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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第4章:世界探訪「鉱山都市とダンジョン編」
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無罪の証明

よろしくお願いします。


感想いただきました!!

ありがとうございます。

地下牢で何から手を付けようかと考えて、一番に挙がったのがトイレ事情だった。

現状は所謂ぼっとんで、そこから上がってくる臭いが酷いらしい。

海賊王曰く、トイレがあるだけまだましで、酷いところだと部屋の隅に垂れ流しにするしかないそうだ。


トイレと言えば、ゲイルだな(この認識はかわいそうだが)。

早速ゲイルに念話を送って小さいトイレ用魔道具を用意してもらい、俺の転送魔法で逆転送して回収する。

クキさんのお陰で手に入った鍛冶スキルと錬金スキルを使って分解しながら構造を把握する。

なるほど、付近に存在する特定の物質に対して、分解と浄化を行い、無害な状態で土壌に還元するのか。


構造は分かったので試作しようと思ったら、一般的な金属が不足していたのでクキさんに相談してみる。


『鉄と銅と錫と亜鉛にコークス・・・・・・。ええ、それくらいなら直ぐに用意できますよ。

何を作るんですか?トイレ用の魔道具?それならこちらで作ることも可能ですので必要であれば言ってくださいね』


手に入った金属を錬金スキルで合成して、こねて形を整える。

魔石をセットしながら魔力回路を構築して、壊れないように保護してあげれば、完成だ。

試しに隣の部屋の人に渡して使ってみてもらう。


「君はこんなことも出来るのか。

どれ、早速使ってみるか。・・・・・・おお、無事に動作してくれているようだ。

ありがとう、これだけでも大分過ごしやすくなった」


無事に成功したので、他の部屋にも配っていく。

さて、続いて寝床かな。

必要なのは布と裁縫道具、あとは干草があればいいか。

布はエリーで、干草はララに頼めば良い物が手に入るだろう。

そうして各地から材料を取り寄せながら2日かけて全員の部屋を改造していく。


「君、ここを無事に出れたら本格的にうちで活動しないか。

何不自由ない暮らしを約束するよ」


そう元国王が言ってくれたが、お断りしておく。

ちなみに、この間、世話係が1日1回水みたいなスープを配給にきたが、その時は幻影魔法を使って元のままっぽく見せかけておいた。

後は残った時間で、魔道具の研究を行って過ごすことにした。



そして3日目。

聞いた話では今日が俺の裁判の日だ。

上の階から聞きなれない足音が伝わってきたので、俺はただ一人待っていると、文官が1人と衛士が2人やってきた。


「お前がジンだな。これから裁判を執り行う。大人しく付いて来い」


そう言って歩く文官の後を付いて俺が歩き、その後ろを衛士2人が付いてきた。

廊下を歩くと窓から差し込む3日ぶりの太陽の光が眩しいな。


法廷にたどり着くと部屋の中央に立たされる。

ふむ、大体日本の法廷と変わらない造りなのか。

正面に裁判長、左右に偉そうな人たち(弁護人は当然居ない)、後ろには冒険者っぽい人が何人か居る。

ただ雰囲気から言って、全員グルっぽいな。

そして裁判長が全員を見回して話し始める。


「被告人、ジン。君の犯した罪は許しがたく。よって死刑を宣告する」


は?何これ。裁判でも何でもないじゃないか。これなら魔女裁判の方がまだ裁判っぽいぞ。


「裁判長」

「被告人に発言権は認めていない」

「罪状を教えてください」

「口を慎みなさい。被告人に発言権は認めていないと言っている」

「俺の罪状を教えてください」

「口を慎みなさい。衛兵、彼の口を閉じさせろ」


俺が抗議し裁判長が無碍に取り下げるやり取りをしていたところに後ろから声が掛かった。


「そうね。私も聞きたいわ。彼の罪状は何かしら」


傍聴席と思われる場所から聞き覚えのある声が届いた。

これはクキさんか。気配からして、クオンも一緒みたいだな。


「もう一度聞くわ。彼、ジンの罪状は何かしら、ロッシ裁判長」

「くっ、クキ・タマモ。なぜあなたがここに」


そう呻くロッシと呼ばれた裁判長。

どうやらクキさんは有名人のようだな。


「彼の罪状は、あなたの横に居るAランク冒険者からドラゴンの爪を強奪したこと。また、それを使い商業ギルドから商品を強奪したことだ」


なるほど、前者は完全に捏造で、後者は取引ではなく強奪に摩り替えられたわけか。


『クキさん、こんにちは』

『こんにちは、ジンさん。お元気そうで何よりです』

『ありがとうございます。

この罪状ですが、前者は完全に捏造です。それは簡単に証明できます。

そして後者の商品って、クオンの事ですよ』


後半を伝えた所で、クキさんの怒りがMAXになったらしく、突然全身から炎を吹き出していた。

