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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある復讐者の日常

思いつきで書いてみました。

読みきりとして書こうと思っています。

読みにくい個所もあると思いますが、よろしくお願いいたします。


2018/06/12:追記しました。宜しくおねがいします。

2018/06/22:追記しました。遅くなりましたが、よろしくお願いします。

2018/07/14:追記しました。よろしくお願いします。

2018/07/18:追記しました。よろしくお願いします。

1997年8月26日、N県S市で衝撃的なニュースが流れた。

「本日未明 に、一家惨殺事件が起きました。生存者は父親のKさん(35)のみで、未だ意識不明です。また、犯人は未だ逃走中です。」

この物語は、唯一の生存者であるKさんのその後の記録である。


私が目覚めたのは 事件から1週間後の9月1日の朝でした。

目覚めて初めに目にしたものは、疲れきった母の姿でした。

母は慌ててナースコールを押し、糸を切られたあやつり人形のようにその場に崩れ、小さな声で泣いていました。

その姿をみていると医師がやって来ました。

余程急いで来たのか、息を切らせていました、

「Kさん、おはようございます。私はKさんの担当のM崎です。ご自分のお名前は分かりますか?」

「S宮 Kです。ここは一体どこですか?

なぜ私はここにいるんですか?」

私がそう答えると、その医師は

「ここは警察病院で、あなたは8月24日に運ばれてきました。理由は後々分かると思いますが、あなたは事件に巻き込まれ、今までずっと意識不明でした。目覚められてよかったです。」

初めは、M崎医師が一体何を言っているのか分からず、少々困惑したため、周りを見回すと、

妻や子供たちの姿が見えない事に気づき、

「すみません、家族はどこでしょうか。

こういう時、妻は側にいてくれていると思うのですが。

もしかして、もう夏休みは終わって、息子達の学校が始まっているのでしょうか?」

私がそういうと、突然母がまた泣き出してしまいました。

何故母が泣き出したのか分からず、困っていると、M崎医師が母に

「心配いりません。息子さんは軽い記憶消失のようです。2,3日もすれば記憶も元に戻るでしょう。」


その言葉を聞き私は何かを忘れているのだと分かり、思い出そうとするのですが、

頭の中に何か靄のようなものが掛かっているようで、すぐには思い出すことは出来ませんでした。

そして、M崎医師は

「午後から精密検査をしましょう。」

そういうと、失礼しますとM崎医師は病室を後にしました。

再び、私と母の2人になり、どうすればいいのか考えていると、

「何か食べたいものはあるかい?

