南の海賊王
よろしくおねがいします。
ブルーさんに付いて、王城、というより要塞?へと入っていった。
そして通されたのは謁見の間、ではなく会議室とでも呼ぶべき部屋だった。
中には海賊王のホックさんと、側近か将軍と思われる人たちが長テーブルを挟んで座っていた。
既に連絡が入っていたらしく、俺の顔を見ても驚いてはいなかった。
「ホックさん。良くご無事で」
「ブルーか。まあ色々あったが、お前の後ろに居るジンに助けられてな。何とか無事に帰ってこれた。
まあ、その話は後で酒を飲みながら話そう。
今は先に島の状況を何とかしねえといけねえ。まずは座ってくれ。
ゲッシュ、掻い摘んで報告を頼む」
ゲッシュと呼ばれた男は、身長190センチのひょろっとした男で、いかにも頭脳労働専門の参謀って見た目だ。
俺達が席に着くのを見計らって口を開いた。
「はい、では。今現在起こっている問題は大きく5つです。
1つは住民の病気について。数ヶ月前から発症し始めたこの問題ですが、原因が海の生物だとは分かっていますが、治療法が確立出来ていません。
2つ目は、その病気に伴い、食料事情が非常に逼迫しています。各地から食料の買い込みを行っていますが、全く追いついていません。
3つ目は、海の魔物の活性化について。現状中型までの魔物であれば対応可能ですが、大型になると手が付けられません。
4つ目は、魔物の活性化に伴い、海難事故が多発しております。食料の買い込みも何割か被害を受けています。
最後に、数日前に密航者が2名見つかりました。それの捕縛にあたり、船数隻が大破、港も一部被害が出ています。また死者は出ませんでしたが何人か重症を負っています」
まあ、当たり前といえばそうかもしれないけど、港町と問題はそう変わらないな。
報告を受けて、ホックさんが口を開く。
「病気についてだが。港町の方で治療法が見つかったようだ。
俺が向こうを立つ頃はまだ普及し始めたところだったから、今はもう大分快復しているはずだ」
「おぉ、それは朗報です。早速使者を出して、治療法を確認させましょう」
「2つ目から4つ目の問題は根っこは同じだ。海の異変の原因を突き止めねえとな」
「はい。海の一族にも協力要請を打診していますが、返事はまだ返ってきていません。
向こうでも問題が起きている可能性が高いと見ています」
「それなら、なおさら俺達で何とか解決しないといけないか」
「ええ、ですが、我々で海中の探査を行うのは厳しいものがあります」
「分かっている。ふむ、どうすればよいか」
「あの・・・・・・」
議論が一瞬膠着したところで、俺は発言権を求めて手を上げた。
室内のコワモテが全員が一斉に俺を見てきたので、ちょっと恐い。
この中ではブルーさんとホックさんは俺の実力を知っているので好意的だが、それ以外は胡散臭い目をしている。
「おぉ、ジン。何か良い案があるのか」
「あ、海の魔物についてはまだ何も」
それを聞いて、半数くらいがため息を零した。いや、そんなに期待されてもな。
ただ、ゲッシュと呼ばれた参謀は、俺の言葉の意味を理解していた。
「それは、病気に関しては何かあるということですね」
「はい、港町で治療法を確立したのは俺達です。治療に必要なものも手元に揃っています」
「「おおぉ!!」」
「それで、治療はどうすればいいんだ!?」
「はい。それには彼女の力が必要不可欠です」
そう言って聖良の肩をポンッと叩く。
聖良は「え、私??」って顔でビックリしている。
念話で『悪いようにはしないから黙ってて』と伝えておく。
さらにハムッチ達を聖良の背中から出てきたように見えるように、プライベートルームから出てきてもらう。
「彼女とその従魔の魔法で治療が可能です。
あと出来れば病気で体力が落ちていますので回復魔法の使い手を補助に付けて貰えると、より早く対応出来ます」
「なるほど。直ぐに手配させよう」
「それと少し関係するのですが、先ほどの最後の問題に挙がっていた、密航者って黒髪の少年だったりしませんか?」
「!!?」
「ええ、確かにそう報告を受けています」
あーやっぱり、太陽達か。まったく大人しくしていてくれたら良かったのに。
聖良もようやく話の意図が分かったようだ。
「恐らくですが、こちらの聖良の友人の可能性があります。
面会の許可と、もしそうだった場合に寛大な措置をお願いしたいです」
「ふむ。断れば病気の治療も断るか」
「いえいえ。色よい返事を頂けるなら、治療が捗るというだけです」
視線が鋭くなる参謀と、笑顔の俺。
これはもう一声掛けた方が良さそうだな。
「もちろん、今回の件で怪我をした人達の治療は全て俺の方でやらせてもらいます」
「・・・・・・片腕を失う大怪我をした者も居るが?」
「大丈夫です。治します」
「何っ!?」
参謀の視線に疑念の色が入った。
あ、そういえば部位欠損を治すのは神の奇跡って呼ばれるような行為だったか。
