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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第2章:世界探訪「ハーフエルフ編」
23/63

エルフの消えた日

よろしくお願いします。

なぜかどんどん主人公が悪の道を進んでいく。

フシギダナー

「さて、まずは先日エルフの少女を買い取ったそうだな。会わせてもらおうか」

「くっ、なぜ貴様がそれを」

「いや、普通に有名な話だからな」


そう言いながら3人で部屋を出る。


「あ、そうそう。変な事をすると真っ先に飛ぶのはお前の首だからそのつもりでな。それとこの後に伝えるはずの内容を聞かずに終わると、最悪この町が滅ぼされるから気をつけろよ」

「なに!?貴様一体どこの国の者だ」

「今はどこの国にも所属はしてないさ。それより、キビキビ案内しろ」

「くっ」


そうしてたどり着いた部屋は、応接室か。

成金主義の品の悪い部屋の一角に、これでもかと言うくらいフリルを付けた白とピンクの衣装を着せられた、エルフの女の子が立たされていた。


「ルゥ!!?」


その姿を見た瞬間、ララが名前を呼びながら抱きつくが、表情一つ変えずに何の反応も返さない。


「どうしたの?お姉ちゃんよ。お願い、返事をして!!」

「無駄だ。それはもう動きはせん。人形に感情や言葉は不要だろう。魔法と呪具で、生命活動に必要なもの以外は消してある」


領主はどかっとソファに座りながら、そう言い放つ。

そうか、生きてはいるのか。なら何とかなるかな。

ルゥと呼ばれた女の子の頭に手を置いてみる。なるほど、確かに生きているな。

肉体と魂、両方を雁字搦めに拘束するように魔法の鎖が張り巡らされているのが手を伝わって感じ取れた。

あ、これ、無理に破壊すると呪われるタイプみたいだな。

それなら鎖を全部綺麗に取り除いてから……!!


パリンッ


と小気味良い音がする感じで全ての拘束を解除し、残滓をプライベートルームに放り込む。

よし、無事に解呪は成功したはずだ。

ルゥの目にみるみる生気が戻っていく。


「ルゥ?」

「あ、お姉ちゃん!!」


意識がハッキリしたところで、姉妹で抱き合っている。

うんうん、こっちの方がさっきより何十倍も素敵な光景だよな。


「馬鹿な。あの呪具は一度使えば死ぬまで外せないはず。貴様一体何者だ」

「それはさっき答えた。それよりもだ」


言いながら、奴の前にあるテーブルに手を突く。


バキッ!!


あれ、真っ二つに壊れたし。ぼろいなぁ。

ただそれを見て領主が青ざめてるから、まあ結果オーライか。


「お前、手を出しちゃいけないものに手を出したみたいだな」

「な、何のことだ」

「あのふたり。彼女らはハーフエルフじゃなくてエルフだ。しかも高位のな。それが誘拐されたもんだから、今エルフの国は誘拐した人間の国に攻め込む準備の真っ最中だ。俺はその姉の方に依頼を受けて、攫われた妹を救出して戦争を回避させる為に来たんだ」


という筋書だ。最初の所以外は適当に今考えただけだ。

それでも、あながち間違っては居ないはずだ。


「本来ならこのままふたりを帰せば丸く収まるはずだったんだが、この町ってエルフの森に対して絶賛ハーフエルフ狩りをしてるだろ。現に町にハーフエルフを売り物にしている奴隷は何か所もあるし、俺らと行き違いで数百人の奴隷商達がエルフの森に向ったそうじゃないか。これって歴とした侵略行為だよな」


それを聞いた領主は青ざめながらも、必死に反論の言葉を探しているようだ。


「だ、だが、待て。森から出たエルフが我々人間に敵う訳が無いだろう。もしこの町を攻めてみろ。そんなことしたら全面戦争だ。人間の国全体がエルフ討伐に乗り出すぞ!」

「エルフだけだったらそうかも知れないな」

「な、何が言いたい」

「今回の件、竜人族やひいては竜の山に住むドラゴンにまで伝わってるぞ」

「何を馬鹿な。竜の山からこの町までどれほどの距離があると思っている。よしんば伝わっていても、こんな事にドラゴンが動く訳が無い」

「そう思うなら窓の外を見てみるんだな」


ちょうどその時、慌ただしい足音と共に扉がノックされ、兵士と思われる男が報告していく。


「りょりょ、領主様。大変です。北の竜の山の方角からドラゴンがこちらに向かって飛んできております!!

