おかしなVR空間へようこそ
新連載始めます!!
といっても、完全見切り発進。2話目以降のプロットも考えてないので、
序章の間は話の方向性が纏まらないかもしれません。
次章に行くころには多少安定しますので、それまで暖かい目で見ていただけると幸いです。
前作「VR世界は問題だらけ」もよろしくお願いします。
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「失礼します。ありがとうございました!!」
その日も入口で挨拶をして、天川道場を後にした。
俺の名前は陣 万里(じん ばんり)。
今年で20歳になるが、10歳の頃から週1日リアルで、週5日VRを使って、この道場へ通っている。今日はリアルの日だ。
VR全盛期と呼ばれるこの時代、プロスポーツ、プロゲーマーと呼ばれる職業の人はVRで鎬を削っている。
だから肉体を鍛えて何になるんだって嘲笑う人もいるが、道場長曰く、VRでも結局はリアルの身体能力が大きく影響すると言うのでこれからも続けるつもりだ。
特に健康は人生に切っても切り離せないしな。
それにしても、道場長はきっと極め過ぎて人間辞めてしまってるんじゃないだろうかって思う時がある。
今日も全く掠りもしなかったし、VR内だと平気で弓も魔法も素手で叩き落すし。
あれで本業は小説家だって言うんだから詐欺だ。
余談だけど今時代、一人暮らしの人で帰宅して何をするかと聞かれたら9割の人がVRだと答えるくらい、一般家庭にVRマシンが普及している。昔は1台50万とか言っていたらしいが、10年前に親に購入してもらった俺のVRマシンが12万円だったらしい。
帰宅した俺は、この10年で大分年季が入ってきた愛機に乗り込みVRシステムを立ち上げた。
……ジジ……ジジッ……パリンッ!
ん?何か変な音がした気がするが、特に問題もなく俺の意識はVRへと沈み込んでいった。
そして、ろうそくの明かりに照らされた薄暗い室内で目が覚める。
……おかしい。前回は確かに田舎の宿屋でログアウトしたはずだ。
こんな密閉空間でもなければ、石造りの建造物の中でもない。
考えられることと言えば、ログアウト中に宿屋に何かがあったか、まず無いとは思うがバグの類か。
何はともあれ状況確認が最優先だな。
そう思い、身体を起こす前にまずは周囲の気配を調べる。
すると、自分のすぐ近くに同じように横になっている人の気配が3。少し離れて20人くらいの集団がこちらの様子を伺っているようだ。
全く訳が分からないな。どうやったらこんな状況に追いやられるんだろうか。
まあ、考察は後にしよう。
続いてステータスを確認する。
「
名前:ジン・バンリ
種族:異界の民
クラス:フリーター
レベル:1
HP:10
MP:10
STR:10
INT:10
VIT:10
DEX:10
AGI:10
MND:10
LCK:10
一般スキル:
基礎Lv.1
特殊スキル:
アイテム空間、自動翻訳、手当て
」
ステータスは見れる、ということはVR内で確定か。
しかし、初期パラメータみたいになっているってことは、普段やっているのとは別のVRゲームって事なんだろう。
混線して別サーバに来た?ありえないとしか言えないが、多分ログインする時にマシンの様子がおかしかったから、それが影響したのかもしれない。
おっと、他の3人が気がついたみたいだ。なら俺も変に目立たないように起き上がるか。
「ん。あれ、おれはどうして寝てたんだ?」
「あー、ごめん、太陽。わたしも、寝ちゃってたみたい」
「いや、二人ともちょっと待って。おかしい。ここはいったいどこなんだ?僕達さっきまで喫茶店に居たはずじゃなかったか!?」
ふむ、俺以外の3人は中学生か高校生ってところか。それも3人とも顔見知りみたいだな。
そして辺りを見回して分かったが、石造りの地下室。さしずめ地下神殿って感じだ。それを証明するように離れたところに居る人達は騎士っぽいのが19人と巫女っぽい女性が1人。
なるほど、オープニングは異界から召喚された勇者とかそんな流れか?まるで2世代前のファンタジー設定だな。
さらに俺の考えを肯定するように、巫女っぽい女性がこちらに進み出てくる。
