娘が出来ました
よろしくお願いします。
コボルドの話が娘の話に完全敗北しました。
そうして4時間ほど魔素を送り込んだ後、小休憩ついでにゲイルからスキルなどを教えて貰う。
「まあ、お前の場合、まず必要なのはプライベートルームだな。お前、アイテムボックスは持っているか?無いなら余ってるのを渡すが」
「えっと、特殊スキルに『アイテム空間』ってのがあるけど、それで代用できるか?」
「『アイテム空間』?聞いたことは無いが、性能は……おいおい、随分ぶっ飛んでるじゃねえか。異界のスキルってのはすげえな。ま、いいや。ボックスの性能によって、全部を使うか一部を使うかが変わるんだが、これは一部を使うしかねえな。
と偉そうなことを言ってるが、プライベートルームを作るのに必要なのは明確なイメージと魔力だけだ。アイテムを収納するのと同じ要領で、自分の魔力を流し込むんだ。その魔力が部屋を形成するようにイメージして固定化させる。で、後はそこに扉を作る。な、簡単だろ?」
創造魔法?って創造スキルとは別かな。ダメで元々、試してみればいいか。
えっと、アイテム空間に部屋……元の世界の部屋でいいか。それをイメージして創造っと。
……これでいいのか?あとは扉というか、ゲートだな。ふむ、こうかな。
試しに出来たゲートをくぐってみる。よし、無事に部屋になっているみたいだ。
外に続く窓や扉は今はまだ開かないし、窓の外は真っ暗なのはまぁ仕方がないだろう。
後はこれで風呂とトイレが使えれば、ってそうだ。
俺はプライベートルームから出て、ゲイルに相談を……って何か驚いてるな。
「おい、ジン。今、プライベートルームに入って行ったのか?」
「ああ。無事に出来たみたいだ」
「はぁぁ。お前は相変わらず規格外だな」
「そうかな。まあ、それよりもだ、ゲイル。例のトイレに設置する魔法装置はどうすればいい?」
「あぁ。それなら後で用意してやる」
その時、フレイさんが慌てた感じでやってきた。
「ジン様。あの、卵がカタカタ動いてるの!!こんな現象聞いたことが無いわ。もしかして、もう生まれるのかしら」
辺りを見れば、まだ霧は晴れていない。卵が孵るにはまだ時間が掛かるはずだ。
「分からない。でも兎に角、卵の所に行こう。ゲイル、ありがとう。魔法装置もよろしくな」
「ああ」
フレイさんを連れて卵の元へ戻ると、確かにカタカタ音を立てている。
フレイさんが抱き着いてみても、卵が静まることは無かった。
俺も卵に触れてみる。
ゴトゴトゴトッ!(ごは~ん、どこ~)
あれま。これはあれか。味を占めたって奴かな。
トントンッ♪(ただいま)
コトンッ♪(あ、ごはん~)
いや、俺はご飯じゃないんだが。
まぁカタカタ言ってたのは止まったけど。
ふとフレイさんと目が合う。そうだよな。卵の親はフレイさんだよな。
「フレイさん、手を」
「え?あ、はい」
俺は右手を卵に、左手はフレイさんに。フレイさんは左手を卵に、右手を俺と繋ぐ。
そうして、魔力の環を形成する。
トクンッ♪(あれ、だれかいる?)
トントントンッ♪(うん、君のお母様だよ)
ころっ♪(おかあさま?)
「えっ?えっ??ジン様、これってもしかして」
「フレイさんにも聞こえるんだね。そう、卵の、正確には卵の中の子の声だよ」
「そ、それなら私の声も聞こえるのかしら」
「どうだろう。やってみようか。フレイさん、右手から魔力を出しながら卵に触ってみてください」
「えっと、こうかしら」
繋いだ手を卵に当てて、フレイさんから送られてきた魔力を卵に送る。
さわさわっ(こんにちは。あなたのお母様ですよ)
トクンッ♪(おかあさま♪なんだか、すごくあんしんする~)
良かった。無事に伝わってるみたいだ。
トクンッ、トクンッ♪(じゃあ、こっちは、えっと……そうだ、おとうさまだ)
へ!?俺がお父様?
