再びエルフの森へ
よろしくお願いします。
久しぶりにまったりした進行になりました。
夜が明けて、開門して1時間くらいが経った頃に、ララとルゥが町から出て来た。
「おはよう、2人とも」
「おはようございます。ジン様」
「おはようございます。ジンさま」
「手に持っているバスケットはお弁当か何かか?」
「はい。メルモ亭の女将さんが是非持って行ってくださいって、持たせてくれました」
言いながら持ち上げたバスケットは結構な大きさで、朝の早い時間から、用意してくれていたのだろう。
そうか、昨夜会った時も、他のハーフエルフの子達を開放して回ってるって言ったら、凄く感謝されたしな。
メルモちゃんの母親だけあってやさしい人だった。
「あの、ジン様。これからエルフの森へ向かうのですよね。歩いて向かわれるのですか?」
「いや、時間も勿体ないし、飛んでいくよ。あ、2人はプライベートルームに入ってて貰った方がいいな」
「飛んでいく?」
「プライベートルーム??」
あ、そっか。その辺りの話ってしてなかったっけ。まあ、見た方が早いな。
プライベートルームのゲートを作って皆で中に入る。
「ふわぁ、何これ」
「すごい、さっきまで外に居たのに突然建物の中に居るわ」
玄関とでも言うべき小部屋を抜けて大広間に行くと、今回救助したハーフエルフの子達が思い思いに雑魚寝していた。
そうか、床はカーペットみたいに柔らかくしておいたけど、毛布とかは無いもんな。機会があったらそう言った備品も準備するかな。
「みんな、おはよう」
「あ、ジン様。おはようございます」
「「「おはようございます!!」」」
おっと、さすがに100人くらい居るから伝わってくるエネルギーも凄いな。
それを見てララとルゥも目を丸くしているし。
「あの、ジン様。この方々はいったい」
「町の中に居た人攫いや奴隷商人に掴まってたハーフエルフの子達だ。昨日の内に町中を回ってここに避難してもらってたんだ」
「なるほど、確かにそれなら私達は居ない方が都合がよさそうですね」
「私達では、どう頑張っても目立ちますからね」
「そう言う事。で、移動についてだけど、ここの出入り口って常に俺のそばなんだ。だから俺が外で移動すれば、みんなはここに居ながらにして楽に移動が出来るって寸法だ。俺一人なら飛行スキルで移動すれば長距離もすぐだからな」
「ジンさまって飛行魔法まで使えるんですね。私なんて20年練習してもダメだったのに」
・・・・・・ん?20年?
「そう言えばエルフってやっぱり人間と比べて寿命が長かったり成長が遅かったりするのか?」
「はい、寿命で言えば10倍以上、大人になるまでの成長速度は逆に人間の半分くらいです。大人になってからは成長はかなりゆっくりになります」
ということは、ララで30年くらいは生きてて、ルゥでも俺と同じくらい生きてる計算になるのか。
「じゃあ、ララの事を妹分って言ってたけど、実は姉貴分の方が正しいんだな」
「いえいえいえ。見た目的にも私の方が小さいですし、ジン様は頼りになりますから今のままでお願いします」
「そうか、わかった。まぁ、ともかくそんなに時間も掛からないと思うから、ふたりはここに居て貰って良いかな。昼頃には森に着くと思う」
「はい、分かりました」
そうして俺一人外に出る。
じゃあ、さくっと移動しますか。あ、ついでだから途中でみんなの食事用に獲物でも狩りながら行くか。
3時間後。
無事にエルフの森のそばの草原に辿り着いたので、みんなにプライベートルームから外に出てもらう。
「皆すまんな、あんな窮屈なところに押し込んで」
「いえ、凄く快適でした。とても清浄な空気で満たされていて、まるで聖地のようでした」
「はい。プライベートルームというのは、どこもあのようなものなのでしょうか」
「あ、それは部屋の中央に置いておいた、黒い卵のお陰だな。あれが周囲の澱みとかを全部吸収してくれるからだと思う」
そう、竜の山で偶然出来てしまった、黒い卵は全然孵る様子がないので、プライベートルームの中に安置してある。
手を当てるとすやすや寝ている雰囲気が伝わってくるので、多分元気なんだとは思う。
