火口ダンジョン
よろしくお願いします。
何故か数少ない戦闘回
突然ブックマークが増えてると驚きますね。
皆さまありがとうございます。
「~~♪~♪~~♪♪」
鼻歌混じりに獣モードで駆けていくクオンの後を、俺とクキさんが小走り気味に追いかけていく。
そうして特に魔物に襲われることも無く山頂の火口付近へと到着した。
俺たちはダンジョンに入る前にお弁当を広げることにした。
山頂は視界が広く景色を見るだけでも楽しめるし、山裾を見下ろせば、所々に魔物や人の姿が見える。
また、少し離れたところには道が出来ていて、そちらは荷馬車などが行き来していた。
「あれはその先にある採掘ダンジョンに向かう人間達ですね」
「そういえば、貴金属が採掘できる場所があるって聞いてましたが、ダンジョンだったんですね」
「ええ。彼らはああして貴金属を採掘し、その対価に自分達の魔力と命を糧にダンジョンを育てているのです」
「育てている?」
聞けばダンジョンには、天然の洞窟に魔物が住み着いたものと、ダンジョンメーカーと呼ばれる魔物が作り出したものがあり、
後者のダンジョンはやって来た生き物の発する魔力やその死体などからエネルギーを吸収して、
更に強い魔物を生み出したり、階層を深くしたりするそうだ。
また、冒険者を誘い込む為に、貴金属や貴重な薬草類を生み出すので、それ目当ての商人などが集まり、町が出来るケースも多いという。
でも、そうか。だからあんなに疲れた顔をした人ばかりなんだな。
「これから向かう火口ダンジョンも、そうした成長するダンジョンの一つですよ。
気が付くと大量の魔力を吸い取られていた、何てこともありますので気をつけてください」
「だから悪い子はダンジョンに放り込まれてしまうんだ。あ、もちろん僕は放り込まれた事はないよ」
そういって胸を張るクオンと、その頭を愛おしそうに撫でるクキさん。
「でも人間に捕まらないくらい強くはなりましょうね。そうだ。今日は第5階層に挑戦しましょうね」
「お、お母様!?先日第4階層に入ったばかりですよ」
「大丈夫よ。それから1ヶ月は経ってるし、クオンがサボってなければ十分勝てるはずよ」
「あ、あははは」
いつの間にかクキさんが笑顔で怒ってらっしゃる。
こういう時の母親に口を出してはいけないと、以前道場長が涙目で語っていたな。
食べ終わったお弁当を片付け、いよいよダンジョンへと入る。
さすが火口ダンジョンというべきか、所々に溶岩溜まりが出来ている。
そのせいで明るいのはいいけど、かなり暑いな。
「そういえば、ジンさんって魔力は物凄かったけど、普通の戦闘は得意なのですか?」
「そう、ですね。人並み以上には戦えますよ」
言いながら、槍型の武器を作って、飛んできた蝙蝠っぽい魔物をサクサク狩っていく。
そういえば最近ステータスを見てなかったな。
「
名前:ジン・バンリ
種族:理外の者
クラス:救命士
レベル:23
HP:145/145
MP:208/208
STR:151
INT:208
VIT:145
DEX:196
AGI:174
MND:230
LCK:185
一般スキル:
基礎Lv.10、浄化Lv.7、救命Lv.8、創造Lv.7、飛行、念話、
竜呼吸Lv.4、空間掌握Lv.5、空間転送Lv.2、共鳴Lv.5、隠蔽、
植物魔法Lv.5、鍛冶Lv.2、錬金Lv.3、炎妖術Lv.1
特殊スキル:
アイテム空間、固有空間、自動翻訳、手当て
」
ダニ退治をしたお陰か、レベルが10も上がって各パラメータも200前後まで上がってる。
さらに『鍛冶』スキルと『炎妖術』スキルまで増えてる。『炎妖術』って種族特性じゃなかったのか?