このままでは後数分で、この町の上空を通過するものと思われます!!」

「通過、してくれると良いけどね」


報告に合わせて、そう言ってやると、ガタガタ震えながらこっちに振り返った。


「頼む。あのドラゴンを何とかしてくれ。お前なら何とかなるんじゃないのか。なあ頼む。いう事なら何でも聞く!」

「確かに俺らの無事な姿を見せれば何もせずに帰ってくれるだろうな」

「な、なら!!」

「俺からの要求は、今後一切の奴隷の禁止とエルフおよびハーフエルフへ危害を加える事の禁止。これを明日の朝一に布告して町中に徹底させることだ」

「わ、分かった。明日の朝、必ずやる。だから早く!!」


そうこうしている間にドラゴンは町の外周に辿り着き、この町がターゲットだと言うようにぐるっと旋回している。


「ララ、ルゥ、こっちへ」

「は、はい」


ふたりを呼び寄せて窓からドラゴンに手を振る。


ギャオオォォ!!


それを見てドラゴンが領主館に当たらないように軽くブレスを吐くと、北の山へと帰って行った。

領主は、ブレスで白目をむいて倒れているな。放っておこう。

俺たちはまだ混乱する領主館を堂々と正門から出て宿へと帰って行った。



宿に帰ってから改めて無事を喜びあう二人だったが、ひとしきり済んだ後、居住まいを正して俺に向き直った。


「ジンさま、お助け頂きありがとうございます。あの館に連れていかれてから、呪いにより暗い闇の底に囚われておりましたが、そこから救って頂きどうお礼をすればよいか。

まさに雲間から太陽の光が差し込んだかのような神々しい体験でございました」

「ジン様。今回の事、本当にありがとうございました。こうして無事に妹を助け出せたのも、全てジン様のお陰です。この後はエルフの森の私たちの住処にいらしてください。一族皆で歓迎させて頂きます」


