大海原へ
よろしくお願いします。
冒険者ギルドに町を離れる連絡をした後、俺と聖良は船着き場へと来ていた。
「ジンさん。南洋諸島にはどうやって行くんですか?」
「それは勿論空を飛んでって。もしかして聖良って空は飛べないのか」
「短時間なら不可能ではないですが、長距離は魔力が持ちません」
「えぇー。今ってレベル幾つなんだ?勇者パーティーなんだし、かなり高レベル高ステータスなんだろ」
「えっと、レベルは74ですね。ステータスはこんな感じです」
「
名前:セイラ・ミカミ
種族:異界人
クラス:聖神官
レベル:74
HP:635/635
MP:1260/1260
STR:611
INT:820
VIT:635
DEX:612
AGI:656
MND:930
LCK:80
一般スキル:
光魔法Lv.10、治癒魔法Lv.10、結界魔法Lv.10、四属性魔法初級Lv.10
状態異常耐性Lv.2
特殊スキル:
アイテムボックス、言語理解、神聖魔法、神の祝福
」
へぇ、流石に俺の倍近いのパラメーターだ。
こうして見るとスキルはLv.10が最大なのかもしれないな。
「すごいな、Lv.74か。スキルもLv.10ばかりだし相当頑張ったんだな」
俺がそう言って褒めると、聖良は気まずそうに視線を逸らせた。
「あ、いえ。私の場合、この世界に来た時には既にLv.70でしたから。
スキルも状態異常耐性以外は最初からLv.10です。
どうやら『神の祝福』っていう特殊スキルのお陰みたいですね。
太陽達も最初からLv.70でしたから」
「それでもLv.70から4つもレベルを上げるのはかなり大変だと思うがな」
でもそうか。俺には『神の祝福』は無かったな。
だから普通にLv.1スタートだったのか。
「そういうジンさんはどうなんですか?
飛行魔法を使えるくらいなんですから、Lv.100とか行ってたりするんですか?」
「いや、前に見たときは20台だったな。
あれから魔物の暴走を食い止めたりしてたから、それなりに上がっているだろうが」
さて今のステータスか。
「
名前:ジン・バンリ
種族:理外の者
クラス:救星士
レベル:31
HP:322/322
MP:498/498
STR:295
INT:498
VIT:322
DEX:439
AGI:417
MND:561
LCK:412
一般スキル:
基礎Lv.13、浄化Lv.10、救命Lv.10、創造Lv.9、飛行、念話、
竜呼吸Lv.6、空間掌握Lv.7、空間転送Lv.4、共鳴Lv.8、隠蔽、
生命の息吹Lv.3、鍛冶Lv.3、錬金Lv.4、炎妖術Lv.2
特殊スキル:
アイテム空間、固有空間、自動翻訳、手当て
」
レベルが30を超えてパラメータも400前後まで上がってきた。
これでもう、数値的に舐められることもないだろうな。
あ、基礎スキルがLv.10超えてる。ってことはLv.10が最大って訳でもないのか。
「・・・・・・あの、ジンさん。突っ込みどころが多すぎて何から言えばいいのか。
そもそもLCK(幸運)って100が最大で、生まれながら変動することは無いって聞ききましたよ。
なんで400もあるんですか!?」
「なんでって言われてもな。俺がパラメータ弄ってる訳でもなし。
そういう苦情は神様にでも言ってくれ。
それに同じ値でも種族によって強さは全然違うっていうし、当てにならないだろ」
「それはそうですけど・・・・・・」
まだ納得はして居なさそうだけど、分かったところで何かが良くなる訳でもない。
「話を元に戻すと、空を飛んで海を渡ろうと思うんだが、聖良は俺におんぶされて行くのと、向こうに着くまでプライベートルームで待っているの、どっちがいい?」
「プライベートルーム??」
「アイテム空間内に作った部屋だな。完全に外と切り離されているから、寝てれば着くぞ」
「ちょっと気になるけど、そこまで依存するものね。だから背中に乗せてもらうわ」
「あいよ」
聖良に背中を向けてしゃがむと、遠慮がちに肩に手を当てて乗ってきた。
そこから足を抱えて飛行魔法を発動させて身体を浮かせる。
「わ、すごい。風も無いのに飛んでる」
「暴れない様に掴まっててくれ。あと、ハムッチはプライベートルームで待機な。やって欲しいこともあるし」
「キュッ」
そうして大海原へと身を乗り出す。
周りには漁船と思われる小~中型の船が浮かんでいて、こっちを見つけては驚いているようだった。
近海を抜けると一気に海の雰囲気が変わった。
海全体が暗く濁っているようにも見える。
海面ギリギリを飛んで奥の方を見れば原油が流出したかのような澱みが海中を漂っている。
後、やはり魔物の気配が多いな。
「聖良は釣りは好きか?」
「どうしたんですか、突然。釣りはやったことないです」
「そうか。嫌いにならなければいいが。っ!!」
そう言いながら飛び跳ねるように右に移動する。
その直後、海面が盛り上がってきた。
ザバッ!!!
