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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第3章:世界探訪「エルフと世界樹編」
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動き出したエルフの森

よろしくお願いします。

少しずつ積み上げてきたものが組上がっていきます。

長老たちが祭りの準備などに奔走するなか、俺はグラウ老師から植物魔法を習っていた。


「良いですかな。植物魔法を教えるとは言っても、エルフは生まれた時から植物や妖精との親和性が高いのです。ジン殿にはそれだけのハンデがあるとご認識願いたい」

「はい、分かっています」

「うむ。と脅しましたが、実際の所、ジン殿は既に治癒魔法も念話も使えるとの事。更にはかなり高レベルな浄化魔法や大地の聖域化さえこなしてしまわれるご様子」


あ、そう言えば森の掃除人の魔物も、俺が手当てした領域が聖域化してるとか言ってたな。


「そこまで出来ましたら、後はご自身の望む植物に魔力を送り込み、その植物と対話し、成長の為の魔力を渡す代わりにこう成長してほしいとお願いをすれば良いのです」

「植物と対話、というのは、世界樹と会話したようにですか?」

「そうですな。流石に普通の植物は世界樹程はっきりとした思考は無いでしょうが、似たようなものです。どれ、早速そこの植物で試してみましょう」


そう言って指差した先には、ホウレン草みたいな10cmくらいの野草があった。


「これはポポルン草という、体力回復を助けてくれる草です。これに私が植物魔法で成長を促すので、見ていてください」


老師から魔力が流れポポルン草へと吸い込まれていく。

そして老師の呼吸に合わせるように揺れたかと思うと、ぐんっぐんっと、二回り程成長してしまった。


「これが直物に直接作用させるタイプです。他にも樹精に語り掛けて枝を槍のように変形させたり、蔓を自在に操ったりすることも出来ますが、今はそちらは良いでしょう」

「そうですね。では俺も一回やってみます」


近くにあった、別のポポルン草に手を当てて魔力を送りながら軽く目を閉じて念話に集中する。


『こんにちは』

『??! ♪♪』


なるほど。言葉にならない感情だけが伝わってくるみたいだ。

それならこっちも言葉ではなくイメージで伝えると伝わりやすいだろうか。


『こんな感じに大きくなって、元気をいっぱいにして欲しいんだけど、出来るかな』

『☆★♪……!!!』


お、いい感じに魔力を力に変換してくれてるな。よしよし。

このまま行けば……と、思ったところで肩を叩かれた。


「ジン殿。やりすぎです」


そう言われて目を開けると、一回りどころか1mくらいに巨大化していた。

手を当てて撫でてみると、期待通りになったんだろうなって事が分かる。


『♪♪』

ぽきっ!


……え!?

