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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第4章:世界探訪「鉱山都市とダンジョン編」
45/63

南へ

よろしくお願いします。

今回、章の区切りということで少し短めです。

王女の件が落ち着いたのを見計らって、少し気になったことを尋ねてみた。


「そういえば陛下。王位を簒奪していた王子はどうされたのですか?」

「あ奴は地下牢の地下2階(・・・・)に送った。当分の間、そこで頭を冷やすようにとな。

ああ、せめてもの情けで恋人も一緒に収監しておいたのでな。今頃どうなっていることか」


そう言ってニィっと笑う陛下。

恋人ってあれだよな。今頃ウホッてるんだろうか。

うぐっ、忘れよう。想像すると酷いことになりそうだ。

また、今回の騒動を起こした商業ギルド長なども纏めて更迭したらしい。

今後は組織の再編のために、相当忙しくなるそうだ。


「ジン殿はこれからどうされるつもりかな?」

「南へ向かおうと思っています」

「南というと、ホックの所ですかな」

「ええ。別れ際に気になることを言っていたので」


海賊王ホック。

この人も地下牢で助けた内の一人で、元は友人の陛下に相談を持ちかけに来たところ、入れ違いに馬鹿王子に見つかり牢屋に入れられていたそうだ。

今はこの国も大変だから自力で何とかするといって南の海へと帰っていった。


ちなみに、海賊王と名乗ってはいるが、無闇矢鱈に商船などを襲っているわけではなく、

元は密貿易などを行っていた船を襲ったり、極悪な海賊を取り締まっていたら、

いつの間にか海賊王などと呼ばれるようになったそうだ。

実際には、南海の小島を拠点とした海産物(主に魔物)を扱う漁業と貿易を主産業とした海洋国家らしい。


ただ半年位前から、魔物が凶暴化しだしたらしく、食肉に適した魔物が激減し、船や人も頻繁に襲われるようになったらしい。

水中適応のスキルが各種あるために水中戦が出来なくもないが、地の利はどうしても魔物にあるので、水中戦用の装備の拡充したかったようだ。


「という訳で陛下。鉄と銅を大量に頂くことは可能でしょうか。もちろん代金は支払いますので」

「それは構わぬが、ジン殿は鍛冶や錬金も出来るのか」

「はい、まだレベルは低いですがクキさんから学びましたので、本職には及ばずとも簡単な加工は出来ます」

「分かった。通達はしておくので後日資材倉庫に行ってくれ」

「ありがとうございます。それでは俺はこれで」


挨拶をして謁見の間を辞して町に戻り、どんちゃん騒ぎを続ける冒険者達を横目に宿屋で寝ることにした。



それから3日

式典も無事に終わり、俺は治癒師として貢献したとして銀翼褒章という天使を象ったエンブレムを貰った。

あ、魔物の主力を倒したり、あの火柱を起こした事は伏せられている。人一人がやったと言ったら信憑性がないし、恐怖の対象になるのもいやなので。

また、冒険者ギルドでは無事にCランクに昇格した。


「本当ならAランクでもお釣が出るくらいなんですけどね」


とココさんがこっそり教えてくれた。



一通りのイベントが終わった朝。

頼んでおいた資材を受け取りに城に向かうと無事に通達は届いているらしく、すぐに資材倉庫へ通された。

そこにはなぜか荷馬車が2台用意されていた。


「えっと、これは?」

「はっ。陛下からジン様が来た際にお渡しするようにと言われた資材です。

御者および護衛もまもなく到着いたしますので、今しばらくお待ちください」


荷台を確認すると、鉄と銅の他、コークスや金銀宝石類ほか、見ただけでは分からない金属も積まれていた。

おそらく今回の謝礼という意味も含んでいるんだろうけど、多いな。

それと、移動に馬車を使うよりも飛んだ方が早くて楽なんだよな。

なので、一旦荷台ごとアイテム空間に収納して、中身だけ回収して荷台は元に戻した。

