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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第2章:世界探訪「ハーフエルフ編」
20/63

ハーフエルフ達との約束

よろしくお願いします。

もっと話しに厚みが欲しいと思う今日この頃です。

さて、この一帯で手当てで治せるのはここまでか。

流石に灰になったものはどうしようもないので、大地に還ったと思うことにしよう。

そして森に侵入していた人間達の気配は無くなっていた。

同時に周囲の霧も晴れたので、掃除も終わったと言うことなのだろう。

俺も一度ララ達の所へ戻るか。……って、囲まれたな。


シュタッ!!


目の前に降り立ったのは、胴体だけで幅1mほどある蜘蛛だった。

殺気はないな。気配からして彼らが掃除人の正体だろう。

蜘蛛が益虫だっていうのは良く聞く話だ。


「シュー(ジン殿、ご助力感謝する)」

「いえ。俺が手を出さなくてもあなた方だけで十分撃退出来たようですね」

「(謙遜は不要だ。我々だけではかの者らを排除するまでにより多くの被害を出していただろう)」

「そう言ってもらえると無理に首を突っ込んだ甲斐があります」

「(それに森の治療まで行われるとは、驚愕に値する。この一帯だけ聖域化されているのを見れば貴殿の人となりがよく分かるというもの)」

「聖域化?」


言われて周囲を見れば、焼け野原になっていた地面から早くも若芽が顔を出したり、心なしか空気も澄んでいる気がする。

参ったな。またやりすぎたらしい。まいっか。


「それよりも、まだ当分の間、人間たちがこの森を荒らしに来る可能性が高いんですが」

「(害敵の排除は元より我々の役目だ。任せてもらおう)」

「あと出来ることならこの森に住むハーフエルフ達も守ってあげて欲しい」

「(委細承知。貴殿は為すべき事を為されるが良かろう)」

「わかりました。じゃあ後は頼みます」


これでこっちで出来ることは終わったし、みんなの所に戻るか。

えっと、馬車は・・・・・・よし、無事みたいだな。


「ただいま」

「おかえりなさい、ジンさん。ご無事で何よりです」


馬車まで戻るとララが出迎えてくれた。


「こっちは問題なかった?」

「はい、大丈夫です。霧が晴れたということは、掃除が終わったのでしょうか」

「そうだな。もう森に入っても大丈夫だから、みんなを帰してあげようと思う」

「分かりました。皆さんももう自力で歩いて帰れるくらいには回復してます」


みんなに馬車から降りてもらって、もう帰れる事を伝えると口々に感謝を言ってくれた。


「ジン様。助けて頂き、ありがとうございました」

「ありがとうございました」


あ、そうだ。暴行を受けてた子も大分元気になってるし、今なら部位欠損も治せそうだな。


「傷を治してしまうから、ちょっとそのまま動かないで」

「え、あ、はい」


まだ怯えの残るその子に近づいて、潰された目と腕に手を当てる。

傷が光に包まれたかと思うと、見る見る形を変えていき、光が収まった頃には傷一つない正常な状態へと復元される。


「・・・・・・え?あぅ」

「おっと」


よろけて倒れそうになった所を支えてあげる。

どうやら部位欠損の修復は、対象者の体力と魔力を消費するらしいのだ。

別に生命に影響の出るレベルではないが、軽い立ち眩みを起こしてしまった。


「ちょっと大丈夫?」


慌てて最初に庇って立ちふさがっていたあの少女(妹らしい)が寄り添う。


「うん、ちょっと立ち眩みしただけだから。あれ?あ、嘘。目が見えるようになってる」


そう言って両手で自分の顔を触って傷がない事を確かめると、今度は両手が動くことに二重で驚いていた。

そして俺の方に詰め寄ってくる。

このパターンはまた何かやらかしたかな?


「ああああの。もしかして貴重な秘薬を使ってくださったんですか!?」

「そうですよ。部位欠損を治せるなんて、世界樹の雫とか使われたんですか!?」


……世界樹の雫、って何だろう。そう思ってララの方を振り向くと、なぜか拝まれていた。

は?なに、どういうことだ?ララ以外のハーフエルフの子達も同じ様に拝んでるし。


「えっと、ララ。拝まなくていいから説明してほしい」

「……はい。ジン様が行った行為は、神の御業とも呼ばれるものです。

部位欠損の治療は本来であれば、先程名前の挙がった世界樹の雫など、極々貴重な薬を用いた上で高位の治癒士による治療が必要です。

それをこの短期間で、何の対価も無く行える者など、神に遣わされた存在としか思えません」


いつの間にか呼び方が様付けになってるし。

そうか、だから竜人族を治療した後も『救世主様』って拝まれてたのか。

なら人前でおいそれと行うのは危険そうだな。


「あー、俺は偶然特殊なスキルを持っているだけで、神の御使いでも無ければ救世主でもないし、みんなを助けたのもただの偶然だ。なので拝む必要も無いから、ただ無事に助かった事を喜んで村に帰りなさい」


そう言ってもみんな拝むのを止めない。どうしたもんかな。


「ララ。このままだと困るんだ(・・・・)。君の口からも皆に帰るように伝えてくれないか」


察しの良いララなら、これで俺の言いたいことは分かってくれたみたいだ。

拝むのを止めて皆を誘導し始めてくれた。


「さあ、皆さん。このまま私たちでジン様を独占してはいけません。まだ世界にはジン様の助けを待っている方々がいらっしゃるのですから」


ちょっと待て、ララ。いつから俺は世界を救いに行く事になったんだ?

ただそれを聞いた子供たちは拝むのを止めてくれたので、否定もしにくいから複雑だ。

そして今度は子供たちが俺に詰め寄ってきた。


「あの、ジン様。お願いがあります。私の村で私以外にも行方不明の子が何人か居るんです。もし人間の街に行かれるのでしたら、探しては貰えないでしょうか」

「私の村もです。お願いします」

「「お願いします」」


はぁ。拝むのが、お願いモードに切り替わったか。


「分かったよ。どうせララの妹を探す手伝いはするって約束してるしな。人間の町に行ったら、攫われた子達は極力助けるようにするよ。ただ、必ずしも見つかるとは限らないし、全員を救える保障もないからな」

「はい、それで構いません。よろしくお願いします」

「「お願いします」」


俺が頷くのを見て、ようやく皆解散して各々の村に帰っていった。

後には疲れた顔の俺と、満足げなララだけが残った。


「何か急にやることが多くなったというか、責任が増えた気がするよ」

「大丈夫です。ジン様ならやり遂げられますよ」

「それは全然否定してくれてないよな。まったく、俺はもう少し気楽に生きたいんだが」

「……ぼそっ(それは無理というものです)」

「ん?何か言った?」

「いえいえ。さ、ジン様。こんなところに留まっていないで、町に向かいましょう」


どことなく言いくるめられた気もするけど。まあ、なる様になるか。


若干力に振り回される主人公。

さらに助けた人たちにも振り回される主人公。

まあ、女に振り回されるのはいつものことです。


#########


人間の町へと潜入するジンとララ。

どこか剣呑とした雰囲気が漂う町中で一人の人物と再開する。


次回:人間の町へ


ここに来て漸く冒険者ギルド。長かったな。



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