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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 序章:ここはVR?それとも異世界?
3/63

ゴブリンの次に出会うものたち

よろしくお願いします。

序章の間はコンセプトがぐらつく予定です。

1章に入れば落ち着きます(多分)

そうしてゴブリンに襲われた所からそれなりに移動して……あれ、何か忘れてるような気がするが。そう考えてるとバカウマと目が合う。って、そうだ。


「そう言えば、バカウマ。お前、ゴブリンに攻撃された所は大丈夫なのか?」

「(ええ。腹のあたりに多少引っかかれたような痛みがあるくらいで、他は大丈夫っす)」


なるほど。横っ腹を見ると確かにゴブリンの爪で引っかかれたような傷が幾つかある。前に熊の爪は病気とか毒を持ってるから浅い傷でも注意が必要って聞いたことあるし、念には念を入れるべきか。


「魔物の爪って病気とか持ってそうだし、一旦止まって、手当てとかしておこう」

「(ありがとうっす、旦那)」


そうして、じっくりと傷の具合を観察してみると、化膿とかもせずに、既に塞がり始めてる。クラスアップしたお陰で回復力も上がってるのかもしれない。

まあ、折角だから治癒魔法みたいなのも使えるのか試してみよう。あ、いや。そう言えば特殊スキルに『手当て』なんてお誂え向きのスキルがあったし、そっちも使ってみるか。

そうしてさっきのように魔力を手に集めて、傷が無くなるイメージをしながら傷口に手をかざす。すると傷口が洗い流すようにサッと消えていく。

うん、無事に成功みたいだ。ついでなので、他の部分もさわさわと撫でまわして悪い所はないか確認していく。


「(ちょっ、旦那。くすぐったいっす)」

「こら、すぐ終わるからじっとしてろ」


そう言って暴れようとするバカウマの体を押しとどめながら、触診を続ける。よし、何となくの感覚だけど、問題なさそうだな。『手当て』は普通にファーストエイドの役割もあるけど、当てた所の状態を認識したりすることも出来るようだ。それ以外の使い道はまた今後検証していくか。


そうしていると、今度は道の向こうから何かが近づいてくる音がする。音からして、馬車と、犬っぽい何かの吠え声だな。っと、見えて来た。予想通りか。野犬か魔犬かは分からないけど、犬っぽいのに追い立てられて馬車が全速力で走ってくる。人影は御者台に一人いるだけか。

全く、千客万来だな。


「あー、バカウマ。どうやらゴブリンの次は犬みたいだぞ」

「(そうっすね。あれはグレーハウンドっすよ)」


お、なんだ。さっきのゴブリンの時とは大違いで、随分落ち着いているな。やっぱり一皮剥けたお陰で肝が据わったみたいだな。


「このままここに居ても巻き込まれるし、こっちから仕掛けるぞ。すれ違いざまに一撃入れつつ群れの向こう側まで抜けろ。さっきのゴブリンと違って噛まれると痛いじゃ済まない危険があるから、立ち止まるなよ」

「(分かったっす。って、ああ!馬車の馬がやられちまったっす)」


バカウマの言う通り、首筋に噛み付かれた馬車馬がつぶれ、その反動で馬車も横転してしまう。御者の人は横転する瞬間に飛び出して、まだ無事っぽいな。


「行くぞ。俺は先に御者を助けに向かう。バカウマも無理はするなよ」

「(うっす)」


俺たちは急ぎ馬車に向けて走りだす。幸い馬車が100m程まで近づいて来ていたから、それほど時間も掛からずに辿り着く。

ただ、グレーハウンド達も俺たちの足音に気が付いて、こちらを警戒し始めた。

よし、これで御者もすぐに食われることは無いな。

そう思って俺はアイテム空間から剣を取り出して、一番手前のグレーハウンドに投げつける。まあ流石に避けられるわな。予定通りだ。さらにもう一本剣を取り出して、避けて若干体勢の崩れた所に袈裟切りに切り込む。今度は無事に首筋を深く叩き込まれて絶命させた。

バカウマの方は……よし。巨体を利用して一気に奥まで駆け抜けて、残りの奴らの注意を奪ってくれたな。

今のうちに急ぎ御者の近くまで寄って声を掛けるか。


「おい、無事か。通りがかりのよしみで狼の相手はしてやる。その間、自衛くらいは出来るか?」

「はい!ありがとうございます。私の事は気にせず、お願いします」


思ったより、しっかりした受け答えが返って来た。これなら大丈夫そうだな。

とは言っても、こっちの戦力は俺とバカウマ。対して向こうは狼が8か。1対1なら何とかなるんだろうが、複数相手になると、まともに戦うと小回りが利かない分、バカウマが危ないな。ならどうにかして追っ払うのが得策か。

俺は右手にさっきの炎魔法と同じ要領で炎と風の魔法を生み出して狼の群れの真ん中に放り投げる。


ドガーーン!!


