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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第3章:世界探訪「エルフと世界樹編」
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対策会議

よろしくお願いします。

会議になると情景描写を入れる隙を探すのが難しい。

終わりが見えないので、切りの良さそうな所で話を止める。


「皆さん、過去の反省は今はそれくらいで。今大切なのは、この問題をどう解決するか、です」

「さようですな。原因が分かっても解決出来ねば意味がない。して、御使い殿には何か良い案がおありか?」

「はい。その前に問題を整理しようと思うのですがよろしいですか?」


周りをぐるっと見渡して、集まっているみんなの顔を確認する。

よし。さっきの話のお陰で、俺の話を聞く耳を十分に持ってくれているみたいだ。


「1つ目は世界樹の地下が魔物によって侵略されている問題。2つ目は弱ってしまった世界樹の問題。3つ目はエルフの森全体に瘴気が蔓延している問題。そして最後に里の子供たちの問題です」

「子供たちの問題ですと!?」


指折り数えて行くと、それまでうんうん頷いていたのに、子供たちの所で飛び上がった。

そうか、やっぱり気が付いて無かったのか。


「あ、あの。子供たちの問題とは一体……」

「怒らないで聞いてほしいのですが、私が里に着く前に若者の武装集団に会いました」

「なな、なんですと!!」

「あ、それはグラウ老師が収めてくれたので、今は脇に置いておいてください。問題はですね。その時の応対が余りにもお粗末というか馬鹿過ぎたんですよ」

「……うむ、確かに」

「里の入口から神社に来るまでに見た人達も、最初はこんなものかなと思ったのですが、今思い返すと雰囲気が悪すぎた気もしてます」

「あ、そう言われてみれば」


グラウ老師がうんうん頷いている。

ララにも心当たりがあるみたいだ。

それを横目に話を続ける。


「俺たちは里に来る途中、魔物化した動物を何匹も見てきました。恐らく瘴気を取り込んだ影響で変質してしまったのでしょう。なら一番瘴気が濃いこの里の住人が影響を受けていても不思議ではありません」

「確かに、最近里の中で口論がするものが増えておるの」

「ベル達も自警団を名乗ってはいますが、ただ暴れたいだけ、とも言えますしな」


他の人たちも口々に心当たりを話している。

ベルと呼ばれている少年たちも、思考が短絡的だったり、俺がララ達から離れても救いに行く素振りも見せなかったり、あんなに弱かったのは瘴気に毒されていたからなんだろうな。


「あ、あの子らが弱くて馬鹿なのは元からじゃよ。根はやさしい子達だったが」


長老の1人がため息交じりにそう言った。

あ、そうなのね。


「さて、そんな訳で、一つ一つの問題に対策を取って行こうと思います」

「うむ、聞かせてもらおう」

「まず初めに、世界樹の地下の問題です。魔物は虫っぽい外見と行動をしていました。その事から、殺虫剤のようなものが効果があるかもしれないのですが、心当たりはありませんか?」

「殺虫剤……我らは虫も動物も自然の一部として共存しておりますからな。そう言ったものはなかなか」

「……あ、グダネ草はどうかしら。殺せたりはしないけど、虫よけにはなるはずよ」


ララのお母さんが、そう提案してくれる。


「なるほど。それは魔物を排除した後に植えると効果的かもしれないですね。

そうなると、ふむ……ちょっと友人の商人にも聞いてみましょうか。彼女なら世界中のものを見て回っているので、良いアイディアが有るかもしれません。ちょっと待ってください」


そう断りを入れて、エリーに念話を送ってみる。


『エリー聞こえる?』

『え、え!?はい、この声はジンさんですか?え、いまどこに居るんですか?』


何となくきょろきょろしている雰囲気が伝わってくる。


『ああ。ごめん。これは念話っていうスキルで、遠くに居る人に声を届けるものなんだ。俺はいま、エルフの森に来てるんだ』

『そうなんですね。エルフの森って、人はなかなか入れないって聞いてますけど、流石ジンさんですね』

『まあ、色々あってな。でさ、ちょっと相談があるんだが、今良いか?』

『あ、はい。大丈夫ですよ。何ですか?』

『害虫の駆除に効く殺虫剤か植物に心当たりは無いか。出来るだけ強力な奴がいいんだが』

『えーっと、そうですね……。あ、オニクイソウっていう食虫植物などはいかがでしょう。ゴキブリでもムカデでもガブッと食べてくれるそうですよ。私の今いる所なら比較的簡単に手に入ると思います』