なら言葉だけでは信じられないか。
「疑っておられるのであれば、先に一人治療して見せましょう。
ホックさん、お手数ですが、手伝ってください」
「ん、俺か?」
ホックさんを連れて部屋の隅に移動する。
そして光魔法と治癒魔法でホックさんの全身を包みながら、失われた左腕と目に『手当て』で治療を施す。
その結果、1分と経たずに治療が終わった。ただ、このままだと大騒ぎは必至か。なら・・・・・・。
「治療が終わりました。ホックさん、新しい(・・・)左腕と目の調子はいかがですか?」
「お、おぉ。どれ・・・・・・っ、これは!? 若干の違和感はあるが、思い通りに動きやがる。
目なんて失う前より良くなっている位じゃねえか」
「違和感があるのはきっと、失って久しいから感覚が狂ってるんだと思います。少し時間が経てば問題なくなるでしょう」
「はっ。その狂いってのが老いが原因じゃないと良いがな」
「な、ななな・・・・・・」
ホックさん個人は、俺が破天荒なことをする事に慣れているお陰でそれほど驚きはしていないが、参謀や他の人たちは開いた口が塞がらないようだ。
後は聖良も落ち着いているか。これはきっと部位欠損の治療難度を理解してないんだな。
「ねえ、ジンさん。その再生した腕は何でそんなに黒っぽい色なの?」
「あぁ、その方が義手っぽく見えるかなって思ったんだ。腕を失った人に急に腕が生えてたら皆ビックリするだろ。
代謝が進めば少しずつ本来の肌の色に戻るはずだ」
「なるほどね。でもそれって義手じゃないって言ってるよね」
「まあ、一般の人が見て違和感なく馴染んでくれればいいさ」
そうやって聖良と軽口を叩いていると、後ろからホックさんに肩を叩かれた。
「ジン。お前さんには、随分とでかい借りが増える一方だな。
その嬢ちゃんの友人を開放するのは当然として、他に俺達に出来ることはないか?何でも言ってくれ。
恩を受けっぱなしってのは性にあわねえ」
「じゃあ、少し多いけど、4つほど頼めるかな」
「おう、言ってくれ」
「1つ目は、病気の治療が終わってからで良いから、この聖良と仲間の2人を港町まで送り届けてやってくれ。あ、もし捕まってる2人が別人だったら、捜索もお願いしたい」
「良いとも。むしろそれはジンの頼みっていうより、そっちの嬢ちゃんの頼みって感じだな」
「2つ目は、今後俺の友人がここを訪れたら便宜を計ってやってほしい」
「それも構わねえが、どうやって判別する?」
あーそうだよな。今後も同じ様なことがありそうだし、なにか用意しておいた方がいいか。
「今度、冒険者カードみたいに提示できるものと、合言葉でも考えておくよ」
「分かった。で、残りは?」
「さっきの話の中に、海の一族ってあったから、その人たちへ紹介状を書いて欲しい」
「ふむ。後で用意しておこう」
「最後に。ここに来る途中に大量の魚を釣ったんだけど、俺一人じゃ捌ききれないんだ。
毒は抜いてあるから、引き取って欲しい」
「毒が無いなら、むしろこっちが助かる。後で誰かに調理場へ案内させよう」
「あ、いや。食料倉庫みたいなところがあれば、そっちでお願いしたい」
「?? まあいい、分かった」
その後、治療の手順や海の魔物の情報交換をした後、解散となった。
そして、今目の前には釈放されてきた、太陽達がいた。
約1週間、牢に繋がれて、碌に食事も与えられていなかったのでガリガリだ。
さらに実は本来なら近い内に処刑される予定だったらしく、死んだ目をしていた。
「聖良!」
「良かった、助けに来てくれたんだな」
聖良の顔を見て、飛び上がらんばかりに喜んで聖良に駆け寄ってきたが、
そこに右フックが突き刺さる。
うん、いい一撃だ。
「この、おばか!!無茶するなって私言ったよね。
どうして大暴れして、町の人達に怪我させてるの?
なんで大人しく行動できないのよ。
誰がいつも尻拭いさせられてると思ってるのかしら!!」
「うぐっ。この痛み。久しぶり、だぜ」
「ごほっ。そ、そうだね。やっぱり聖良の右は最高だ」
げ。崩れ落ちながら若干2人が嬉しそうな顔をしてるぞ。
大丈夫だろうか、変な扉開いたんじゃないのか?
ま、まあ。ここからは彼らの問題だ。俺は一歩離れて見捨て・・・・・・見守ることにしよう。
今夜はホックさんが帰ってきた事を祝って酒宴だそうだが、
俺と聖良達は危険を感じて大人しく部屋で休むことにした。
海の漢の酒っていったら相当荒れそうだからな。
やっぱ会議は短く済ませたいですね。
ホックさんは「親分」とか「兄貴」とかが似合う男です。
本当はもっと兄貴感を出したかったのですが・・・・・・。
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無事に海賊王と再会し、少年達も救出出来たジン。
南海諸島でも病気の治療を行いつつ、少年達の今後について話し合う。
次回:元の世界へ
あ、最終回はまだまだ先です。




