また馬車を拾ったけど・・・・・・
よろしくお願いします。
ここから新章になります。
ただ、エルフ編になるか、その前段階になるかは検討中。
竜の山を出て、南へと向かう。
やはり飛行魔法を教わっておいて良かった。
向かう先は文字通り、山あり谷ありで地上を進もうとするとかなりの大回りが予想できた。
後は奥地であればあるほど、時々強い魔物の気配もする。
多分戦っても勝てるとは思うが、無駄に殺生をする必要も無いだろう。
ちなみに、今の俺のステータスはこんな感じだ。
「
名前:ジン・バンリ
種族:異界の民
クラス:救命士
レベル:12
HP:51/51
MP:88/88
STR:56
INT:88
VIT:51
DEX:76
AGI:54
MND:90
LCK:75
一般スキル:
基礎8、浄化2、救命5、創造3、飛行、念話、
竜呼吸2、空間掌握1、共鳴2
特殊スキル:
アイテム空間、固有空間、自動翻訳、手当て
」
ゲイル達に鍛えられたお陰でレベル以外はかなり上がっている。
パラメータはやはり魔法寄りになっているようだ。力が足りない分は技でカバーするしかないな。
後はこの世界の基礎知識を学んだお陰か、基礎スキルが一気に上がっている。
救命は竜人族の治療をしていたら自然と上がった。
あ、そうそう。さらにありがたい事に、救命と創造のコラボで部位欠損まで治せるようになった。
竜呼吸っていうのは、身体強化のドラゴン版みたいなもので、ブレスが放てる訳ではない。
魔力を全身に巡らせる事で剣も矢も弾けるようになるようだ。さすがに鱗が生えたりはしないが。
そんなことを考えていたら、大分目的地が近くなってきた。
ドラゴン達の話によると、エルフは御多分に漏れず排他的らしい。
更に言うと人間とは敵対関係にあるらしい。
だからまっすぐ行っても受け入れられる可能性はかなり低い。
どうしたものかな。
……ん?
眼下の街道を2台の馬車が結構なスピードで走っている。両サイドに護衛が8人、馬で並走しているからそれなりの商隊だな。
一瞬、スピードを出してるからまた魔物に襲われているのかな、とも思ったが、別にそうでもないようだ。
その代わり荷台から嫌な感じがするな。ちょっと中身を確認させてもらうか。
俺は隠密魔法を発動させながら後ろの馬車の荷台の屋根へと着地する。よし、無事に気付かれずに済んだようだ。
後ろの扉は……錠がかかってるな。ますます怪しい。
音を立てないように屋根の一部を切り取って、中を覗く。
「「……、……!!」」
狭い荷台に女の子ばかり10人程、両手足を縛られていた。
何人かの耳が長い事からエルフなんだろうと思われる。
あー、そうか。この世界って奴隷はありなんだな。
俺個人としては、借金奴隷と犯罪奴隷までは許さなくもないけど、見た感じこれは人攫いだ。
ならどうするか、なんて決まっている。
御者は間違いなく黒だろうし、護衛も黒の可能性が高い。というか、ここで出会ったのが運の尽きと思ってもらおう。
俺は素早く風魔法でかまいたちを作り、護衛の首を切断していく。切れ味が良かったお陰で、一瞬胴体に乗っかったままだ。御者に気付かれにくくて助かる。
続いて後ろの馬車の御者に一撃を入れて沈め、馬に止まるように指示する。こういう時、馬とも言葉が通じるのは便利で助かる。
同様に前の馬車も御者台の人たちには消えてもらった。
最後に身元が分かるものなどを回収して、死体を火魔法で焼却して終了。
この間、3分と掛かってない。
やばいな、クラスが暗殺者でもやって行けそうだ。
まあ、それはともかく、馬車を街道から離れた草原へと移動させる。
前の馬車の荷台は食料品や旅の道具、後は紙束(借用書の類いか)だったので、まとめてアイテム空間に入れておく。馬車を引いていた馬には、良かったらここに居て欲しいと伝えると、了承してくれた。
問題は後ろの馬車か。
荷台の扉を開けると一斉に、怯えた目、憎しみの籠った目、絶望した目などが向けられた。
共鳴スキルのお陰か視線だけで感情がある程度伝わってくる。まぁ、誘拐されて来たと考えればこの反応も納得だ。
視線すら動かせないくらい衰弱している人が4人か。これは説明より先に治療だな。
そう考えながら、まずは荷台全体に治癒魔法と浄化魔法を掛けていく。
あとは手足の縄を切りながら状態をチェック。
……!?ひとり酷い暴行を受けたらしく、身動きひとつせずに倒れている。
左目と右腕が潰されている。見せしめの意味もあったのかもしれないが、これはひどいな。