食虫植物か。その考えは無かったが、魔物化したダニにも有効だろうか。

試しに品種改良しつつ育成してみるか?幸いエルフの植物魔法があるから、上手く行けば時間短縮も出来るだろう。


『分かった。じゃあそれを今すぐ集められるだけ手に入れてくれ。その後、こっちまで来れるか?』

『エルフの森ですか。そうですね……3日後の昼頃には外縁部まで行けると思います』

『なら外縁部のハーフエルフの村で合流しよう。上手く行けば、俺の名前を出してくれれば、すんなり受け入れてくれると思う』

『はい、わかりました』


念話を切って、結果を待っているみんなに向き直る。


「友人が食虫植物を手配してくれることになりました。流石に魔物用ではないので、植物魔法を使って品種改良しようと思います」

「ふむ。良いですな。毒を使えば結果的に大地を蝕みますが、特殊な植物ということであれば、我らでも何とか扱えるかもしれん」

「そう言えば、御使い様は植物魔法も使えるのですかな?世界樹の地下に植えるのであれば必要かと思われますが」

「あー、今は使えません。なので後で使い方を教えて下さい」


そうか。確かに大量に要るだろうし、植木鉢で育てるって訳にもいかないか。

まあ、基礎スキルのお陰か、竜の山でも意外と簡単にスキルを覚えられたし、大丈夫だろう。


「ではこれで一旦最初の問題は植物が届くのを待つということで、2つ目と3つ目の問題に移りましょう」

「世界樹と森の復興ですな。これはこれまで通り巫女の一家による祈りで行えるとも思うが」

「ただそれだと時間が掛かるでしょうな」

「確かに。世界樹1つでも大変だが、森全域となると何十年かかるか」

「そうですね。俺としては、里の住人全員の力を合わせて一気に改善した方が良いと思うのですが如何でしょう」

「ふむ、確かにそれが出来れば理想的だが、エルフとは言っても森の浄化が出来るのは一部に過ぎんぞ」

「あのぉ」


と、そのときルゥが恐る恐る手を上げた。


「何か良い案があるのかな?」

「えっと、お祭りなんて、どうかなって思って。昔は何年かに1回やってたっておじいちゃんに聞いたんだけど」

「ふむ、確かに里の住人全員が参加はするが」

「しかし、今の里の状態で祭など、皆が動くとは思えん」

「それに祭が森の復興とどう結びつくのか」

「……いえ、やりましょう。ルゥ、良い案ですよ。ありがとう」

「っ、えへへっ」


長老たちが否定的な声を上げる中、ルゥのおばあちゃんが賛同してくれた。

祭か。神楽とか奉納祭、感謝祭なんてものもある。

確かにそれなら、森の瘴気を払う一助にはなりそうだ。


「祭によって森の活性化を促し、参加した人たちの活気を世界樹に奉納出来れば、かなりの効果が見込めるでしょう」

「……ふむ、そうじゃな。それならば、個々人の能力の心配もないか」

「祭のやり方などについては、巫女の方々や長老たちならご存知ですね。ひとまず1週間後~2週間後の開催を目安に準備をお願いします」

「うむ」

「分かりました」


ルゥのおばあちゃんの情報により、皆が納得してくれた。


「最後に、里の住人の問題ですが、これはララのお母さん、リウマリアさんの手を借りて、健康診断と銘を打って全員の治療を行ってしまいましょう」

「え、あの。私にそこまでの力はございませんが」

「そこは俺がサポートするので大丈夫です。要は、俺が治療する、といっても皆信用してくれないですが、巫女として活躍していたリウさんなら皆が安心して受けてくれる、というのが大事なんです」

「なるほど。それでしたら頑張ってみます」

「はい。それでは皆さん、よろしくお願いします」


詳しい内容を詰めると、皆慌ただしく動き始めた。

長老の多くは祭と健康診断についての連絡およびその準備に取り掛かり、巫女一家も祭の内容の打ち合わせを行い、グラウ老師には俺に植物魔法の伝授をお願いした。


さ、これから忙しくなるぞ。



力のある大人に比べて、少年たちが馬鹿だったのには理由がありそうで無かった。

久しぶりのエリー。ジンと別れてからも行商人として急成長を遂げています。

……あ、バカウマを忘れてた。


########


健康診断と祭に、にわかに活気づくエルフの里。

そんな中、ジンは植物魔法の習得をし、エリーとの再会を果たす。


次回:動き出したエルフの里


みんなどんどん先に進んでいます。


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