後始末
よろしくお願いします。
無事にこの騒動の首謀者っぽい元冒険者も倒したので、歩いて町に戻る。
するとまず見つかるのは、宝石類を多量に含んだ瓦礫の山。そう、主力部隊だった魔物の残骸だ。
仕分けとか面倒だったので、まとめてアイテム空間に放り込む。
お、ある程度自動で仕分けしてくれたみたいだ。
それにしても、地面が凸凹だ。
仕方ないから土魔法を発動させて整地しながら進む事にした。
続いて見えてきたのは直径10mに及ぶ大穴。
誰だ、こんな所に穴を掘ったのは。まあ、俺なんだけど。
仕方ないから、さっき拾った瓦礫から使えない部分をまとめて放り込む。
……別にゴミの不法投棄とかじゃないから。
そうして穴を埋めていると、穴の向こうにクキさんとクオンの姿が見えた。ふたりとも無事みたいだな。
「あ、師匠ー!」
「ふたりともお疲れ様。すぐ終わるから待ってて」
瓦礫で埋め立てて土魔法でならせば、周りと土の色が違うけど穴自体は3分で塞がった。
「お疲れ様です。ジンさん。
こちらに居た魔物は、一部逃げられましたが、ゾンビ系は全て焼却しておきました。
逃げた魔物は大した数ではないですし、近隣の魔物へと帰化すると思います」
「そっか。ゾンビ達を殲滅出来たのは良かったな。町の方はどうだろう?」
「そちらはまだ戦闘中のようです。手伝いに行きますか?」
「ああ、そうだな。知り合いの冒険者も居るから、被害が出ないように軽く蹴散らしながら行こうか」
「はい!」
町の防衛線が見える所まで戻ってきた。
防衛線は……まだ維持出来ているようだ。
魔物達は、最初の勢いを失って、烏合の衆と化している。
やはりあのゾンビが司令塔だったのだろう。
防衛線から魔物後方へ弓矢が飛んでくるので、それを避けて右翼の冒険者グループに合流する。
「ダーミヤン、リリン、お疲れ様」
「はぁ。はぁ。ジンさん、お疲れ様です」
「おぅ。リリンから、ジンさんが魔物の群れの中心に行ったって聞いたときは驚いたが、無事だったんだな」
ふたりを含め、みんなかすり傷はあるものの、まだまだ大丈夫そうだ。
「まあな。俺はこの後、負傷した人達の治療に向かおうと思うんだが、ここはこのまま任せても良いか?」
「任せてくれ。この陣からの重傷者も何人か出てる。ジンさんの治癒能力で助けてやってくれ」
「ああ。あと、後方に回復魔法陣を設置していくから、交代で使ってくれ」
陣から少し離れた所に、半径2m程の魔法陣を作り、回復魔法をセットしておく。
これでここは無理せず戦えるだろう。
「お、おいおい。そりゃ、そんなサラッと構築出来るもんじゃねえだろ……」
「これでEランクっていうのは詐欺よね」
ふたりがそんな事をつぶやいてたけど、気にしなくてもいいだろう。
あとはクキさん達には引き続き、前線の援護をお願いしておいた。
町の広場に設けられた救護テントに辿り着く。
そこには、手足を噛まれたり、骨を折った重傷者が数百人寝かされていたが、幸いすぐに死ぬような大けがを負った人はほとんど居ないようだ。
これなら軽い治療でも十分大丈夫そうだな。
「すみません。これから広域治癒魔法を展開します!」
そう一声掛けてから広場全体を覆うサイズの魔法陣を展開する。
ふぅ、よし。ステータスが上がったお陰か、このサイズでもだいぶ余裕が持てるようになったな。
魔法陣に手を当てて、一気に治癒魔法を展開すすると、広場が柔らかい光で包み込まれる。
「な、なんだこりゃ。傷がみるみる塞がっていくぞ」
「ほ、骨が。完全にかみ砕かれて、もう治らないと思ってたのに」
「いてぇよ~。いて……あれ、痛くねえじゃん」
……まぁこんなもんかな。
そう思っていた所で、ココさんがやってきた。
「やはりこれはジン様だったんですね。ありがとうございます」
「いえ、出来る事をしただけですよ。あと、ここが問題なければ救護所を前線に近付けませんか?魔物の侵攻も終息して来ていますし、危険は無いと思います」
「あ、そうですね。ちょっと上に交渉してきます」
