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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 序章:ここはVR?それとも異世界?
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広がる不審感

よろしくお願いします。

まだもう少し不定期投稿になります。

と、まるで定期投稿が当たり前のような発言をしてみました。

そうして森の中を続く道を歩きながら、馬にこの世界について知っていることを聞いてみる。

って、傍から見たら馬に話しかけてる寂しい奴、もしくは頭のいっちゃった奴に見えそうだな。まあいいか、誰も見てないし。


「(とは言っても、あっしの知ってる事なんてたかが知れてますよ。

普段は時々夜中に馬車を引いて隣町に移動するくらいしか役目を与えられてなかったですし。

何かあったかといえば、冬が明けてから何度か今回みたいにこの森の所へ来るようになったくらいっすね)」


なるほど。

つまり俺が体験した召喚は、あれ1回じゃなくて何度か行われているってことか。

さらに言うと、馬車から降りたくだりも、同じようにやってきたってシナリオなんだろう。

……そいつらが無事に逃げおおせたとしたら、もっとあの騎士たちの動きも違ったはずだから、まあそういう事なんだろう。

中々に胸糞の悪くなる話だ。運営にクレームの一つでも入れたくなるな。


そう思ってた時、ふとよく分からない感覚を覚えた。

いや、よく知っているんだがVRではありえないはずの感覚だ。そう、これは尿意だ。


「馬、すまんがちょっと待っててくれ」


そう言って、近くの茂みで用を足す。

やはりおかしい。さっきの死体といい、この尿意といい。VRでは再現されない部分のはずなんだ。

死体は言わずもがなだし、尿意は昔、リアルでの『おねしょ』に繋がった事件が多数あった為に、無効化された感覚の一つだ。

それがあるという事は、まさかそう言う事なのか?

そう考えていると森の奥から何かの気配が多数近づいてきているのを感じた。

まずいな。

こんな森から出てくるのは少なくとも味方ではないだろう。


「おい、馬。森の中から何かが近づいてきてる。捕まる前に走って逃げるぞ」

「(了解っす)」


そう言って走り出そうとしたところで道の先に、ゴブリンっぽい魔物が多数出てくる。

こういう所はテンプレっぽいのがまた面倒くさい。

いっそのこと、もっと非常識なのが出てきてくれれば踏ん切りがつくのに。


「グギャギャッ(獲物だ。やるぞ野郎ども)」

「ゲギャゲギャッ(うっしゃー、今日はご馳走だ)」


あー、ゴブリンの言葉も分かるのね。嬉しくないけど。

そう言ってる間に後ろも横も塞がれてしまう。意外と集団行動を取れるようだ。なら大将が居るな。きっと最初にしゃべったあいつだ。

そう考えながらアイテム空間から、さっき騎士から奪った剣を取り出して一気に袈裟切りにする。


「ゲギャッ、ゲギャギャ(お頭!! くそ。やるぞみんな)」


そう言ってバラバラに攻撃を仕掛けてくるゴブリン達の相手をする。

所詮ゴブリンとはいえ、50匹近くに囲まれているので手間取る。

もちろん馬の方にもゴブリンは攻撃を仕掛けてくる。


「(うわっ、兄貴。ちょっ、助けてくれっす!)」


そう言いながらうろうろしている馬。ゴブリンの攻撃がしょぼいお陰でやられてはいないが、少しずつダメージを受けている。

さすがに2m近い馬の全方位を守ることは難しい。だから俺は馬に言ってやる。


「おい、バカ馬っ!お前の足は飾りか?走って魔物の群れの外に出るなり、足蹴にして撃退するなりしろ。ある程度の露払いはしてやるが、自衛もせずにのうのうと居て助けて貰えると思うな」

