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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第3章:世界探訪「エルフと世界樹編」
27/63

地下の恐怖

よろしくお願いします。

今回、若干グロ注意です。

虫が苦手な方、チョコミントが好きな方はご注意下さい。

世界樹の魔法で地下に転移する。

いや、転移というより、ゲートを潜った感じだな。


ザワザワザワザワッ!!

「!!?」


移動が終わった瞬間、得たいの知れない悪寒に襲われて防御障壁を全力で展開する。


ザワザワザワザワッ!!

ザワザワザワザワッ!!


暗闇の中、俺が張った障壁の周りを何かが動いているようだ。

幸い、そんなに力はないのか障壁が破られる心配は無いが、暗すぎて何がいるのか分からないな。

そう思って、明かりの魔法を使ったのが大失敗だった。


「うっ!」


見えたのはテカテカと光を反射する外殻と無数の足と触角だった。

暗いと思ったのはそれがびっしりと障壁の周りを埋め尽くしてるからだ。

全長50cm前後のその虫は……蜘蛛?蟻?ゴキブリ?いや、どれとも違うな。写真とかでは良く見たことがある気がするんだけど。

……そうか!!ダニだ。って、分かっても嬉しくないけど。

まあ気色悪いし、ひとまず手当たり次第、潰していくか。

風魔法でかまいたちを作って、全方位に撃ち出す。

もう狙いなんて付けなくても撃てば当たる。


ズバッ、グシャ、バキッ、ベチャッ、ドバドバドバッ!!