「突然お呼びして申し訳ございません。勇者様方。さぞ混乱されていることでしょう。ですが落ち着いて聞いてくださいませ。お三方をお呼びしたのは他でもありません。この国を、いえ世界を救って頂きたいのです。・・・・・・って、あら?4人いらっしゃる??え、どういうことかしら」
あれ、巫女さんも困惑してるし。まぁどう考えても俺がイレギュラーで紛れ込んだとしか思えない状況なんだが。それ以上に少年達が盛り上がってるな。
「うぉぉ!来た。来たーー!!ほら、聖良。やっぱり異世界だよ。召喚だよ。俺たち勇者だってよ!!」
「いや、待て太陽。まだ誘拐とかドッキリの可能性もある。いやしかし、僕らを嵌める為に、このリアリティのものを用意するというのもおかしな話だ」
「もう、太陽も晴明も落ち着いて。あっちの女の人も困ってるみたいだし、話を聞いてあげようよ」
今どき、ファンタジーもののVRってありふれてるから、そこまで興奮するものでも無いと思うんだが。
あれか。初めてVRでゲームを始めました的なノリかな。思えば俺も最初の頃はあんなだった気もするし。ただこのままだと話が進まないから、動くか。
「まあ、落ち着け少年。初めてで興奮するのは分からなくはないが、まずは事情を知ってるらしい、あの巫女さんの話を聞いてみようや」
そう言いながら少年(太陽と晴明って呼ばれてたか)の頭に手を置いて宥める。
「って、俺達だけじゃなく、おっさんも一緒に召喚されて、って、ぎゃー!」
「誰が『おっさん』だ、誰が」
おっと、いけない。思わず手に力が入ってしまった。まったく、20歳を相手におっさんは無いだろう。
まあ、お陰でこちらも向こうも落ち着く時間が取れたらしい。巫女さんが復活してきている。
「おほん。取り乱してしまい申し訳ございません。少々手違いがありまして。本来なら此度の召喚の儀で召喚できるのは3名のはずだったのです」
そう言った瞬間、ちらっと俺の方を見る巫女さん。その視線に3人の少年も気付いたらしく俺のほうを見る。だから俺の方から名乗り出ることにする。
「まあ、どう考えてもイレギュラーは俺だろうな。だから俺は一足先に抜けようと思うんだが、どうだ」
ログインしたばかりのこのVR空間にも興味はあるが、本来行くはずだったVR空間で十分満足しているので、そう申し出てログアウト手続きをする。
って、なんだ??メニューが出せない。
VRシステムのメニュー機能はユーザーの混乱を防ぐ為に共通化されている。これが壊れるなんて聞いたことが無いんだが。
だけど、俺の提案を聞いた巫女さんは何を考えたのか、急に俺の手を取って・・・・・・吹き出した。
なんなんだ一体。
「プッ。そ、そうですわね。ですが、こちらの都合で呼んだ手前、間違いだったので放り出した、では心苦しく思います。
ですので、ご迷惑をお掛けした慰謝料に金貨10枚とこの地に慣れて頂けるように当分の住居を手配させて頂きますわね」
それを受けて、後ろに控えていた騎士の一人が俺の前まで進み出て、金貨が入ってると思われる皮袋を渡してきたので、ありがたく懐に仕舞うそぶりをしてアイテム空間に仕舞う。
「ん!!」
「なにか?」
「いえ、なんでも」
「そうですか。では私がご案内しますので、付いて来て下さい」
そう言って歩き出す騎士に付いて行く。っとその前に、あの3人に一声掛けておくか。
そう思って後ろを振り向くと、巫女さんが他の3人にも握手をして、今度はニコニコというかニヤニヤしてる。
この調子ならあの3人は酷い扱いは受けないだろうし、すぐに助けに来なくても大丈夫そうだな。
「じゃあな、3人とも。縁があったらまた会おう」
そう言うと、太陽と呼ばれた少年は残念なものを見るように、晴明と呼ばれた少年は何かを考えつつ黙っていて、聖良と呼ばれた少女は不安な面持ちでこちらを眺めていた。
まあ、どんなシステムの世界かは知らないが、早々おかしなことにはならないだろう。
騎士に付いて行って外に出る。
ふむ、俺がさっきまで居たのはギリシャ宮殿みたいな建物の地下室だった訳か。直ぐ隣には城っぽい建物もあり、まあ王道ファンタジーの世界観なんだろうことが伺える。
「さあ、こちらの馬車です。早く乗ってください」
?さっきより発言が荒っぽくなった気がする。こっちが地か?