突然巨大化したポポルン草が根本付近から切れて俺の方へ倒れてくる。

一体何があったんだ?ただ撫でていただけんだけど。

老師の方を見ると、老師も驚いているようだ。


「あの、老師、これは一体……」

「……はぁ~流石ですな。いや失礼、滅多に見られない光景だったものですからな」

「俺にはポポルン草が自ら折れて来たように感じられたのですが」

「その通りです。成長させてもらったお礼に、その身をあなたの役に立ててほしい。そう言う事です」

「ですが、それだと、俺が一方的にもらう事になっていませんか?」

「いえ、彼らは根が生きていれば、すぐに再生可能です。ジン殿の力を受けた分、次は素晴らしい成長を遂げられる事でしょう」


なるほど。それなら大事に使わせて貰わないとな。

そう思ってアイテム空間へとしまっておいた。

ちなみにアイテム空間での表記はこんな感じだ。


『ポポルン草LV32。特殊な環境で成長したポポルン草の葉。体力回復、滋養強壮に目覚ましい効果がある』


他のポポルン草を摘んでみたら、


『ポポルン草LV3。ポポルン草の葉。体力回復に多少の効果がある』


となっていたので、まるで違う事が良く分かった。


「しかし困りましたな。これでは私が教える事がもうありません」

「いえ、先ほどは加減が分からなかったので、助かりました。もう何回か試してみたいので、サポートをお願いしても良いですか」

「もちろんですとも」


そうして俺たちは草から始めて、樹木、キノコ、花など色々なものに植物魔法を試して行った。

……流石に木が立ち上がって来たのには、ふたりして驚いたが。


植物魔法の練習から帰ってくると、健康診断を行うための仮の診療所の準備がほとんど終わっていた。

これなら明日の診察には十分間に合うだろう。

そう思っていたら診療所の中からリウさんが出て来た。


「あ、ジン様。おかえりなさいませ。植物魔法の方は如何でしたか?」

「はい。無事にグラウ老師から大丈夫とのお墨付きを貰いました。ただ、やり過ぎないようにと。診療所の方はどうですか?」

「はい、こちらも滞りなく。しかし、半分皆を騙すようで心が咎めますね」

「あーであれば、治癒魔法を掛けてあげれば良いのではありませんか?瘴気の除去は俺がやるので、その後の体力回復も兼ねて、リウさんの方で治療して頂ければ」

「そうしたいのは山々ですが、私の魔力では里の全員に治癒魔法を掛ける事は出来ません」


そう言って残念がるリウさん。

魔力の問題であれば俺がサポート出来る気がするな。


「リウさん。それであれば、魔力が減ってきたら俺の魔力をリウさんに送りますよ。これでも魔力保有量は多い方なので、何とかなると思います」

「え?魔力を他人に譲渡する、なんて可能なのですか?家族ならいざ知らず、波長の異なる魔力の受け渡しは難しい筈ですが」

「それなら以前、やり方をマスターしたので大丈夫です」

「はぁ。ジン様は何でも出来てしまうんですね」

「そんな事もないですよ。出来ないことの方が多いですから」


その後、明日からの手順を確認して、ついでなので、診療所の中も浄化して聖域化しておいた。


そして翌日。

朝食を摂った後、早速診察を開始する。

診察の手順は簡単だ。

まず診療所の入口で、来た人の手を俺が引き、その際に手当てで瘴気を取り除いてしまい、リウさんの元に連れて行く。

リウさんから治癒魔法を掛けて貰い、元気になった所で帰ってもらう。

待っている人達は、次々と元気になって出てくる人を見て、自分の番をまだかまだかと待ってくれる。

また、30人の診察が終わった所で、リウさんの肩を揉みながら魔力補給を行う。

長老たちの誘導が上手かったお陰で、順番に来た里の人たちはそれほど待たされる事もなく、特に騒動も起きずに済んだので、俺の肩の荷も大分下りた感じだ。

なお、けがや病気で診療所に来れない人の為に、明日一日かけて里中を俺とリウさんで回っていく予定だ。

そうして無事に診療が終わる頃には夜になっていた。


「お疲れ様でした、リウさん」

「ジン様もお疲れ様でした。それにしても……」

「ん?何かありましたか?」

「あ、いえ。ジン様の肩もみはとても、その、そう心地よかったなと思いまして」

「ああ。あれくらいで良ければいつでもしてあげますよ」

「いえいえ。今後は娘たちにしてあげてください。私は主人にして頂こうと思いますので」

「??はぁ、分かりました」


若干顔を赤らめてるリウさん。あれ、肩もみの話だよな。

まあ、深くは考えない方が良さそうだな。