「!!?」
巨大なサメっぽい魚が海中から飛び上がってきて、さっきまで俺達が居たところを通過していく。
「よっと」
咄嗟に風魔法でカマイタチを生み出して首を切り飛ばす。
さらに水魔法を駆使して血抜きを一気に行い、プライベートルームに送る。
『ハムッチ。魚の解毒は任せた』
『(分かりました~)』
後ろを振り向けば、聖良が顔を青くしていた。
そういえば、昔こんな映画があったらしいし、それを思い出しているんだろうか。
「あの、ジンさん。もっと高く飛びませんか?」
「そんなことしたら魚が食いついて来てくれないだろ」
「あ、あはは。やっぱり私達自身が釣り餌なんですね」
「そういうこと。さ、どんどん来るぞ」
「きゃああ、いーやーー!!」
聖良の叫び声に惹かれたかのように次々と襲ってくる魔物を、倒しては血抜きをしてプライベートルーム送りにする。
あ、魔物は血抜きした血に惹かれてきているだけか。
そうして50匹近くを釣りながらのんびりと南下していくと、船が近づいてくるのが見えた。
「聖良、お迎えが来てくれたみたいだよ」
「ふぇ?助かったんですか?」
「ひとまず、釣りはここまでかな」
中型船が5隻。それぞれ銛などを持った屈強な男達10人ほどが警戒しながら俺達の様子を伺っている。
近づいては来ない、か。ならこっちから行くか。
俺はその内の中央の1隻に着地した。
「こんにちは。南海諸島に所属の船とお見受けするが、間違いないか」
背中から聖良を下ろしながら、そう声を掛けると、男達の後ろから、さらにムキムキの男が前に出てきた。
「いかにも。南海連合所属、第6巡視船団だ。俺は船長のブルーだ。あんたは?」
「俺はジン。この子は聖良だ。冒険者をしている。
港町アクミュールで海の異変の調査依頼を受けて、こうして調査に来ていたところだ」
そう答えつつ、冒険者証を見せる。
「ふむ、嘘ではなさそうだな。ところで、船はどうした。まさかここまで飛んできたわけでもないだろう」
「いや、そのまさかだ。飛行魔法は得意だからな。この船が来なければそのまま島まで飛ぼうと思っていたところだ」
「それならなぜもっと高く飛ばなかった。そのせいで魔物に襲われていたように見えたが?」
「それは逆だ。襲いに来た魔物を、俺が狩っていたんだ。それよりも、だ。下からでかいのが近づいてきてるぞ」
「なに?はっ!! 総員、戦闘態勢!」
俺の言っている意味に気が付いた船長が慌ててクルーに指示を出し始める。
まずいな。この海用の船だから、対魔物装備は施されているんだろうが、それは普通の魔物用だろう。
今探知に引っかかっている魔物はさっき倒していたのの数倍のサイズがありそうだ。
俺は咄嗟にアイテム空間からさっき釣った魔物の内、全長10mくらいあったマグロっぽい魚のお頭を取り出して海に放り投げる。
ドボン・・・・・・
・・・・・・ザバッッ!!!
見事お頭をひと呑みにしながら飛び出してきたのは、口だけで3mはありそうな海蛇だった。
海蛇が飛び出した余波で船が大きく揺れる。
船員達はなれたもので咄嗟に船の縁などに掴まっていたが。
「きゃああっ」
聖良が船から放り出されてしまった。
「ちっ、嬢ちゃん!」
「まったく、世話の焼ける」
急ぎ飛行魔法を発動して船の外に飛び出す。
聖良は動転しているのか防御結界なども発動させることなく海へと沈んでいった。
風魔法で大量の空気のフィールドを作って、聖良の後を追って海へと飛び込む。
聖良は・・・・・・いた。ただ、大量の毒素に包まれていやがるな。あれは生き物に群がる性質でもあるのか?
まずは追いつくと同時に空気のフィールドで聖良を覆って、海水と毒素から隔離する。
意識、なし。呼吸は・・・・・・してないし。
空間を固定して、聖良の胸に手を当て、鼻を摘まんで人工呼吸を行う。
「ゴホッ、ゴホッ」
幸い直ぐに息は吹き返したが、意識は戻らない。毒素にやられたのか。
それならと、プライベートルームに入れてハムッチに治療をお願いしておく。
さて。これで聖良は大丈夫だろう。
そこまでやったところで、俺の視線と海蛇の視線が交差した。
島まで辿り着きませんでした。
あ、聖良は太陽達ともどもサブキャラのポジションです。
攻略対象ではありません、きっと。
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聖良を助ける為に海へ潜ったジン。
巨大海蛇と対峙するジンに新たな問題が圧し掛かる。
次回:海中戦




