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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第5章:世界探訪「南海編」
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毒の発生源

よろしくお願いします。

話の切れ目が難しいですね。


そして、こっそり章タイトルを変えています。

再び海の上を飛ぶこと10分ほど。

途中で釣り上げた魔物をプライベートルームに入れたら悲鳴が聞こえてきた、なんてハプニングもあったが、無事に離れ島が見えてきた。


ザザーン。ザザーン・・・・・・

「・・・ッ・・・ぁ!・・・・・・ぅ!?」


なんだろう。

島の方から、波の音とは別に何かの音が聞こえてくる。

若干声にも思えたけど。


「ぎがぎ!?ごががが!!」


ぐっ。何かの叫び声にも思えるけど、どんな化け物だ。

島に近づくとかなり耳障りな騒音で、自動翻訳スキルが変換してくれないということは、明確な言葉でもないようだ。

音の発生源は一体何処だ。

これか。この大岩、多分人魚が言っていた岩戸だろうな。その奥から響いてくる。


これ、開けずに帰ったらダメかな。ダメだろうな、やっぱり。

ひとまずノックしてみるか。


ゴンッゴンッ

「べべばぼべぶべ!ごべぶぶびざざざざ!!」


若干怪音の音程が変わった気もするけど、ダメだな。

続いて岩に手を当てて、岩の奥をスキャンしてみる。

中は人型の生き物が1体だけ居る様だ。この音もそれが発しているのだろう。

例の姫が毒かなにかにやられた状態なのか、はたまた別の魔物が入り込んだのか。

まあ、腹を括って開けるか。

特殊な魔法じゃないと動かないとか言ってたけど、きっと『手当て』先生なら大丈夫だろう。

一応耳に海草を詰めて耳栓代わりにしてから、大岩に手を当てる。


「よっと」

『ぎがべばぎぎぎ!ぎがごべぶぶびざがべばぎ!?ごぐががべぶぶびざががが!!』

『べべがばござだぶべばどだぶぼぶびびばがずずじぞざだばだざがヴヴ』


うぐっ!!

