鍛冶の町へ
よろしくお願いします。
新章に入ります。
鍛冶の国ミスリスの王都ミスリニア。
その都市は、南の休火山と北の活火山の二つの山に挟まれ、それぞれの山からの恩恵を強く受ける事で発展を遂げてきた。
南の休火山は潤沢な金属の鉱脈が多く存在し、出稼ぎの工夫たちによって日夜採掘が行われている。
北の活火山は貴金属の鉱脈が存在し、また炎に親和性の高い魔素が充満しているのか、火炎魔法の威力が高くなりやすく、消費魔力も少なくて済む。
更には山の中腹までにある森からは、希少なものではないものの、傷薬や火傷などに効く薬草の採取が可能だ。
欠点を上げるとするならば、食料自給率がかなり低いことから、近隣の町村からの食料援助が必須というところか。
そして職人の町でもある。
町の中は日中は鎚の音と怒声が響き、夜は酔っ払いの声が響く。
なお、北に職人、南に商人と住み分けがされている為、騒音による苦情は少ない。
そしてこの日も、町には職人と思われる男の怒声が響くのだった。
「馬鹿野郎。たかだかランクFの冒険者ごときがうちに来るんじゃねえ」
「舐めてるのか。せめてランクCになって出直して来な!!」
「お前みたいな駆け出しは、店頭に並んでる習作で十分だ」
さて困った。どうするかな。
ミスリニアに着いたのはいいんだけど鍛冶屋が軒並み門前払いだ。
リウさんの友人のクキさんも職人達に聞いてもわからなかったしな。
まあ、今回は特に誰かが助けを求めているって訳でもないし、冒険者ランクでも上げながらゆっくり探すかな。
よし、そうと決まれば冒険者ギルドだな。
「ただいまFランクの方に紹介できるのは、工夫見習い、薬草採集、職人の下働き、鉱石運びくらいですね。
薬草については山に行って傷または火傷に効く薬草を採取してきて頂ければ、いつでも受け付けます。
他の3つに関しては、こちらで紹介状兼依頼書を発行します」
最初に職人達に袖にされたので、町の印象は良くなかったが、ギルドの受付嬢の説明は凄く丁寧で好印象だった。
受付嬢の名前はココさんというらしい。
「ありがとうございます。では、薬草採集に行って来ます。薬草の資料や見本はありますか?」
「はい、それでしたら横の棚にあります。が・・・・・・あの、よろしいのですか?」
「?何がでしょう」
何か問題があっただろうか。
Fランクで受けられるのだし、技術的に難しいって事も無いと思うんだが。
「言ってはなんですが、薬草採集ってお金になりませんよ。
お兄さんも鉱山で一山当てに来たんじゃないんですか?
薬草採集ならこの町に来る必要もないですし」
なるほど。余所から冒険者が来る目的なんて、鉱山と鍛冶くらいだしな。
「心配ありがとうございます。
俺がこの町に来たのは腕の良い鍛冶師と、知り合いの友人に手紙を届ける為で、
金儲けはおまけです」
「そうでしたか。正直、薬草採集は子供くらいしか引き受けてくれないので助かります。
薬草は南の山の方が多く生えていますので、そちらに行かれることをお勧めします」
「ご親切にありがとうございます」
受付嬢にお礼を言って、薬草の資料を確認する。
・・・・・・残念。エルフの森で貰ってきた薬草類の中には無いな。
町の南側は宝石商や高級品を取り扱っていそうな店舗が多い。
その影響で至る所に警備員が居たり、高級そうな馬車が行き来している。
『・・・・・・』
ん??
今何か聞こえたような気がするが・・・・・・気のせいか。
念のため、帰ったら少し見て回ってみるか。
そう考えながら、まずは南の山へと向かうのだった。
「薬草採集クエストの納品に来ました」
「おう、お疲れさん。・・・・・・ん?おい、手ぶらに見えるが、薬草はどうした」
あ、しまった。アイテム空間に仕舞ったままだ。
怪訝な顔をした担当のおっちゃんの前に採取してきた薬草を1/3くらい出してみる。
「お前さん、今のは!?「しーー」あ、あぁ。そうだな。すまん」
驚いて声を上げそうになるおっちゃんにストップを掛ける。
アイテム袋系の道具は高級品だって以前エリーが言っていた。
俺がそれを持っていると思われると、無用な厄介ごとに巻き込まれそうだからな。
「ごほん。しかし、随分と採ってきたんだな。一つ一つの品質も問題なし。丁寧に摘み取られてやがる」
「これでクエスト達成になりますか?」
「ああ、ちょっと待てよ。傷薬の薬草が・・・・・・2回分。火傷の薬草が・・・・・・5回分か。
よし、これで7回分の依頼達成になるな。品質が良いから報酬にも多少色を付けてやろう」
「あ、おっちゃん。まだこの倍くらいあるんだけど、出していいか?」
「はぁ!?倍ってお前なあ。まったく。まあ、どっちも常に在庫不足だから、こっちとしては歓迎だけどな」
「それじゃあ、はい」
全部で20回分の依頼達成となり、その日のうちにEランクへの昇格が確定した。
ただ、一連のやり取りで、酒場スペースの何人かがこっちに意識を向けているな。
夕暮れ時のこの時間はそれなりに冒険者がたむろしているからな。
まぁ仕方ないか。仕掛けてくるようなら撃退しよう。
それよりも、今朝気になった声の正体を確かめに行くか。
空耳だったのであれば良いのだけど。
日が暮れて人通りが大分減った南区画を気配を消して歩く。
この時間にこちらの区画に用がある人間はほとんど居ないはずなので、衛兵に見つかったら面倒な事になりそうだ。
そうして、まずは声が聞こえた辺りに移動して物陰に隠れる。
魔力を薄く広げて気配を探る。
日中に比べれば静かで人通りも少ないから探知しやすいはずだ。
『…………うぅ~』
いた。これは地下、かな。そう思って地面に手を当てる。
思えば『手当て』も最初の頃に比べたら大分パワーアップしてるな。
この世界に来てから『手当て』には世話になりっぱなしだ。
っと、それはさておき、声の主は、これかな?