近づくと、別の女の子がその子を庇うように立ち塞がった。見た目が似ているから姉妹なのかもしれない。
「大丈夫、治療するだけだ」
「…………」
そう伝えても1分くらい睨んでいたけど、倒れてる女の子が小さく呻いたのを聞いて、その場を空けてくれた。
手を当てて状態を確認する。……衰弱が酷いな。これでは治癒魔法も受け付けないか。
まずは魔力を彼女用に変換して送り届けて体力と気力の回復を図る。
こういう所でも竜の山での経験が役に立って助かる。
「……ん」
「無理に動かなくていい。助けが来たからな」
「う……ん」
状態が落ち着いて眠りに就いたところで手を離す。
後は時間を掛けて送った魔力が全身に浸透するまで待つ必要がありそうだ。
他の3人にも同様に魔力を送って寝かせておく。こちらは劣悪な環境と飢餓による衰弱だな。
まだ身動きの取れるくらい元気な6人には、狭いから一度馬車を降りてもらう。あ、さっきの子は倒れている子に付き添うみたいだな。なら中の子達を任せるか。
全員が程度の差はあるけど飢餓状態だったので、水魔法で飲み水を出したり、前の荷台にあった食料からすぐに食べられる木の実を中心に取り出して渡す。
……まだ警戒されているか。まぁ当たり前だな。
「水と食べ物をここに置いておくから食べてくれ」
そう伝えて、俺は少し離れて火を起こす事にした。
寝ている子達が起きたら食べられるように、おかゆかスープを作ってやろう。
子供たちは俺を意識しつつも、水や木の実の匂いを嗅いだ後、問題なさそうと判断して漸く口にし始める。
そして一度食べ始めると堰を切ったように食べ続けて、置いた分が直ぐになくなってしまった。
すると年長の子がひとり、おずおずとこちらにやって来た。
「あの……」
「ん?あれじゃ足りなかったか。こっちのスープも飲むか?」
「あ、はい。頂きます。って、そうじゃなくて。あの、なぜ私たちを助けてくれたんですか?私達はその……」
「成り行きだ」
多分「エルフなのに」と続きそうな所を遮って答えると、変なものを見たような目をされた。
「え、それだけ、ですか?」
「ああ、それだけだ。移動中にたまたまこの馬車を見つけて、人攫いか奴隷商人だって思ったから襲撃した。
ん?こうやって聞くとやってることは山賊と一緒かもしれないな」
そう言って笑うと、幾分警戒は薄れたが、相変わらず変わったものを見る目で俺を見てくる。
失礼な。まあ、自分でも変な行動だとは思うが。
「ほら、他にないなら、スープが冷める前にみんなのところに持っていってくれ。
あと、馬車の中の子達が起きたら飲ませてやってくれ。今日一日はここで休憩する予定だから」
そう伝えると、こくんと頷いて、スープの入った鍋をみんなの所に運んでいった。
しばらくして、馬車の中の子達も起きて無事にスープを飲んでくれたようなので、改めて話をしてみる。
「さて、どういう経緯であの馬車に乗っていたのかは知らないが、みんな帰る場所はあるのか?」
そう聞くと、顔を見合わせて頷いた後、さっきスープを取りに来た女の子が代表して話してくれた。
「私たちの多くはエルフの森の外縁部にある村で暮らしていました。耳を見て分かると思いますが、大半がハーフエルフです。
みんな、村から少しはなれた所で木の実などを採集していた所を襲われ、連れ去られてきました」
「それって良くあることなのか?」
「……はい、どうも人間たちにはハーフエルフを同じ人間だと見なしていないようなのです」
「竜人族に比べたら、普通に少し耳が長いだけの人にしか見えないけどな。
じゃあここで自分たちの村に帰っていいよって送り出すと、最悪別の人攫いに攫われる訳か」
「その可能性はあると思います」
なるほど。森の澱みは分からないけど、西に広がっていたのはこれが原因かもしれない。
ならこの問題もどうにかして解決してやらないといけないな。
作者は双方合意の上での奴隷制度のみ許容しております。
なので人攫いや誘拐による奴隷商人は抹殺対象です。
あと、パラメータはレベルとは別に鍛錬やスキル獲得でも上昇します。
レベルは戦闘経験のみで上昇します。
そして今回、次回予告を予告編っぽくしてみます。
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偶然、人攫いの手からハーフエルフを助けたジン。
人攫いが横行していると聞き、激怒した彼は人攫いの撲滅に乗り出す。
最初のターゲットは現在森に侵入しているやつらだ。
次回:森の掃除人
森を汚すゴミ共には彼らが掃除にやってくる。