と地面にぶつかると共に、派手な爆発音と爆風が辺り一帯に巻き起こる。

ちなみに今回の魔法自体に殺傷力は求めていない。要は威圧だ。狼たちが驚きこちらを警戒したところで、殺気の籠った目で睨みつけつつ、もう一度右手に魔法で炎を生み出す。

それを見て不利と悟ったのか、狼たちは一斉に森の中に逃げ込んで行ってくれた。

ひとまず危険は無くなったので、倒した1匹を回収しつつ、改めて、御者の人(女の子だった)に声を掛ける。


「怪我はないか?」

「はい、助けて頂きありがとうございます。お兄さん、強いんですね。最初、瞬く間に1匹切り倒したと思ったら、魔法まで使えるなんて。って、あれ?お兄さん、先ほどの剣はどこへ?」

「ああ、それなら仕舞ったぞ」


言ってから、失敗したかと思ったが、案の定。


「仕舞ったって、どこにも……あ!もしかしてアイテム袋をお持ちなんですね!!すごいです。どこかのダンジョンで手に入れられたんですか?それともオークションで買ったりとかですか?」


やっぱり収納系アイテムはレアだったか。そう聞いてくるが、答えようによっては俺の事情に巻き込む恐れがあるから、答える訳にはいかない。


「残念だが秘密だ。詮索は無しで頼む」

「あ、そうですよね。すみません、ルール違反でした」


引き下がってくれる彼女。


「そう言えば、名前は何て言うんだ?俺はジン・バンリという」

「あ、これは重ね重ねすみません。わたしは、エリーです。エリー・ライオネルって言います」

「じゃあ、エリー。これからどうするんだ?」


そう言いながら横を見れば、既に事切れている馬と倒れた馬車があった。


「あ、そうでした。荷物は割れ物とかは無いので無事だとは思いますが、馬車自体が無事かはあやしいですし、たとえ無事でも馬が居なくてはどうにもならないですね」

「まあ、そうだよな。ひとまず馬車を起こすか。悪いがエリーは向こうを向いていてくれ」

「はい、手つだ……え?まさかおひとりで持ち上げるんですか?さすがにそれは無理じゃないですか?」

「心配しなくていい。我に秘策ありだ。むしろその秘策はあまり知られたくないんだ」

「なるほど。分かりました」


エリーが後ろを向いてくれたのを確認して、俺は手早く馬車をアイテム空間に一度仕舞って、すぐに向きを直して取り出す。


「もういいぞ」

「え、もうですか?って、すごい。本当にもう起きてる」

「ただ、(ながえ)が折れてるのと、車軸も折れかけてるな」


そう呟きながら折れた部分を合わせて『手当て』をしてみる。よし、直った。予想通り、生き物以外にも効果があるみたいだな。とは言っても、多分応急処置程度なんだろうけどな。あとは馬か。馬ね。


「おーい、バカウマ」

「ブルルッ(どうしました、旦那)」

「お前、そこの馬の代わりにこの馬車を引っ張って行ってくれないか。元々馬車馬だったんだから出来るんじゃないかと思ってな」

「ブルッ(お安い御用っす。パワーもスタミナも前より上がってるんで楽勝っすよ)」

「ついでに言うと彼女が新しい雇い主だ」


そう言いながら、まだ状況に付いてこれずに呆然としてるエリーを指差す。


「ヒヒィーーン(よろしくっす、お嬢)」

「え?馬車が直って、馬がひひーんで私が雇い主って。ちょっと待ってください。状況の整理がまだ」

「混乱するのは分かるが、さっきの狼が戻ってくるかもしれないから、結果をまず受け入れてくれ。

馬車は無事だし、荷物も無事だ。代わりの馬も見つかってエリーとしては万々歳だ。

俺も良い馬の預け先が見つかって問題が一つ解決だ。良いことづくめだろ。

だからエリーが今すべきことは馬車に乗って安全な街まで移動することだ」

「そうなんですけど。もう、さっきから私、ずっと助けて貰ってばっかりじゃないですか。

このまま助けられっぱなしは困ります!だから、ジンさんも一緒に来てください」


さっきの混乱が嘘だったかのように鮮やかに俺を御者台へと押し上げると、バカウマを馬車に繋げて自分も御者台に乗ると馬車を発進させてしまう。あ、いや、この行動は混乱の延長線上なのかもしれないな。


「ところでエリー。俺たちはどこに向ってるんだ?」

「王都です。そこで積み荷を降ろしたら、当面は自由に動けますから。そうしたら今度はじっくりとジンさんに恩返しをさせてもらいますね」


どうやら俺は王都に逆戻りになるらしい。まあ、確かめたい事も出来たし、これはこれでありか。



馬車が襲われてるところに遭遇するとか……

第1章はテンプレートに沿った内容になっております(嘘)


アイテム収納について

アイテム空間(大陸一つ) >> アイテムボックス(家一軒) > アイテム袋(一部屋)

くらいの違いがあります。


間違った次回予告:

そして連れ戻された主人公を待つ者とはいったい!?


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