そう言ってパタパタと奥のテントに向って行った。
さて、俺のあと出来る事は前線のサポートかな。
町を出て、前線の中央部隊の元に向かう。途中ですれ違った負傷者もついでに治療しておく。
さて、中央は町の守備隊や軍が詰めていたはずだけど、右翼の冒険者に比べると若干動きが悪いな。
と、そこで見知った顔を見つけた。
「お疲れ様です」
「おお、ジン殿、ご無事で。地下牢ではありがとうございました」
地下牢から一緒に出て来た内の一人で、第一騎士団長だった人だ。
この様子だと早くも現場に復帰したみたいだな。
「陣の後方に回復魔法を付与した魔法陣を配置しておきましたので、適宜回復をしてください」
「なんと!これはかたじけない」
「それにしても、先ほど右翼を見てきましたが、そちらに比べて手間取っているように見えますね」
「お恥ずかしい。どうも私が居ない間に随分と腑抜けた訓練をしていたようでしてな。
これが終わったらみっちりしごいてやりますよ。
まぁ後は経験の差、ですな。冒険者は日夜ダンジョンに入って魔物と戦っている訳ですから。
数が多いだけでいつもの延長なのでしょう」
なるほど。確かに冒険者からすればダンジョンで戦うか野外で戦うかが変わっただけなのか。
それなら戦い慣れていても不思議でもなんでもないな。
その後、左翼の陣営にも顔を出してみたが、そちらも大して問題は無かった。
そして夕暮れ時には粗方の魔物の掃討も済んで魔物の危機は過ぎ去った。
今は冒険者ギルドに併設された酒場が解放されて祝勝会が行われている。
ちなみに、クキさんとクオンはそれには参加せずに自分たちの家へと帰って行った。
「今回は皆の尽力のお陰で町に被害もなく終えることが出来た。
今回の報酬は後日配布するので、本ギルドに登録していない場合は、今日中に受付に申請を出してくれ。
それと、今日の飲み代は全部ギルドと国で出すことになった。
心行くまで飲んで食って騒いでくれ!!」
「「おおおっ!!」」
ギルド長の挨拶と共にどんちゃん騒ぎが始まる。
宴会は嫌いではないが、余りの大騒ぎに、クキさん達が参加しなかったのは正解だと思ってしまう。
ここの冒険者は冒険者とは名ばかりに、半分、鉱夫だからな。
そして挨拶が終わったギルド長は俺の所にやってきた。
「君がジンだな。今回は君の尽力で随分と助かった。本当にありがとう。
ところで、君はまだEランクだそうだな。今回の活躍を鑑みればそのままにする訳にはいかないだろう。
なので、異例だがCランクへの昇格とする。個人的にはBランクでも良いとは思うが、流石に事情を知らない者たちがうるさいからな。
後日、受付に来てくれ」
「分かりました。あ、そうだ。ギルド長、これを」
「これは?」
そう言って、暴走の時のゾンビが持っていた冒険者カードを渡す。
それを見たギルド長は記憶をさらっているようだったが、何かに思い付いたようだ。
「こいつは確か何年か前にドラゴンの鱗をオークションに出した言って自慢していた奴だな。
そう言えば少しして姿を見なくなったから、町を出たんだと噂されていたが。
そうか、ダンジョンで死んでいたのか」
「あれ?前にダンジョンで死んだら、ダンジョンに吸収されると聞いていたが」
「む、言われてみればそうだな。・・・・・・嫌な予感がする。急ぎ調べてみるか」
ギルド長は急ぎギルドの奥へ消えて行った。
金に目が眩んだ何者かによって殺されたのか、事件の香りがするが、そこまでは首を突っ込む必要は無いだろうな。
この町の問題はこの町の人たちに任せることにしよう。
主人公の本職はアタッカーではなくヒーラーです。
やったことを考えれば余裕のAランクですが、一般の人達には主力を倒したことは知らせていないので、こうなります。
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無事に魔物を退けお祭り騒ぎのなか、
ジンに王宮からの召集が掛かる。
次回:褒美