まあ今抵抗するのも意味はなさそうなので、言われた馬車に乗り込むと、すぐさま馬車は走りだした。
馬車の乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。
いや、ハッキリ言おう。ひどすぎる。最初の10分くらいはそれでも舗装された街道だったのかマシだったが、それ以降はロデオマシーンさながらの揺れ具合だ。座ると尻がやばいことになりそうだから立ってるか。
まあそれはいい。文句を言っても変わるものでもないし。
それよりも、どうもこのゲームはシリアス系というかハードモードみたいだし、この状況をどうやって乗り切るかを考えよう。
どれくらい時間があるかは分からないが、今のうちに自分のスキルをチェックしておくべきだな。
【基礎】
あらゆる物事の基礎能力の向上。
【アイテム空間】
魔核を持たない全てのものを、触れることで固有空間に収納することが可能。
収納したものは自身の半径3メートル以内に出すことが出来る。
空間内の物質は時間経過による劣化を起こさない。
【自動翻訳】
言語、非言語に関わらず、すべての生命体との意思の疎通が行える。
文字、記号についても同様。
【手当て】
触れた対象に任意の効果を与える能力。
……さて。さっきハードモードって言ったのは撤回しないといけないかもしれない。
何このチートスキル。名前だけ見るとしょぼいのに、説明を拡大解釈して良いなら、国を相手にしたって勝てる気がする。
と、そう思ってたら馬車が止まり、扉が開く。
「降りろ」
その言葉に従って降りると、そこは森の入口だった。少なくとも人が住む場所ではなさそうだ。さらに御者を含め剣を抜いた4人の騎士がこちらを見下ろしていた。
「一応聞くが、状況は理解しているか?」
聞いてきたのは声からして神殿から連れて来た人みたいだ。
「まあ、偽金貨を掴まされた時点である程度は」
そう答えると「ほう」と少しはこちらを見直してくれたみたいだ。まあ嬉しくはないけど。
ちなみに偽金貨に気付いたのはアイテム空間にしまった時。
空間内のアイテムはある程度の情報が分かるらしいのだ。
その結果、仕舞ったのは金貨ではなく、銅貨に色を塗った偽金貨だった。
表面のデザインなどがきっと金貨と銅貨で違うだろうから、見ればすぐわかるものだと思う。
さらに言えばあの時、元からこれを準備していた姿からも、あの召喚はそれなりの頻度で行われている事、行った結果が芳しくない時は、文字通り切り捨てるのだろうと確信した。
「何か姫様に遺言があるなら聞くが?」
あれ姫様だったのか。まあ、騎士を顎で使える身分なんだからそうか。
「それなら『もう少し芝居の練習はした方がいいぞ』と伝えておいてくれ。それと、これはあなた方にだけど、見逃してくれるなら、見逃すがどうする?」
そう言うと、さっきまで見下していた雰囲気が剣呑なものに変わる。
ま、格下と思ってる相手に粋がられたらそうなるか。
まあじゃあ残念だけど、手加減は無しだ。
俺は奴らが動く前におもむろに手近な一人に一歩踏み込むと同時に相手の剣を持つ手に手を添えるようにして掴んだ。
「ふっ」
小さな呼気と共に腰をひねり、掴んだ相手を一気に引き寄せる。
すると突然引っ張られるとは思ってなかったらしく簡単に体勢を崩したので、更に引き寄せて脇腹に一撃を打ち込みつつ反対側の騎士に投げつける。
「うわっ」
という声が一つ。飛んで行った側はもうしゃべることは出来ないだろう。
その間に残りのふたりに近づき喉に貫手を打ち込んで倒す。
最後に騎士を投げつけられた男も体勢が直りきる前に頭にハイキックを叩きこむ。
うん、弱い。
最初の敵だから仕方ないのかもしれないけど、1撃も反撃を受けることなく終わってしまった。
……あれ?大抵こういうゲームって、特に人型の死体はすぐに消えるのがお約束なのに、消えないな。まあ、今のうちに取れるものは取っておくか。
そう思って、武器や鎧、ついでに小銭袋なんかも回収してアイテム空間に入れてしまう。
ついでだから馬車も回収してしまおう。馬は流石にしまえないか。
「……置いていくしかないか」
「ヒヒィーーン(ひぇ!ここに置いてかれたら魔物に食われちまうっす。助けてほしいっす)」
あー、そうか。自動翻訳の効果で言葉が通じるんだな。
「じゃあ、近くの町か村までだな。さすがにずっとは面倒見れないし」
「ヒィーン(それで十分っす。恩にきるっす)」
さて、後はどっちに行けば村とかがあるかっていうと。ん?道分かるの?そうか、じゃあ、案内よろしくね。
そうして、俺は馬の案内の元、近くの村に向けて移動するのだった。
「アイテムボックスが欲しい!」ただその1点で異世界転移ものになってます。
主人公はゲームだと勘違いしてるので今は容赦がありません。
職業→クラスに変更しました。
少年3人組は後から助けます。きっと。
間違った次回予告:
殺人を犯した主人公に断罪の使者が現れる。
誰かが言った
「考えるだけならみんなやってるんだ。一歩踏み出して投稿するやつだけが評価される」
「連載するって言って後ろの扉を閉めるんだよ。そしたら書くしかないよね。目の前崖だけど」
byたてみん(ぁ
しつこいけど、
前作「VR世界は問題だらけ」もよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n3556ex/