覚悟はしていたが、大岩をアイテム空間に取り込んだ瞬間、大型スピーカーで鳴らしたような怪音が圧力を伴って襲ってきた。

その衝撃で付近の岩に亀裂が入っていく。

くっそ、どっかの漫画の音痴キャラかってんだ。

なまじ魔法がある世界な分、声に魔力が籠められて威力が増してやがるな。

音の発生源はあれか。

四つんばいになりながら、叫び続けている人型の生き物が居る。

毒の影響なのか、首から上は爛れてみるも無残な状態になっている。よくこれで叫べるな。


怪音の圧力を撥ね退けるように結界を張りつつ、人型へと一歩ずつ近づいていく。

間近で見れば、確かに海の一族だったのであろう、身体のあちこちに鱗や鰭が見える。

そしてようやく手の届く範囲に来たところで、俺はその爛れた顔に手を当てた。

これは、なにか顔に張り付いているな。そのせいで爛れたようになっているんだ。

急ぎ顔に張り付いているものを取り除いて、毒素を吸い出し、顔や喉を優先して治療を施していく。

治療が進むにつれて怪音も止み、後には顔立ちの整った女性が横たわっていた。


さて、この人が探していた姫様だろうか。

人魚達に確認してもらえばいいか。


まだ意識の戻らないその女性を抱き上げてプライベートルームへと入る。


「おぉぉ、姫様!!姫様は無事なのか!?」


プライベートルームへ入るなり、人魚が駆け寄ってきた。


「命は無事だけど、まだ意識が戻ってないから静かにな」

「はっ。すみません」


姫様を草原に横たえて状態を確認する。

呼吸、脈拍、体温、ともに問題無さそうだな。

外傷も治したし、内臓や脳にも異常は無さそうだ。


「んっ」


そうして様子を見ていると、意識を取り戻したようだ。


「ここは・・・・・・いったい・・・・・・」

「ここは俺のプライベートルームだ。安全だし隣に仲間の人魚もいる」

「そう。ああ、二ジー。無事だったのね」

「はい、姫様。一時はダメかと思いましたが、こちらの人間に助けていただきました」

「・・・・・・あ。そうです、毒の魔物が!魔物はどうしました!?」


がばっと起き上がろうとする姫様を慌てて押しとどめる。


「まあ落ち着け。ここに魔物はいないし、居るのは味方だけだ」

「きゅきゅっ」


そう伝えた所で、タイミング悪くハムッチの眷属が俺の肩から顔を出した。


「ま、まも・・・・・・きゅ~」

「きゃぅ」

「よしよし、ちょっとタイミングが悪かっただけで、お前が悪いわけじゃないからな」


姫様は驚いて意識を失ってしまった。

ハムッチの眷属が肩を落としていたので慰めておく。



ようやく落ち着いて意識を取り戻した姫様と軽食を摂りながら挨拶をする。


「先ほどはお見苦しい所をお見せしました。

海の一族が一つ、ライール族の第2王女のセイル・ライールです。

このたびはお助け頂き、ありがとうございました」

「冒険家のジンです。まあ、さっきのは不幸な事故ということで忘れましょう」

「はい、そうしていただけると助かります」

「ところで、セイルさん。先ほど、毒の魔物が、と仰っていましたが、毒を吐く魔物が居たのでしょうか」

「ジン様。わたくしのことはどうか、セイルと呼び捨てで。

わたくしが見たのは毒そのものが意思を持って襲い掛かってきたように感じました」


そういえば、セイルさ、セイルの顔には何かが張り付いていたな。

取り除いたのはアイテム空間に放り込んでおいたけど、なんだったんだろう。


【魔毒クラゲ(乾燥)。体内で毒を生成し、獲物を毒で犯し捕食する。体の99%が水分と毒素で構成されており、水なしでは生きられない】


あー、くらげか。

確かに本体はほとんど無色だし、ぱっと見は毒の塊にしか見えないか。


「あの、ジン様。これはいったい・・・・・・」

「それが魔物の正体なのですか?」

「クラゲと呼ばれる生き物です。しかもこれは体内で毒を生成するそうなので、今回の海の汚染の元かもしれないですね」

「まぁ」

「なんと面妖な」


この世界では、クラゲはあまり知られていないようだな。

海の一族が知らないんだから、この海域には全くいないのかもしれない。

まあそれはいいか。今はこの魔物を一掃することを考えよう。


「えっと、二ジーだっけ。俺をダンジョンの入口に案内してくれ。それと道中でそのダンジョンについて知っていることを教えてくれ」

「ジン様。それでしたらわたくしが参ります」

「なりません、姫様。危険です!ここはご自愛を」


それを聞いてズズイとセイルが迫ってきた。

さらに押しとどめるようにニジーも迫ってくる。


「いいえ、こういう時こそ、王家が矢面に立つべきなのです」

「いいえ!姫様にはここに残り、民を先導する役目があります。ここはどうか、私に!!」

「「いいえ!……」」


いや、正直、どっちでもいいんだが。


「セイル!」

「は、はい!!」

「君はここに残り、俺が居ない間の留守を守ってくれ」

「はい、畏まりました」

「ニジー。別にダンジョンの中に突撃する訳じゃない。

道中は俺が結界を張るから案内だけ頼む」

「承知致しました!」


まったく、放っておくと延々と続けそうだからな。

こっちでさっさと決めた方が早い。


「じゃあ、行ってくる」

「お早いお戻りを」


しずしずと頭を下げるセイルを残し、俺とニジーは外へ出る。


「件のダンジョンはこちらです」

「ああ」


ニジーの先導の元、防御結界を張りつつ海中を進む。

毒素と一緒に魔物が寄ってくるが、今回は無視だな。


「それでニジー。そのダンジョンはどういう構造なんだ?」

「はい。単層構造の海中ダンジョンです。ダンジョンですので何処かにコアが有ると思われますが、見つけた、という話は聞きません。

あ、あそこです」


程なくして、ダンジョンの入り口に辿り着く。

そこからは今もブクブクと黒い毒素が泡になって吹き出している。

これはひどいな。


「ニジー。案内ありがとう。ここからは俺一人で大丈夫だ」

「いえ、このままお供致します」

「いや、すまんが、誰かを守りながらだと大変だからセイルの所に戻っていてくれ」

「うっ、畏まりました」


俺が若干ジト目をするとしぶしぶ引き下がってくれた。

そうこうする内にダンジョンに異変が起きる。


どぼっっ!


これは……巨大クラゲか。

まるでダンジョンから押し出されるように出てきたな。

なるほど、確かに知らなければ毒そのものが意思を持って動いてるように見える。

っと。このまま放置も良くないな。

俺は銛を作り出して、一気にクラゲに突き刺した後、バラバラに切り裂く。

それでクラゲそのものは死んだけど、毒は残るんだな。

慌ててクラゲの居た空間を魔力で包んで毒をアイテム空間に送り込む。


「ふぅ」


さて、じゃあ、急ぎダンジョン攻略と行きますか。

姫様は本来、歌姫の側面も持ち合わせています。

ただ、カリスマは無いみたいですが。


########


毒を吐き出す海底ダンジョンの攻略に乗り出すジン。

だがそこで、事態は急展開する。


次回:ダンジョン攻略、そして

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