うわぁ、これは失敗したかも。

俺自身は障壁のお陰で何ともないけど、辺り一面虫汁と虫の破片だらけになってしまった。

まるで腐ったチョコミ○トだ。うぐっ、口に出したら今後食べられなくなりそうだな。

そして虫汁が地面に吸い込まれ……って、それ不味いだろ。

地面が腐食してるし、吸い込まれた先がエルフの森だったら、森全体の土と水が汚染される。

もしかしたら、それが原因で森の動物達が魔物化したのかもな。

そうすると、無闇に殺すのは無しか。焼いても変なガスが出そうだしな。

少しだけ広がった視界から見えたのは、巨大な鍾乳洞のような空間で、ぼんやりと明るい。

天井からは何本も巨大な根が地面に向けて突き出ているのだが、ボロボロだ。

魔物たちの動きを見るに、どうやら体液で腐食させて齧り付いているようだ。

なるほど。世界樹の不調の原因はこれもあるのだろう。

それにしても酷い数のダニだな。地面も壁も天井までもびっしりだ。

これじゃあ1匹ずつ相手にしていてはキリが無いな。


『世界樹、聞こえますか?』

『はい、ジン様。何か分かりましたか?』

『それが地下は大量の毒虫で汚染、というか、侵食されています。あとあなたの根もそいつらに傷つけられているようですね』

『そんな!!あの、ジン様、そちらに蜘蛛の姿をした守護者様はいらっしゃいますか?』

『守護者……それってもしかして、掃除人と同じような蜘蛛の姿の魔物ですか?』

『はい!そうです』

『……いえ。残念ながら、それらしい影は見当たりません。ダニっぽい魔物ばかりですね』

『そう……ですか』


どうやら外縁部の掃除人と同じように、この地下にも守り手がいてくれたんだな。

寿命かやられてしまったのか、それ以外の理由かは分からないけど、そのせいでこのダニが増殖してしまったというのが事の顛末のようだ。

じゃあ代わりの守り手を用意しないといけないのかもしれないな。

と。それより、まずは今いるのを何とかしないとな。

えっと……虫、虫か。


『世界樹。あなたは寒さに強いでしょうか。もし今俺が居るところに大寒波が来ても大丈夫ですか?』

『だいかんぱ?えっと、はい。多分大丈夫だと思います』

『分かりました。もしキツそうだったら言ってください』


そう伝えて、魔法を風から氷と冷気に変更する。

氷の槍や針を作って撃ちまくる。今度は打ち抜いたところが凍り付くことで体液が飛び散ることなく地面に落ちる。

さらに空間全体の気温を一気に下げていく。

さぁっと魔物たちが逃げていく。一部は壁の亀裂に潜り込むが、逃げ切れないものは次々と凍りついていく。

よし、虫なら寒さに弱いだろうと予想したけど、その通りだったな。

これで少しは時間が稼げるだろう。


冷気魔法が維持されるように調整して、一旦地上に戻る。

地上の澱みは大分安定しているようだ。よかった。

そうして周囲を伺っていると30代くらいの男性が声を掛けてきた。


「戻られましたか御使い様」

「あなたは?あと俺は御使いではないです」

「これは失礼しました、ジン様。私はララ達の父でグリスと申します。この里の若長を務めております」

「そうでしたか。若長というのは?」

「言ってしまえば若い衆の取り纏めのようなものですよ。エルフは寿命が長いですから、100年くらいの単位でまとめ役が居るのです」

「なるほど、そう言うことですか」

「今日は里の代表の一人として、また、一人の父としてお礼を申し上げにきました。娘たちを救って頂き、さらには里までお救い頂き、ありがとうございます」

「いえ、ララ達については、ほとんど成り行きのようなものですから。

それよりも、です。里はまだ救われていませんよ。その事で、巫女の皆さんとこの里の代表の方々に伝えなければならないことがあります。その方々を呼んできては貰えないでしょうか」

「分かりました。では、ジン様は神社にてお待ちください。ララ達もそこに居るはずです」


そう言って里の代表たちに声を掛けに行ってくれた。

俺も肉体的にはそうでもないけど、精神的に大分疲れたので神社で一休みさせてもらおう。


「おかえりなさいませ。ジン様。お陰様で瘴気の発生は大分収まったようです」

「おかえりなさい、ジン様。ひとまずお茶でも飲んで一息ついて下さい」

「ありがとう、ララ。それと皆さんにお伝えしなければならないことがあります。それもあって、ララのお父さんに長老たちを呼んできてもらっています」


30分くらいまったりとお茶を堪能させてもらった頃、グリスさんが10人の男性を連れてやってきた。

そのうちの一人はあの時のグラウ老師だ。


「お待たせしました。今動ける長老たちを呼んできました」

「この地の存命に関わる問題が起きていると聞きましたが、いったい」

「ほほぉ。あなたが我らエルフの聖域へと招かれた御使い様ですか」

「見たところ普通の人間にも見えますが、はてさて」

「能力はそれなりと言った所でしょうかな」


壮年に差し掛かった人達をまずは全員部屋に入れて車座に座る。

じろじろと見られるのは仕方ないとしてだ。

さっき聞き捨てならない言葉が一つあったな。


「あの、先程、聖域と仰られましたか?」

「さよう。世界樹の御許は我らエルフの聖域じゃ。我らは死した後、世界樹の御許にて眠りに就くのです」

「そう、でしたか。それでは先に訂正しておきますが、俺が向かったのは聖域とは別の場所です」

「別の場所ですと?そんな話は聞いたこともないが」

「俺が行ったのは、世界樹の根が伸びる地下空洞でした。今回呼んだのはそこで見たものをお伝えする為です」

「ふむ……何を、見てこられたのですか?」

「夥しい数の小型の魔物の群れと、それに侵された世界樹の根と大地です」

「な、なんですと!?」

「では、世界樹が弱っているのも、この地に瘴気が満ちるようになったのも」

「恐らくその魔物のせいでしょう。そこに比べれば地上はかなり瘴気が浄化されていることが分かります」


そう伝えると、長老たちの何人かはがっくりとうなだれてしまった。

衝撃が強かっただろうか、とも思ったがそれとはまた別の理由だったようだ。


「わし等はてっきり、巫女が祈りを疎かにしたせいで、世界樹が力を失ったのではないかとばかり考え、巫女の一族に辛く当たってしまった。そうではなかったのだな。歴代の巫女は、魔物に傷つけられた世界樹を救おうと尽力してくれていたのだな」

「全くだ、目の前の事にばかり目を向けて、責任の所在ばかりを求めておった。巫女の一族にはつらい思いをさせてしまったな。申し訳ない」

「もっと原因を追究していけば、ここまでひどい状況になる前に改善できたかも知れぬのにな」

「この事実、早く他の者たちにも伝えてやらねばな。いやしかし、本当に何という体たらくだ」


そうして謝罪合戦のような、反省合戦のようなものが始まってしまうのだった


植物を侵す虫、という事で幾つか候補がありましたが、ダニに軍配が上がりました。

我が家でもダニ用掃除機が頑張ってくれています。


########


エルフの里の危機を再認識して困惑する長老衆。

山積する問題は果たして解決できるのか。


次回:対策会議


若者の柔軟な思考とそれを受け入れる大人の器が大切です。

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