そして3日目。俺は外縁部のハーフエルフの集落に来ていた。

以前、町から救い出した子供たちが、俺に気が付いて駆け寄ってくる。


「あ、ジン様。こんにちは。今日はどうしたのですか?」

「ほんとだ、ジン様だ。私達に会いに来てくれたの?」

「こんにちは。みんな元気そうだな。今日はな、俺の友人が荷物を届けてくれる予定なんだ」

「それって彼女ですか!?」

「ララ様のライバル出現ですね!!」


みんなでワイワイ話していると、街道を通って馬車が2台やってきた。

前に走ってる馬車を引くのは、黒い毛並みに足だけ赤い馬。って、バカウマだよな。また外見が変わってるな。

エリーは相変わらずっぽい。


「こんにちは、エリー。今日は急なお願いを聞いてくれてありがとな」

「お久しぶりです、ジンさん。お元気そうで何よりです」

「バカウマも元気そうだな。しばらく見ない間にまた成長したみたいだし」

「ヒヒィーン(そうっすよ、旦那。あっしもあれから艱難辛苦を乗り越え、見事『赤蹄(せきてい)』ってレア種に進化したっすよ)」


バカウマの鼻息がうざいな。

まあ、頑張ってくれてたみたいだから撫でておいてやろう。


「それで、エリー。頼んでいた物は?」

「はい、こっちの荷台に1つ、後ろの馬車にも幾つか積んであります」


途中で何かあっても1つは確保できるように分散してくれたらしい。

俺は後ろの馬車を引いてた人にも挨拶をして、荷台を見させてもらう。

オニクイソウ……これか。一見すると、ハエトリグサみたいな感じだな。それが鉢植えで10個ほど。

挨拶代わりに手当てで魔力を少しだけ送ってみると、


「♪♪」


葉っぱをパクパクして挨拶してくれた。

可愛いとは言わないけど、力強い動きに期待できそうだ。


「ありがとう、エリー。これで今抱えている問題は解決出来そうだ」

「お役に立てて良かったです。それにしても、最後別れたときは竜の山に向かってたと思ったのですが、なぜエルフの森に?」

「あぁ、それはな……」


と、エリーと別れてから起きた事をかいつまんで説明してあげる。

ワイバーンに竜の山に連れて行ってもらい、ドラゴンの卵騒動に巻き込まれたり、ハーフエルフの誘拐事件を解決したり。

こうして話してると、エリーは聞き上手だから、話す方も楽しくて延々と話してしまいそうだ。


「ところで、エリーはこの後、どうする?」

「あ……はい。折角こうして、エルフの森に顔を繋ぐことが出来ましたので、販路の構築をしておこうと思います」

「そっか。もし、困った事があったらいつでも呼んでくれ……ってそうか、エリーは念話は使えないよな。ちょっと待ってな」


アイテム空間の中に確か……あった。

竜の山で貰った共鳴石ってアイテムを取り出して2つに割って片割れをエリーに渡す。


「はい。これは共鳴石って言って、これに魔力を送りながら話しかけると、片割れのこっちに伝わるから。後でブローチとかに加工してくれ」

「はい。って、共鳴石ってかなり高価なアイテムですけど」

「あ、そうだったのか。まぁ、貰い物だから気にしなくていいや。あと、こっちの金貨も俺だと使い道無さそうだからエリーに投資しておくな」


竜の山で貰ったドグラール金貨も渡しておく。

あ、エリーが余りの金額にあわあわしてる。

これは返される前に行った方がいいな。


「じゃあ、エリー。俺はもう行くな」

「え、あ。ジンさん!」


エリーの声を後ろに聞きながら、俺は森へ戻っていった。


…………


ジンさんの後ろ姿をふたりで見送る。


「行っちゃいましたね」

「ええ」

「協会長も本当は一緒に行きたかったんじゃないですか?」

「そうね。でも、私は彼の役に立つ存在になるって決めたから」

「は~愛ですね」

「ほら、そんなこと言ってないで、村長の所に話を付けに行くわよ」

「はーい」


さ、私もジンさんに負けないように、もっともっと頑張らないと。

診察のところでひと悶着作ろうかとも思いましたが、彼らに愛着が無かったのでお流れになりました。

久しぶりのエリーさんですが、お使いミッションだけです。

報酬はハーフエルフとその後ろにいるエルフの特産品の優先取引権でした。


########


無事に食虫植物を獲得できたジン。

里は祭の準備で盛り上がる中、一人世界樹の地下へと行き、死闘を繰り広げるのだった。


次回:地下ダンジョン攻略


雑魚を倒すとその先には……

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