アイテム空間を確認すれば回収したものの内容が確認できた。

あ、ミスリルなんかも結構あったんだな。


「あ、あの。今一体何が起きたのでしょうか」

「ちょっと特殊なスキルを使ったんだ。出来れば他の人には内緒にしておいてくれ」

「はっ!畏まりました。私は何も見ていません」

「ありがとう。そういえば、きみの名前を聞いてもいいかな」

「はっ。ジェルムと申します」


おぉ。すごい律儀な人だな。一つ一つの動きが気持ち良いくらいビシッとしてる。

国に仕えるものとしてはどうなんだという気もするが、個人的には好感が持てる。

後で陛下に取り立ててもらえるように伝えておこう。


「荷馬車自体は要らないから、返しておいてくれるかな。併せて御者や護衛も呼んでもらっているところ悪いけど帰ってもらって」

「はっ。畏まりました」

「あとは、思った以上に多かったから、お返しにこれを置いて行くから」

「はっ?あ、あのぉ、これは・・・・・・」


俺が取り出した金貨30枚と、ドラゴンの鱗と爪を見て、固まる係員。


「金貨は君を含めて来てくれた人に手間賃として渡しておいて。

そっちの2つは陛下に献上ということで。じゃあ、あとは頼むな」


係員が動き出す前に飛行魔法を発動させて、城の外へと向かう。


「なぁっ!!あ、あの。おまちをーーー。こんなに置いていかれても困ります!!」


後ろから大騒ぎしている声が聞こえる。まあ頑張って欲しい。


さて、南へ向かう前にクキさん達に挨拶しておくか。


炎妖族の村に行くと村人総出で迎えてくれた。


「こんにちは。クキさん、クオン。これは一体何があったんだ?」

「師匠、こんにちは!」

「こんにちは、ジンさん。みんな、ジンさんにお礼を言いたいと集まったんです」


聞けば、昨日の内に国からお触れが出て、北の山での炎狐狩りが全面禁止になったそうだ。

何年かに1人は炎狐狩りの被害に遭っていたそうなので、その心配が激減した事を凄く喜んでくれていた。


「ジンさん、このご恩は決して忘れません。

本当にありがとうございました」

「「ありがとうございました!!」」


村人全員が一斉にお辞儀をしてくれた。

獣姿の子供たちがぺこっと可愛い。


「俺の方も村に滞在していた時に快く受け入れてくれてありがとう。

また近くに来たときは寄らせてもらうね」

「はい、いつでもお越しください」

「あ、それとこれは餞別な」


アイテム空間から、ドラゴンの素材と世界樹の枝と葉を置いていく。

俺が持ってるより、クキさんに渡した方が有効活用してくれるだろう。


「あ、あの。ジンさん。流石にこんなに頂く訳には……」

「そうか。なら、これの一部を使ってアクセサリーか何か作って貰って良いか?

俺はなぜか邪気とか澱んだ魔力を浄化する機会が多いから、それをサポートしてくれるものだと嬉しい。

俺1人の分じゃなく、友人達にも渡せるように10個位あるといいね。

残った素材は、その代金がわりってことで」


そう伝えると再びクキさんは深々と頭を垂れた。


「畏まりました。その御依頼、全身全霊を持って務めさせて頂きます」


お礼のつもりで出したのに、職人魂に火を点けてしまったようだ。


「じゃあ、よろしくお願いします」

「はい、確かに」

「クオンも元気でな」

「はい、師匠!」


みんなに挨拶をした後、飛行魔法を展開し、村を出て一路南を目指す。

まずは港町に行って海産物を堪能するとしよう。


これにて本章終了です。

火山やダンジョンでもっと詰め込もうかという案も有りましたが、それは次の機会に。

しかし、まさかここまで王子ネタが混ざるとは。


#########


鍛冶の町、そして炎妖族の村を後にし、

港町に辿り着いたジンが見たのは、汚染され病気が蔓延した世界だった。


次回:汚染された港町

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