まぁ、手に入ったものはありがたく貰っておこう。
ひとまず第1階層は特に問題なさそうだったので、次の階層への階段を下りる。
第2階層はファイヤゴブリン、つまり髪の毛が燃えている変なゴブリンだった。
火の耐性が高いだけで、強さも普通のゴブリンと変わらない気がする。
なので、まっすぐと次の階層へ。
ちなみにダンジョンの魔物は死んだら魔石を残して残りは地面に吸収されていく。
今更ながら、最初にダンジョンに潜っていたらゲームだと勘違いしたままだったのかもと思ってしまった。
第3階層からはクオンが参戦することになった。
魔物はファイヤラット。全長30cmくらいのネズミだ。ハリネズミの針の部分が燃えているのをイメージすれば良いだろう。
さて、クオンのお手並み拝見と行こうか。
クオンの得物は刃の付いたトンファーだ。
一匹一匹は弱いらしく飛びかかってくる魔物を、クオンが危なげなく迎え討っている。
ただ、ちょっと数が多いのが大変そうだ。それに、
「60点、かな」
「そうですね、ギリギリ及第点と行った所かしら」
「えぇぇ~」
俺とクキさんの評価は辛口だった。
クオンはそれに抗議の声を上げるも、次々やってくる魔物の対処でいっぱいいっぱいだ。
「クオン、少し交代。100点とは行かないだろうけど、80点くらいの動きは出来ると思うから見てな」
そう言って俺は両手にトンファーを作り出して前に出る。
飛びかかって来た魔物に対して、半歩横にズレながら横から殴りつける。
次の魔物は1歩前に出ながら下から突き上げる。
地面スレスレを駆け抜けてきた魔物は足で蹴り上げて殴り飛ばす。
そうしてそこに集まってきていた魔物をあらかた倒し切った。
「と、こんな感じだな」
「お見事です。文句の付けどころが見つかりません。クオン、あなたの戦い方との違いは分かりましたか?」
「えっと、お兄さんは小刻みによく動いてました。それと横合いから殴る事が多かったように見えます。
後は……僕の時より魔物の動きが鈍かったというか、攻撃の間隔が長かったように感じました」
「見るべきところは見えてるんだな。じゃあ、後はそれらの意味を理解出来て自分で実践できるようになることだな。そうすればもう1ランクか2ランク上の魔物とも戦えるようになるさ。
もう少し敵の数が少なければ説明を入れながら戦えるんだけどな」
「それならジンさん、第4階層に行きましょう。そちらは個体数は少ないですから」
クキさんの提案を受けて次の階層への階段に向かう。
道中どんどん湧いてくるファイヤラットはいちいち相手するのが面倒なので、かまいたちの魔法で切り飛ばしていった。
第4階層の魔物はファイヤオーク。
このダンジョンは5階層毎に魔物の特性が決まっているそうで、第5階層まで体の一部が燃えた魔物が出てくるそうだ。
早速出て来たオークに対峙してお手本を見せる事にする。
鈍重なオークが燃える石斧を振りかぶって来たので、すれ違うように一歩を踏み出してがら空きの胴に一撃を入れると真っ二つになって倒れた。……あ。
しまった。余りに隙だらけだったから倒してしまったよ。
次の魔物を探す。あ、いたいた。
今度はちゃんと振り下ろしてくるまで待ってあげる。
半歩下がりながら、降りて来た腕を横から押すようにして軌道をずらせば、がら空きの頭が……あっ。
3度目の正直とばかりに探せば、今度は2匹同時に現れた。
2匹同時に襲い掛かってきたところで右に大きく1歩動いて右側のオークを左に蹴り飛ばす。
すると蹴られたオークが反対側のオークとぶつかって縺れ合ってる。……やっちゃだめかな。
後ろを振り返るとクキさんがため息をついてGOサインを出してくれたので、ノロノロ立ち上がって来たところを殴り飛ばして倒す。
「……とまあ、こんな感じだ」
「うん、オークがめちゃくちゃ弱いか、お兄さんがとっても強い事だけは分かったよ」
「まあ、そうだよな。言いたかったのは、敵の間合いを外してやったり、距離を調整したりすればもっと楽に戦えるようになるってことだ」
「なるほど、後は隙があったら躊躇わず攻撃だね」
「敵の罠じゃなければな。よし、じゃあ次からクオンに任せるな」
「うん、任せて!」
そうして戦い始めたクオンは、しっかり敵の動きを見る分、倒す速度は若干落ちているものの、それほど疲労せずに倒せるようになっていた。
続く第5階層はハイゴブリン。1m70cmくらいの体格のゴブリンで普通のよりパワーもスピードも上がってるけど、逆に言えばそれだけだ。
オークで慣れたクオンにはちょうど良い練習台といったところだな。
そして一瞬で過ぎ去る戦闘回。
ステータスは意味が無いようであります。きっと。
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無事に装備を手に入れることが出来たジンは、クオン達の要請により
クオンに戦闘訓練を施す事になる。
次回:特訓