『こんばんは』
『ん?だれ??』
『俺はジン。君は?』
『僕はクオンだよ。うぅ~、おなかすいた~、おうち帰りたい』
声の感じからは、男の子か女の子かは分からないけど、誘拐の類だろうか。
『近くに誰かいる?』
『ん~ん。誰も居ないよ』
『よし、なら今からリンコを送るよ』
『わーい、ありがとー』
さて転送魔法はエルフの森で世界樹から教えて貰ったが、まだレベルが低いせいで色々制限が掛かっている。
まずは、ここと向こうを魔力の帯で繋ぐ。
こちらの送りたい物を魔力で包み、向こうにも同サイズの空間を確保する。
転送っと……よし、無事にこれで向こうに行った筈だ。
『どうかな?』
『ムシャムシャッ(うまうま)』
相当お腹が空いてたのか、颯爽食べているみたいだ。
追加で3つほど送っておく。
後はどうやって助けるか、だけど。
乱暴な方法で助けることも出来るだろうけど、穏便に済ませられるならそれに越したことはない。
今のままだと情報が足りな過ぎるので、情報収集してからだな。
『自力ではそこから出られないんだよね』
『うん。変な首輪を掛けられて力が出ないの。それが無ければこんな鎖、焼き切ってやるんだけどな』
……首輪?何かの魔法道具か。
『じゃあ、どうにかしてそこから出られるようにするから、少し待っててくれるか?』
『うん、まってるー』
最後に防御魔法を送り届けて念話を切る。
さて、情報収集にまず冒険者ギルドに戻るか。
それにしても、防御魔法を掛ける際に向こうの姿を確認したら、子犬くらいの動物だった。
それで首輪なのか。
それなら生かされているって事は、毛皮や命が目当てではなく、ペットにしたいとかだろう。
少なくとも、直ぐに命の危険は無いって事だ。
冒険者ギルドに戻ると、中は騒然としていた。
「誰か、上級の治癒魔法が使える人はいませんか!」
女性の叫び声が聞こえる。
怪我人、それもかなりの重傷か。
人だかりの奥にいくと、半身にひどい火傷を負った男性が寝かされていた。
虫の息だが生きてはいるようだ。なら。
「俺が診てみよう」
そう言って男性の傍に行くと、野次馬の男性が前を遮った。
「お前、今日薬草を納品してたFランクだろ。止めておけ、あれは手遅れだ。初級の治癒魔法じゃただ苦しめるだけだぞ」
「ランクと強さは別物だと思うがな。どうする?この男はこう言ってるが」
俺は男性の向こう側にいる、さっき叫んでいた女性に聞いてみる。
「お願いします!彼を、ダーミヤンを助けて下さい」
「だ、そうだ。退いてくれ」
「へっ。どうなっても知らんからな」
完全に余計なお世話だと思うが。
俺は今度こそ倒れている男性の横に座り『手当て』を始める。
更に治癒魔法と光魔法を発動させて男性の全身を光で包み、上級魔法っぽく演出する。
そうしないと完全に炭化して治癒魔法では治らないはずの指とかが再生した事で別の騒動が起きそうだしな。
そうして3分くらいで治療が終わる。
魔法を解除すれば、傷一つない男性が現れる。
直ぐに男性も目を覚ました。
「うっ、ここは。あの魔物はどうなった!?」
「あぁ、ダーミヤン。無事で良かったわ。ここは冒険者ギルドよ。私達助かったのよ」
男性に抱き付きながら、涙を流して喜ぶ女性。
さて、めでたし、めでたしかな。
「待って。彼を助けてくれたお礼をさせてください!」
空気を読んで、こっそりその場を後にしようと思ったら引き留められてしまった。
うっすら出ていますが、ランクを重要視する人が多い町のようです。
今回は、町の地下に拐われた一匹?の救出が始まりの鍵になりました。
リウさんの友人は、多分お察しの通りです。
……意外性が足りないかな。
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冒険者を助けたジンは、その襲われた内容を聞き行動を加速させる。
さらに、捕らわれている子がオークションで売られる危険が出てきた。
次回:魔物との約束