堪らず周りの冒険者達が離れていく。クオンはなんとも無いようだ。


『クキさん、抑えて抑えて』

「ふぅ、失礼しました。余りの罪状の内容に一瞬我を忘れてしまいました。

それでまず、彼がここに居る冒険者たちからドラゴンの爪を強奪したと仰いましたが、それはいつ、どの様にして行われたのでしょう」

「く、冒険者チームのリーダー、発言を許可します。説明を」


クオンさんの殺気に当てられて冷や汗を流していた冒険者の一人がおずおずと話し始めた。


「はい。あれは1ヶ月ほど前です。俺達は西の竜の山へと行き、ドラゴンに見つからないように隠れながら何とか巣に落ちていたドラゴンの爪を回収して戻ってくる最中でした。

俺達は街道脇で戦利品の確認をした後、小休憩を取っていました。そして広げていた戦利品を仕舞う段になってドラゴンの爪が無いことに気が付きました。

慌てて周囲を確認したところ、凄いスピードでミスリニアに向けて走っていく男の後ろ姿が見えたんです。だから、爪はその男に盗まれたに違いありません」

「裁判長。ドラゴンの爪がそう何本も出回るとは考えられません。普通に考えてEランクでしかない被告人がドラゴンの巣から持ち出せたとも考えられない。

よって、被告人の持っていたドラゴンの爪は冒険者から盗んだに違いありません」


商業ギルド長が補足を入れたのを聞いて、裁判長は鷹揚に頷いてみせる。

・・・・・・そうか。何本も出回ることは無いのか。


ボトボトボトボトッ

「「「なぁ!!!?」」」

「あ、失礼。あまりの話にアイテム空間からドラゴンの爪を取り出してしまいました。直ぐに片付けます」


わざとドラゴンの爪を何本も取り出して見せてから、アイテム空間に仕舞ってみせる。

そうすると、裁判長もギルド長も冒険者達も開いた口が塞がらなくなってしまったようだ。

これでドラゴンの鱗を見せたらどうなるんだろう。


バサバサバサ、バキッ。

「「「☆■#$%@o@彡!?」」」


あ、重すぎて床板が割れてしまった。


「き、き、き君。いい今のはまさか」

「はい、ドラゴンの鱗です。鱗は盗まれた、なんて話はありませんでしたよね。爪も盗まれたのは1本だけ、という話でしたね。

さて、これで俺がわざわざその冒険者達からドラゴンの爪を盗む必要なんてないと証明できたでしょうか」

「むぅ、確かにな」


言いながら出した鱗を回収する。

少し間を置いて、裁判長が多少落ち着くのを待って、クキさんがまた話始める。


「ロッシ裁判長。もう一つの罪状についても商業ギルドの者たちに確認が取りたいのですが、彼らが言っている商品とはこの子で間違いないでしょうか」


その言葉を受けて、クオンが獣モードでクキさんの手の上に飛び乗る。

その狐の姿をみてギルド長が色めき立つ。


「あ!そいつだ。その普通の炎狐とは違う毛の色艶。間違いない!!」


いや、ギルド長。いまクオンが人の姿から変化したところを見てなかったんだろうか。

・・・・・・見てなかったんだろうな。ドラゴン素材に驚きすぎて。


「そう。なら、いつから商業ギルドは誘拐と人身売買に手を染めたのか、問いたださないといけませんね。

この子は先日、行方不明になっていた所を、そこのジンに救い出してもらったのです」

「な、なんだと。・・・・・・知らん!私は知らんぞ!!そうだ、その男が仕組んだ罠に違いない!!」


人の姿に戻るクオンを見て、慌てて喚き散らすギルド長だったが、その時、入口の扉が開かれて入って来た人物を見て顔を青くした。


「見苦しいなゼニカネ。ギルド長をするなら最後の責任くらいは自分で取るんだな」

「な!?フクユウ。貴様地下牢に投獄されているはずでは!?」

「ロッシも、裁判長なら公平な目で裁判を行わねばな。賄賂で動かされるとは嘆かわしい」

「まさか、ジャス裁判長!あなたもなぜここへ??」

「彼らだけではなく、我々もおるよ」


前国王を始め、錚々たるメンバーが姿を現した。

そう、地下牢に居たメンバーをプライベートルームを使って全員連れ出しておいた。

ここには、そのうちの一人(海賊王)を除いて全員が集合している。


「さて、騒々しくなりすぎた。ここは一度締めるとしよう。

ロッシよ。彼にかけられた罪状は全て冤罪であった、ということで良いな」

「は、はい。仰るとおりです。ミスル国王陛下」


そうして無事に裁判は閉幕を迎えることが出来た。

俺達は意気揚々と裁判所の外に出る。


だけど、これで一件落着かと思ったのもつかの間、にわかに町が騒々しくなった。


「大変だ!!北のダンジョンが暴走して魔物があふれ出しやがった!!」


どうやらこの町の問題はまだ続くらしい。


ゴタゴタに紛れて脱獄する人達。

地下の牢屋は気に入ったもの以外、そのまま置いてあります。

いつか使う、かも。


##########


無事に無罪を勝ち取り開放されたジン。

一息ついたのもつかの間、ダンジョンの暴走に巻き込まれる。


次回:暴走と蹂躙

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