか、だよな。
んーーーよし。
ここはひとつ、化学実験と洒落込むか。
最初にダンジョンの入口をこの前拾った大岩で塞いでおいてっと。
ではまずアイテム空間から鉄を大量に取り出して、巨大なU字型に整える。
続いて、その両端を防御結界の外に突き出して「ずぼっ」。ま、何か刺さったのはご愛敬だな。
そこに電撃魔法で大量の電流を片方に流れるように流し込むと……あら不思議。U字の先端から泡が大量に出るではないですか。
ま、何をやっているかと言えば、水の電気分解だ。泡は主に水素と酸素だな。
これでダンジョン内の水を無くせばクラゲは生きてはいけないだろうという算段。
ついでに鉄に触れてるクラゲが感電してして死んでるのは見なかったことにしよう。
どうせすぐに水と同化するし。
ただ、流石にこれでダンジョン内の水全てを分解するのは時間が掛かり過ぎる。
なので、電極の反対側では水のろ過装置を作る。
作ると言っても、要は魔物と毒素を通さないだけで十分なので、その要素を盛り込んだ防御結界を展開すれば良いだけ。
そして結界内に入った普通の海水をプライベートルームに用意した海(予定地)に流し込む。
そうするとどうだ。みるみるプライベートルームの中にビーチが出来たではないか。
よしこれでいつでも海水浴が楽しめるな。
そうしていくと、みるみるダンジョン内の水が減っていき、体形を維持できなくなったクラゲからドンドン潰れて死んでいった。
後には高濃度の毒素を含んだ海水とクラゲだ。
ただそこで予想外の事が起き始めた。
まだ海水の中に居る一部のクラゲが石の様に固くなっていった。
何が起きてるんだ??
って、そうか。毒素が濃くなり過ぎて、体の水分が必要量維持できなくなって来たのか。
これは嬉しい誤算というべきなのかな。
結果として、海水の水位が俺の膝くらいまでになった頃。
ダンジョン内で活動しているクラゲはいなくなった。
よし、後はこの毒素を取り除いてしまうだけだな。
プライベートルームから黒い卵を取り出して抱き抱えるようにして持ちつつ、海水に魔力を流し込んで行く。
「今回も頼むな」
そう声を掛けなが毒素を卵に送り届ける。
いつもながら美味しそう反応を返してくれるからついつい頼ってしまうが、『手当て』と同じように甘え過ぎかもしれないな。
あと、ここまで世話になってるんだから、いつまでも「黒い卵」じゃなくて名前を付けてあげないとな。
名前か……何が良いだろうか。
黒で考えると安直か。
そんなことを考えながら、ふと卵を見れば、パクパクと美味しそうに毒素を吸収していた。
毒を食う、悪いものを食べてくれる……「バク」かな。
獏は本来、悪夢を食べてくれる神獣だ。
だから、ちょうど良いと思う。
『なあ、いつまでも黒い卵って呼ぶのもなんだから、これからは「バク」って呼ぼうと思うが、どうかな』
『バク?バク……うん。良いね、それ。今から僕はバクだね♪』
飛び跳ねる勢いで喜んでくれた。
まあ、まだ卵なんだけど。
『さて。このダンジョンの浄化もさくっと終わらせようか』
『はーい♪』
名前を付けたからか、バクはさっきまでの数倍の速度で毒素を吸収していった。
おかげで思ったより早く終わりそうだ。
あらかたの毒素を回収した所で、プライベートルームに入れた海水を少しずつ戻していく。
そこに以前創った毒素を浄化する植物や、魚の卵を放流する。
これでまた毒クラゲが発生しても大丈夫だろう。
「あとは、これか」
岩の合間に見つけた、直径2m程の円形の台座。
形状的に、ここに何かありますよって言っているようなものなんだが、さて。
この下にコアが眠っているのかもしれないが、それだったら今まで見つかっていないのも変な話か。
俺はバクを置いて地面に手を当てる。
さて、なにがあるかな。
……ジジッ……
?なんだ??
何か雑音が聞こえたような気がしたが。
……ジジッ……ジジジッ……
まただ。
海流がうるさくて音の発生源まで特定できないが、確かに波音とは違う変な音が聞こえる。
どこかで聞いたことがある気もするんだが、どこだったか。
……ジジッ……パリンッ!
「なっ!」
ガラスが割れたような音が響いたかと思った瞬間、一瞬、目の前が白く染まる。
なんだ今のは。まるでカメラのストロボを焚かれたような強烈な光の柱が目の前に現れたみたいだったが。
そこで気が付いた。
ふと自分の手を見ようとして、両手の手首から先が無くなっていた。
……なんだこれ。
まるで元からそこで切り取れるものなんだって言いたくなるような綺麗な切断面が見て取れた。
そして思い出したように、血が噴き出してきたので、慌てて治癒魔法で治療しつつ、無くなった手を生成する。
新手の魔物の攻撃かと、周囲を警戒してみたけど、ダンジョンの中には既に敵性の存在は居なかった。
とすると、怪しいのはこの台座か。
そう思って台座に視線を戻したとき、違和感が頭を過ぎった。
「あれ?バクはどこに行った?」
確かさっき、そこに置いてから台座に『手当て』を行っていた筈だが。
……まさか!!
『バク~、聞こえたら返事をしてくれ!!』
…………
返事がない。俺の探知範囲の中にもそれらしい気配は感じられない。
くそっ。まさかさっきの光の柱か。
俺の手を一瞬で消し飛ばしたことを考えれば、バクもひとたまりも無かったのかもしれない。
こんな事なら地面になんて置かずにプライベートルームに戻っていてもらえば良かった。
ただそれも後の祭りか。
さっきの光の柱が何だったのか、誰がやったのかを解明して、きっちり落とし前付けてもらおうじゃないか。
まずは現場検証だ。
改めて台座を見ると、光の柱が出来る前と何も変わっていない。
どうやら、あの光は台座に対してはなにも影響を与えなかったみたいだ。
つまり、生き物限定の効果だったってことかもしれないな。
そして台座の上も、俺の手とバクが消えた以外、何も変わっていない。
うん、おかしい。
何らかの攻撃であれ、魔法であれ。多少の残滓は残っているはずだ。
ましてやバクはエネルギーの塊みたいな存在だ。それを跡形も無く消滅させるなんて、まさに神の所業だ。
……神?いや、まさかな。
それだったらまだ、転移させられたって方がしっくり来る。
って、そうか。転移もしくは召喚という可能性もあるのか。
それだったら無事に生きている可能性も出てくるな。
召喚と考えたら、あの時の変な音。
あれも俺が召喚された時に聞いた音と似ていた気がする。
そうすると、気が進まないけど最初のあの国に行くか。なにか手がかりがあるかもしれないし。
さ、そうと決まればさっさとこのダンジョンを元に戻して外に出よう。
久々に中学の化学実験を思い出しました。懐かしいですね。
ただそれで全部の海水を分解するのはちょっと無理があるので、そのまま回収です。
音の仕込みは第1話にこっそり入れています。
逆に言うと、最終章への仕込みはその頃に思いつきました。
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ダンジョンを出ると、そこは別世界だった。
いや、世界は一緒だが、何かがおかしかった。
ジンは不安を胸に、異変の調査に乗り出す。
次回:暗転する世界




