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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第3章:世界探訪「エルフと世界樹編」
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萎れた世界樹

よろしくお願いします。

最近名前がいっぱいでどうしようって状態です。どこかで整理せねば。

グラウ老師について里にたどり着く。

やはりというか、より一層空気が澱んでいるな。

ただ、ララ達には意外だったらしく、酷く落ち込んでいるようだ。

そこに里の大人達が姿を現した。


「お前達、一体どこをほっつき歩いていた」

「早く祈祷場に戻れ!」

「お前達が居なくなったせいでどれだけ俺達が辛い目にあってると思ってるんだ」


口々にララとルゥに苦情を述べていく。

言葉だけで石とかは飛んで来ないのはまだマシと考えるべきなのかもしれないな。

グラウ老師はどこ吹く風でそのまま進むので、俺達も続いていく。

ララがどこか期待した眼差しで俺をチラ見してくるが、


「ララ」

「はい」

「俺はこの里ではただの部外者だ。この里の仕来たりなんて知らないし、部外者の俺が、勝手な良識に基づいてこの里をどうこうする気はないからな」

「うっ、はい」

「ええ、それがよろしいでしょうな」


グラウ老師からのお墨付きも得れたが、この里の問題に俺が首を突っ込むべきではない。


「俺がするのはあくまでこの森が発している救援依頼を達成することと、ついでに友人の悩みを解決することくらいだ」

「……え、それじゃあ、ジン様は我々を救ってくださるのですね」

「その辺りは状況を確認してからだ」


そうして連れてこられたのは、神社だった。

その鳥居の前でグラウ老師が止まって俺たちに道を空ける。


「お客人、私の案内はここまでです。どうか巫女様方と世界樹をよろしくお願いいたします」

「?グラウ老師は入らないのですか?」

「申し訳ない。老いたこの身ではこの先に向かうことも困難なのです」


言われて鳥居の先を見据える。といっても、結界が張ってあるらしく中の様子は分からない。

逆に言えば、結界を張らないといけないくらいの状況だって事なのかもしれない。

ものは試しと、まずは俺から入ってみる。


ブワッ!!


くっ。なるほど、さっきまでとは比べ物にならない澱み具合だ。確かにこれは体の弱い人はそれだけで倒れそうだな。

これはララやルゥもきつそうだ。なので、ふたりには少し待ってもらって、プライベートルームから黒い卵を取り出す。


「済まないが、また頼むな」


そう声を掛けながら、全身で周囲の澱みを取り込んで右手から卵へと送り込むと、卵は美味しそうに澱みだったエネルギーを食べていく。

ほんと、この卵が孵ったら暗黒龍とかが誕生するんじゃないかってくらい澱みとか呪いとか負のエネルギーを吸収してくれる。

一応プライベートルームの中にいる間は俺の魔力も送り続けているし、そっちも美味しそうに食べてくれるので、暴走だけはしないと信じている。

そうして10分もした頃には結界の外と同じくらいには澱みが薄くなってきた。

いったん鳥居の外に出るとグラウ老師は居なくなっていた。なんでも若い衆の教育に向かったらしい。

なので3人で神社に入っていく。

祭壇の間に行くと、ララ達が大人になったらこうなのかなって思える女性が2人居た。多分ララのお母さんとおばあちゃんだろう。


「おばあ様、お母様。ただいま帰りました」

「あ、あの。飛び出していってごめんなさい」


最後が逃げ出した手前、ルゥは叱られるの覚悟でびくびくしていたけれど、そんなルゥをお母さんがやさしく抱きしめていた。


「よく無事で帰ってきてくれました。人間に攫われたと聞いた時は、もう二度と会えないと覚悟していました」

「ララも。よくぞ無事にルゥを救い出して帰ってきてくれましたね。あなたは私たちの自慢です」

「いえ、すべてはこちらにいらっしゃる、ジン様のお陰なんです」

「そうですよ、お母様、おばあ様。今この地の瘴気が薄まったのも、ジン様が手を打ってくださったからなんですよ」


そうララ達が俺を紹介してくれると、すごい勢いでふたりが俺の事を拝み始めた。ってもしかして、またこのパターンなのか。


「これはまさか、神の御使い様でしょうか。孫たちがお世話になりました」

「神の御使い様。この地の瘴気を祓って頂き、ありがとうございました。正直、もう私たちの力では抑えることも儘ならず、身命結界を張るしかないかと半ば諦めていたところでした」

「身命結界ってそんな!?」


聞けば身命結界というのは、人柱、つまり命そのものを糧として結界を張るものらしい。

そうか、ルゥの方は分かりやすく貞操の危機だから急いだけど、こっちもギリギリだったんだな。

それよりもだ。


「あの、その神の御使い様っていうのは誤解なのでやめて欲しいです。俺はここではない馬鹿な国の巫女に召喚されてきただけの人間です。確かに少し他人とは異なる特殊スキルを持っていて、それで澱みも何とか出来ましたが、神の御使いでも何でもないですから。普通にジンと呼んでください」