ま、まあ、育ての親だと言えばそうなのか?でも、フレイさんが怒るだろうな。
と思ったけど、フレイさんは……あれ、ちょっと嬉しそうに見えるな。
コロコロコロッ(おとうさまや、おかあさまはずっといっしょにはいれないの?)
トントンッ(そうだね。もう少ししてそこから出られる様になったら、もっと一緒に居られるよ)
コロン♪(うん、じゃあまってる~)
最後にポンポンと卵にタッチしてから離れる。
フレイさんはまだ卵に手をついたままボーっとしている。
多分自分の子供と会話が出来て感極まってるんだろうな。今はそっとしておこう。
そこから2日程、ゲイルからスキルを教わるのと、フレイさんと一緒に卵に魔素を送るのを繰り返す。
そして、俺が卵の部屋に来てから3日目にして、とうとう卵に罅が入り、上半分が砕け散ると、フレイさんによく似た女の子が顔をのぞかせた。
って、初見の刷り込みは大事だよな。そう思ってフレイさんの背中を押して、女の子に対面させる。
「あ、おかあさま。おはようございます」
「はい、おはよう」
よし、無事にフレイさんの事は母親と認識してくれたみたいだ。
と、続いて俺の方を覗き込んできた。
「ああ!!おとうさまだ。いつもおいしいごはんをありがとう」
「うん、どういたしまして」
なるほど。魔素を送っていたから俺とフレイさんの事は認識できるんだな。
何はともあれ、新しい命の誕生をみんなで祝う事にした。とは言ってもまだ、コボルド達に卵が孵った事は知られたくないので、静かめにだけど。
そうしてお祝いが終わった後、卵の事を察知される前に、次の作戦に移る事になった。
「ゼンさん、偽卵の準備は出来ていますか?」
「おう。この通りだ。どこからどう見てもドラゴンの卵にしか見えんだろう。あと、要望通りブレス攻撃に1回は耐えられるようにしたのと、自爆装置も付けておいたぞ」
「ありがとうございます。確かに、俺だと触らないと分からないですね。ゲイルの方は?スキル鍛錬にも付き合ってもらったから大変だったとは思うけど、どうかな」
「バッチリだ。あと、調べる途中で人間達のアジトも見つけておいた。多分作戦を開始したら向こうからも接触があるだろう」
「そうだね。敵か味方かは早めに判断しておいた方が良いからね。セイルさん、コボルドの動きはどうですか?」
「先日のダメージがまだ残っているみたいで、すぐに向こうから襲撃を掛けてくるって事は無さそうだよ」
「そうですか。それでは作戦の決行は明日。派手に行きましょう」
「「おう!!」」
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「という流れで、コボルドと悪い冒険者を退治することが出来たんだよ」
「へぇ。じゃあいまごろにせたまごは……」
「自爆装置で爆発してるんじゃないかな」
「そっか~。ならあんしんだね」
ふふふって笑ってるけど人ひとりが死んでるんだけど、知らない他人でしかも悪者ならそんなものか。
情操教育とかはフレイさんに任せよう。ドラゴンにはドラゴンの常識があるだろうし。
丁度そこに、フレイさんからお声が掛かる。
「レン~。そろそろ鍛錬の時間ですよ~」
「はーい、おかあさま♪ じゃあ、おとうさま、いってきます」
「ああ、頑張っておいで」
手を振りながらフレイさんの所に向かう娘のレンを見送る。
これで無事に問題は解決したし、俺は俺で、ゲイルから新しいスキルでも習いに行くかな。
本当は逃走劇を別視点から書こうかと考えていましたが、
娘の可愛さにすっぱりと切り捨てられました。
間違いだらけの次回予告:
父さん元気で留守が良い!!(父さん涙目)