それを聞いて、元々はエルフの森の異変調査に向おうと思っていたのを思い出した。

渡りに船だし、そのお誘いに乗っておこうかな。


「じゃあ、折角なのでふたりの住処にお邪魔するよ。ただ、その前にもう一つの用事も済ませてからだけどな」

「それは私達にもお手伝い出来る事でしょうか」

「いや、残念だけど、今回に関しては足手まといにしかならないな」

「そうですか」


若干、しゅんとしてしまったけど、こればっかりは仕方がない。


「だから二人は今晩はこの宿に泊まって、明日の朝一で南の門から街の外に出ておいてくれ。その際に、宿のチェックアウトも頼む」

「はい、分かりました」

「じゃあ、俺は用事を済ませに行ってくるよ」

「「はい、行ってらっしゃい(ませ)」」


ふたりに見送られて宿を出る。

さて、最初の行先はグリランドに連れて行ってもらった酒場だな。

行くと店内にはマスターが一人いるっきりだった。

俺を見ても慌てない所を見ると、既に情報が届いているのかもしれない。


「いらっしゃい。無事に帰って来たという事は、妹さんは無事に助けられたようですね。

あとはドラゴン絡み、ですか?」

「あーそっか。ドラゴンね。それもあったな」

「ドラゴンの襲来をついでの様に言うんですね」

「実際ついでだからな。それでだ、聞きたい情報が一つと教えられるネタが一つ。等価交換と行きたいんだがどうだろう」

「あなたが聞きたい情報を私が持っている保証はありませんが?」


マスターが適当なドリンクを俺に出して、新しいグラスを磨きながらこちらを伺ってくる。

興味ありってことかな。


「構わないさ。知れたらラッキーくらいの気持ちだ。で、どうする?」

「そうですね。あなたのネタを先に開示して頂けるのであればよろしいですよ」

「ああ。俺からのネタは、さっきのドラゴンな、先日領主が買い取ったっていうエルフ娘が原因で飛んできてたんだ」


ピタッとグラスを磨く手が止まった。


「……その情報の信頼性、もしくは裏付け出来るものはありますか?」

「信頼性で言えば100%だ。裏付けって意味では明日の朝一で領主から奴隷禁止令が布告されるから、それで確証を得てくれ」

「なるほど。100%ですか。分かりました、信じましょう。それで、お聞きしたい情報とは何ですか?」

「この町の全ての奴隷となっているハーフエルフの所在が知りたい。売られる前のものも売られた後のものもだ」

「それを知ってどうするおつもりで?」

「それは聞かぬが花ってやつだな」

「……そうですか。分かりました。ですが、私の知る情報が全てとは限りませんのでそこはご了承下さい」

「ああ、全部分かるとは思ってないさ。目安になればいいな、くらいの感覚だ」

「分かりました。少々お待ちください」


カウンターの裏に行って、しばらくしてから持ってきたのは、この町の地図だった。

その上に何か所か、×印と○印を記入していく。


「この×印の場所が奴隷商人の店とその奴隷用倉庫です。○印はそこから買われていった所です」


かなり町中にばらけているのが分かった。これは一晩で回るのは骨だな。まあやるしかないか。


「分かりやすい情報をありがとう。これはおまけの話だが、今回のドラゴンの件、元はと言えばエルフの森へ奴隷狩りを行った結果、ドラゴンへ救援要請が飛んだらしい」

「それはつまり」

「全部新しい領主の失態って事だな。じゃあな、もう会う事も無いかもしれないが達者でな」

「はい、ジン様もご武運を」


さて、出来れば誰にも知られずにこっそりやろうと思ったんだけど、こうもバラバラだと時間的に無理だな。

なら正面から堂々とやりますか。

まずはエルフの森の掃除人がやっていたように町中に自分の魔力を薄く広げて探索に活用する。

そうしながら、酒場のマスターから貰った地図を参考に端から順に奴隷商人の店を回っていく。


「いらっしゃいませ。紹介状はお持ちですか?」

「いや、済まないが持っていないな。それと、問答をする時間が勿体なんだ。済まないな」

「は?うぐっ」


応対に出てきてくれた人に軽く当身を入れて寝かせて中に入る。

警備員や職員が何人かいるが、同じように当身を入れて寝ていてもらう。

そして奴隷部屋に行き、エルフを見つけては鎖を切って手当てして水と食料を少し渡して一息つくのを待つ。


「君たちを開放しに来た。エルフの森か、街の外で良ければ連れ出してやる」


そう伝えてプライベートルームへ入っててもらう。

かなりの大人数になりそうだから、プライベートルームも体育館くらいの大部屋を作っておいた。

……温泉かプールも今度作っておくかな。ま、それは後で良いか。

そうやって次々と奴隷商人の店を回っていく。

幸いどの店も人の出入りが少ないお陰で騒ぎになることはなかった。

まあ、ドラゴンが襲来した日にわざわざ奴隷を買いに来る奴もいないか。

エルフ以外の奴隷については、誘拐されて来た人達については、回復させ牢を壊しておいた。

流石に全員の面倒は見れないからな。

あとは途中でパン屋や古着屋を回って食料と服を補充してプライベートルームの子達に渡しておく。


一通り回った後は、深夜になるのを待って、主に貴族っぽい大き目の個人宅に潜入する。

こちらは奴隷として既に買われていったハーフエルフ達だ。残念だが人間の奴隷も何人か居そうだが区別が難しいので放置。

このハーフエルフ達の大半が、ルゥ程ではないけど隷属魔法が掛けられていたので解除してあげる。

その上でエルフの森に帰りたいかを聞き、帰りたい人だけプライベートルームに入って貰う。

3割くらいの人はそこに残る事を選択していた。きっと買われたといっても、買い主が良い人だったのだろう。

余談だが、メルモ亭のメルモの母親もハーフエルフだった。ちょっとだけ話を聞くと奴隷として売られそうになった所を今の主人に助けられたらしい。その縁もあって主人とは相思相愛で、もちろん残留組だ。

だからララの事を見て、一目でエルフだって分かったんだな。


結局、町全体を回り終わる頃には夜が明け始めていた。


飛んで来たドラゴンは、念話で呼ばれたゲイルです。

ルゥの見た目年齢は8歳くらい、ララは15歳くらいです。

あと情報の信頼性100%って自分がやりましたって暗に言ってます。


########


無事にララの妹ルゥとハーフエルフの子供たちの救出に成功したジン達。

後は助け出した子供たちを村に帰せば1つ目の目標は完了だ。

別れ際、今回の礼をと言われるが・・・・・・。


次回:再びエルフの森へ。


プライベートルームに100人の女の子。ハーレム王に俺はな……ならないのね。はい。

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