「……そうですか。ジン様がそう言うのであれば。申し遅れましたが私はララ達の母のリウマリアです」

「ララ達の祖母のロムフィーユです。ジン様、どうかそのお力で世界樹をお救い頂けないでしょうか。ごほっ、ごほっ」


挨拶の途中でおばあさんの方が咳き込んでしまった。

俺は急ぎその背中をさすってやりながら手当てを行う。

これは……全身を澱みに侵されているな。


「ロムさん。体が澱みに侵されているようですね。治療してしまうので、少しだけそのままでいてください」

「え、いえ。いくらジン様でも、そんなことは無理ですよ」

「まあまあ。騙されたと思って体を楽にしていてください」


そうしてドラゴンの卵の時と同様に清浄な魔力を送りつつ澱んだ魔力を放出させていく。

さすが長年巫女として頑張ってきただけのことはあって、魔力保有量が高い。

それでも何とか、全身の魔力を綺麗になるまで循環させてあげると、20歳くらい若返ってしまった。

若返ったというより、こっちが本来の姿だったんだろうな。


「リウさんもきっと体に澱みが溜まってますよね。同じように浄化してしまいましょう」

「は、はい。よろしくお願いいたします」


若干緊張した面持ちのリウさんの背中に手を当てて、同じように魔力を循環させてあげると、リウさんも10歳くらい若返って、ぱっと見、ララのお姉さんにしか見えない。


「ジン様、親子ともども救って頂き何とお礼を言ったらよいか」

「このご恩は必ずや返させて頂きますので、私たちに出来ることなら何なりと仰ってくださいね」


なんかついこの前も同じようなやり取りをした気がするな。

と、思ったところで、また少しずつ周囲の澱みが濃くなってきた。


「ジン様。本来であればゆっくりおもてなししたい所なのですが、ご覧の通り、私たちが抑えていないと、途端にこの地に瘴気があふれてしまうのです。

ララとルゥは私を手伝って。リウ、ジン様に詳しい説明をして世界樹にご案内して差し上げて」

「はい、お母様。ララ、ルゥ。こちらは頼みます」

「「はい!!」」

「さ、ジン様はこちらへ。先に世界樹を見て頂いた方が説明が早いと思いますので」


リウさんに連れられて神社の裏手に回ると、世界樹の名の示す通り巨大な樹木が……萎れていた。

人間で言えば瀕死か重病人って言葉がよく似合いそうな、そんな姿だった。


「これが……世界樹ですか。何というかその」

「はい。ご覧の通り、酷く弱っているのです。そのため、本来であればこの地に流れる魔素を浄化し森中へと放出していたのですが、浄化どころかより澱んだ状態で外へと放出されているような状態なのです」

「弱っている原因は分からないのですか?」

「それが長老に確認してもこのような事は初めてらしく、皆目見当も付かないのです」

「そっか。なら本人に聞くしかないな」

「本人、ですか?」

「そう。ちょっと行ってきますね」


一言断ってから、世界樹の中心へと向かう。

でかすぎて目の前に見えるのに中心の幹までは距離があるな。

でもお陰で分かったこともある。

地面がおかしい。根もズタズタになってるんじゃないだろうか。

瘴気も世界樹からというより、その地面の下から出ているんじゃないのか?

それもこれも世界樹に聞けば分かるか。


よし、ここが中心、かな。

一番太くて丈夫そうな幹に両手を当てる。

とくんっ、とくんって生きてる音がする。

良かった。あとは治療をしながら話しかけてみようかな。


「(こんにちは)」

「(……)」

「(こんにちは、聞こえますか)」

「(……あなたは……)」

「(初めまして、ジンと言います)」

「(……この力はあなたなのですね。とても温かい。ありがとうございます、ジン様)」


酷く弱弱しい女性の声が返ってくる。

これが恐らく世界樹、もしくはその精霊なのだろう。


「(あの、なぜこんなにも弱っておられるのですか?世界樹ってそうそう枯れるようなものではないイメージなのですが)」

「(ええ。それが私の根が何者かによって浸食されているようなのです)」

「(やはりそうでしたか。何者か、ということは病気ではなく、生き物か魔物の類なのですね)」

「(はい、もし出来ることなら見てきては頂けないでしょうか)」

「(そうしたいのは山々ですが、さすがの俺でも、地中を自由に行き来することは出来ないですよ)」

「(それが地中に特殊な空間、ダンジョンのようなものが出来てしまっているようなのです。ですので、私の力で送り届ければ後は普通の洞窟にいるようなものだと思われます)」


なるほど、ダンジョンか。それならダンジョンのボスを倒せば何とかなったりするんだろうか。

少なくとも行ってみる価値はありそうだな。


「(分かりました。それなら行ってみましょう。戻る方法はあるのですよね)」

「(はい。私とのリンクを張っておきますので、戻りたいと伝えてくださればこちらから引き揚げます)」

「(なるほど、大丈夫そうですね。それなら送ってください)」

「(はい、それではよろしくお願いいたします)」


そうして一瞬視界が光に包まれたかと思うと、俺は世界樹の前から消えるのだった。

巫女の家族はまともな人たちです。

お父さんやおじいちゃん?元気ですよ、多分。

里長として政で馬鹿ども相手に四苦八苦してます。


########


世界樹の要請を受けて、その地下ダンジョンへと足を踏み入れるジン

そこは本来であれば幻想的な世界だったはずだが

ジンを待ち受けていたのは想像を絶する恐怖であった。


次回:地下の恐怖


耐性のない方はご注意ください。

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