「(そ、そんな~)」

「泣き言は聞かないよ。で、どうするんだ。3秒で決めろ」

「(う、くそ!もうどうにでもなれ)」


そう言って吹っ切れたのか、急に暴れだす馬。後ろ足で蹴り飛ばしたり前足で踏みつけたり、駆け込んでの蹴り込みを繰り出す。

身長1m程度のゴブリン相手なのもあって、文字通りあっさりと蹴散らし始める。

なんだ、やればできるじゃないか。じゃあ、こっちも気合入れますか。


そうして10分と経たずに襲ってきたゴブリンは全滅した。

うん、全滅したのは良いんだけど、辺り一面ゴブリンの死体だらけになってる。

やっぱり都合よく消えてくれたりはしないんだな。


「なあ、馬。ゴブリンの死体ってこのまま放置で大丈夫だろうか。時間が経ったら消えてくれたりするのか?」

「(死体が消える?なんすかそれ。聞いたことがないっす。

まあ、ここに置いて行ったら、他の魔物が食ってくれるとは思いやすが、前に騎士様たちは倒した魔物はわざわざ炎の魔法で燃やしてたっすよ)」


あー、やっぱりそうか。燃やすのは腐敗して病気の温床になるのを防いだり、他の魔物の繁殖を抑える目的だろうか。

そう言えば、俺は魔法は使えるのか?スキル基礎の中に魔法も含めれていると良いんだが。

物は試しでやってみるか。

VR歴10年は伊達じゃないから、こういった時のイメージは完璧だ。呪文とかが必要かもしれないけど、まずは無しで行ってみよう。厨二くさいのを言うのも恥ずかしいしな。

それに道場長曰く、気と魔力は似たようなものだって言ってた。魔法はそれをイメージで具現化したものだとも。

まあ、あの道場長ならリアルで魔法の一つや二つ使えそうだけど。

っと、それはともかく。


まずは軽く目を閉じて意識を体の内側に向け、呼吸と共に流れる力を感じ取る。

ああ、大丈夫だ。この世界でも同じように感じれる。

丹田を中心に体の中を駆け巡るエネルギー、これが気もしくは魔力だ。その流れを意識的に早くしたり濃くしたりして、扱い方を体得していく。

よし、次はそれを右手に集めて、掌の上に燃え盛る炎をイメージする。

目を開ければ無事に炎が出来上がっていた。後はこれを死体に投げつければ行けそうだな。

そう思った時、馬から怯えた声が届く。


「(だ、旦那?あっしは、少し離れておきますね)」


少しと言いつつ思いっきり離れる馬。

まあいいか。そう思いながらゴブリンの死体に向けて炎を飛ばす。

へぇ、自分のイメージ通りに飛んでいくんだな。

じゃあ、何度も飛ばすのは面倒なので、死体全体に広がるようにイメージすれば……お、いい感じだ。

3分もすれば無事にすべての死体が燃え尽きて、後には赤い石ころ、多分魔石かな?が落ちていたので拾ってアイテム空間に入れておく。


『魔石ランク1。低レベルの魔物の体内で生成される魔力の結晶』


予想通りか。

じゃあ、これからも素材になりそうにない魔物は燃やして魔石を回収しておくことにしよう。

下手に解体して血まみれになるのも嫌だしな。

そうして魔石の回収も終わった所で馬も帰ってくる。

って、心なしか、最初の頃より毛の艶が良くなっている気がするが。


「なあ、馬。お前って自分のステータスは見れるのか?なんとなく最初会った時と違うんだが」

「(見れるっすよ。えっと、あ。レベルが上がってクラスも戦馬に変わってるっす。って、ああ!!)」

「ん?どうした」

「(あっしの名前が『バカウマ』になってるっすよ)」


……そういえば、さっき「ばか馬」って呼びかけたな。その時に名前だと判断されたのか。


「嫌なら変えれば良いんじゃないか?」

「(え、じゃあ何かいい名前付けてほしいっす)」

「……じゃあ、サクラとかサイボシとかはどうだ?」

「(ぶるっ。何か嫌な予感がしたっす。うぅ。もうバカウマでいいす)」

「そうか。じゃあ気を取り直して先に進もうか」


そうして改めて次の村に向けて歩を進めて行った。って、次の街まで歩いて1日以上掛かるんだね。


ステータスに比べて主人公が強いのは、その内説明します。

ちなみに、桜肉=馬肉でサイボシ=馬肉ジャーキーです。


間違った次回予告:

さらばバカウマ。お前は中々にうまかった。

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