ただ、なぜかさっきの特性があるので、先日の呪いの残滓とか街に溜まっていた澱みなんかはどんどん吸収してくれる。
「さ、おなかが空いたと思って途中で肉を狩って来たから、村に帰る前に食べて行ってくれ。あ、料理とか獲物の解体とか得意な子が居たら手伝ってほしい」
何人かの女の子が解体に名乗り出てくれたので、ナイフを渡して獲物を指し示すと……あれ、フリーズしたぞ。
「どうかしたか?」
「あの、ジン様。これ、キングボアですよね。そっちはグラップラビットじゃないですか?」
視線の先には巨大な猪と、筋骨隆々のウサギが居る。そうか、そんな名前だったのか。
アイテム空間に放り込んだだけで詳しく見てなかった。
「足りないか?もしくは、美味しくないのか?」
「いえ、足りないどころか1匹でお釣が来ます。それに、町で売ればかなりの値段がする極上肉ですよ!?」
「そうなのか。運が良かったな。で、どうやって解体するのがいいんだ?俺は我流だから上手な手順があるなら教えてくれ」
はぁーーって長いため息をつかれた後、教えてもらった手順でテキパキと解体する。
なるほど、こうすると綺麗に皮が剥げて内臓を痛めずに済むのか。
切り出した肉は別の子に焼きやすいサイズに切って貰って、石魔法と火魔法で作った即席のコンロで焼いていってもらう。
味付けは塩と幾つかの香草だ。普段は香草を使わないそうだ。この世界の食事事情が心配だな。
今度コショウとかの香辛料も探しておこう。
焼き上がったのは、一口サイズに切り分けて皆に食べてもら・・・・・・あ、俺が最初の一口なんだな。
なに、こういうのはトップか狩って来た人が最初に食べるもの?そうか。
まだ解体の途中で手が血だらけだったので、ララに「あーん」してもらう。うん、良い焼き加減だ。
コショウが無かったのが悔やまれるな。いや、お前たちのせいじゃないから気にするな。
いや、みんなして「あーん」しに来なくて良いから。自分達で食べなさい。
そこからは肉食系女子の会というか、それまでお淑やかな、大人しい感じの子たちも、肉を前に興奮していた。
そうか、こんなに肉好きならもっと狩ってお土産に持たせてあげれば良かったか。
あ、いや。それすると、道中で魔物に狙われる危険性が上がるかな。
宿の女将さんからもらったバスケットはサンドウィッチの詰め合わせだったが、数が全員分は無かったので俺らが優先して食べさせてもらった。
そうして1時間ほど焼肉パーティーを楽しんだ後、ハーフエルフたちは自分達の村に帰ることになった。
「ジン様。この度はお助けいただきありがとうございました。今の私たちでは何もお返し出来るものがございませんが、今後何かお役に立てることがあれば何でも致します」
何でも、と言われても成り行きで助けただけだしな。今はして欲しいこととかも思い付かないな。
「なら、そうだな。今後俺の友人がこの地を訪れた時に、快く迎えてやってくれ。今で言うとエリーって人間の女の子が行商人をしているから、この地方にも来るかもしれない」
「エリー様ですね。承知いたしました」
「あと北の竜の山の竜人族や先日のドラゴンも友人だけど、さすがにそれは君たちの元には行かないかな」
「ド、ドラゴンですか!? さすがジン様です」
しまった、ドラゴンは余計だったかもしれない。
みんなして俺のことをキラキラした目で拝みだしたし。
「さあ。俺はこれからララ達の故郷に行くから、みんなも気をつけて帰れよ」
「はい、ありがとうございました」
「「「ありがとうございました!!」」」
出身の村ごとに分かれて帰って行くハーフエルフたちを見送った後、残った俺とララとルゥも森の奥へと入っていった。
松坂牛の更に4段階くらい上のお肉のイメージ。・・・・・・松坂牛食べたこと無いけど。
黒い卵は条件を満たさないと孵らない予定です。別に忘れていたわけではないです。
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ハーフエルフたちと別れ、エルフの森深くへと進むジン一行。
ララとルゥを連れているジンを見てエルフの戦士達が人攫いの仲間と誤解してしまい、
戦闘状態に突入する。
次回:エルフの里の攻防
命が惜しかったら後ろの女を置いていけっ!(違)