未だ暫くは点滴だろうけど、今度Kが好きなものを作ってくるよ?」

「そうだなぁ...なら、久しぶりに母さんが作った里芋の煮っころがしが食べたいな。

後は、血の滴るような肉かなぁ」

「わかったわ。母さん腕によりをかけてつくるわね。

 お肉は、直ぐには食べられないと思うけど、任せて。」

そんな他愛の無い会話をしていると、突然ドアを叩く音が聞こえ、

花束を抱えて課長がわざわざ見舞いに来て下さいました。

「おぉK君、目覚めたようで本当に良かった。」

「課長、わざわざすみません。仕事にも迷惑掛けて申し訳ないです。」

「良いんだ、気にしないでくれたまえ。

 それはそうと、お見舞いの花を飾りたいのだが、花瓶などはあるかな?」

「わざわざありがとうございます。

 あとで私の方で飾らせて頂きますので、一旦預からせて頂きますね。」

「なんだか逆にお手を煩わせてしまったようで申し訳ありません。宜しくおねがいします。」

そんな会話が続き、

「そういえば、検査などしないといけないらしく、

 もう暫くお休みを頂きたいのですが、宜しいでしょうか。」

「今は会社の事なんて気にしないでいい。

 K君の担当だった仕事は皆んなで分担して何とかやっていけている。

 君はまず、自分の身体の事を気にしてあげなさい。元気になって戻ってくれれば良いんだから。」

心からの優しい言葉で、思わず涙が出そうになりました。

「ありがとうございます。直ぐにでも戻れるよう頑張ります。」


課長も帰り、夕方に母も一旦家に帰ることになりました。

そしてその夜、私は何故このような状況になっているのかをもう一度思い出そうとしました。

ですが、やはり思い出せませんでした。

私が覚えているのは、休日に家族と家で家族団欒を過ごしていたら、

いきなり気を失って起きた時にはすでに今の病室にいたということだけです。

その日は、いろいろな人に出会い少し疲れていたみたいで、そのまま寝てしまいました。


翌日、早朝から精密検査が行われました。

その日の朝も、妻と子供たちの姿は見えませんでした。

MRI検査などの検査を受けて、全てが終了したのは午後1時を回っていました。

午後からは警察の方々が来られて、私が遭遇した事件内容の説明と、ちょっとした事情聴取を受けることになりました。

「S宮 Kさんですね。初めまして、今回の事件の担当のT野です。こっちは」

「N村です。いきなりで申し訳ないですが、26日当時のことについてよいですか」

「はい、でもその前に教えてほしいのですが、私はどのような事件に巻き込まれたのでしょうか?

 申し訳ないのですが、何があったのかあまり覚えていないんです。」

「そのことは担当医のM崎医師から伺っています。お気持ちを落ち着かせて聞いてください。」

「わかりました。お願いします。」

私は深く深呼吸をし、T野刑事さんに事件の内容を教えていただきました。


「S宮さん、落ち着いて聞いてください。結論から言います。あなたは、一家惨殺事件の唯一の生存者です」

一家...惨殺?

刑事さんの言葉を聞いたときは、何を言っているのかわかりませんでした。

「す、すいません。一家惨殺事件っていったい何のことですか!?

 も、も、もしかして、私はどこかの家族の殺人事件を目撃してしまって、その犯人に襲われたんですか!?」

「S宮さん落ち着いて下さい。そうじゃないんです。」

「そうじゃないって、一体どう言う…」

私はその後の言葉を言いかけて、理解しました。

〈違う、そうじゃない。私は家族と自宅にいる時に気を失って、起きた時はすでにこの病室にいたんだ。

 しかも妻や子供たちにもまだあえていない。そして私は一家惨殺事件に巻き込まれた。

 という事は、、、〉

「S宮さん大丈夫ですか!一旦深呼吸して落ち着いてください!」

スーハー

もう一度深く深呼吸をし、無理矢理気持ちを落ち着かせ、刑事さんに今私が考えている事が真実か、確認しました。

「すみませんでした。もう大丈夫です。

 刑事さん、も、しかして、その事件の被害者っていうのは、もしかして」

吐き気がし、気持ちが悪くなってきました。

どうにか気持ちを落ち着かせ、

「わ、私の家族のことですか...?」

「はい、そして唯一の生存者はS宮さん!あなただけなんです!

 お願いします!何か思い出せることがあれば、おしえていただきたいんです!」

「実は言いますと、今回の事件の犯人は未だに目撃情報もなく、S宮さんあなたの記憶だけだ頼りなんです」

この話を聞いた途端、私の頭の中に、

〈お前には何も出来ない。〉

という言葉が聞こえてきました。

気持ちが悪い、吐きそうだ。

もう我慢できない。

私はついに我慢できず近くの袋を手に取り、吐いてしまいました。

「すみ、ません。お見苦しい所をお見せしてしまいました。

 申し訳ないですが、少し、トイレに行ってきてもいいでしょうか」

「こちらこそ、すみませんでした。どうぞ」

口を漱ぎ、顔を洗い、刑事さんの待つ自分の病室に戻りました。

「すみませんでした。ですが、一つだけ思い出しました。」

「そ、それはどんなことですか。少しでも情報がほしいのです」

「はい、犯人はおそらく男性だと思います」

「なぜ男性だとわかったのですか!?」

「それは、先ほど思い出したのですが、気を失う直前に、『お前には何もできない』と言われました。

 その声は、とても低く女性の声だとは思えません」

「その記憶が確かなら、信憑性は確かにありますね。ほかに思い出したことはありませんか。」

「すみません。今はこのくらいしか思い出せないようです」

「いや、ありがとうございます。」

「今日はこれで帰らせていただきますが、また後日伺わせていただきます。

 申し訳ありませんが、またよろしくお願いします。」

「私も、また何か思いせたら、お知らせします。」

「ありがとうございます。申し訳ありませんでした。では、そろそろ失礼します。」

そういうと、2人の刑事さんは帰られました。

そしてその後は、特に何も無く、一日は終わりました。


検査の結果も特に問題はなく退院できるようになり、家に必要な荷物だけを詰め、母のいる実家に行くことになりました。

事件の現場だった居間は、警察の方が証拠となるものは既に運び出され、後は業者の方清掃され戻る事も出来るそうなのですが、

私自身まだあの家に戻りたくない事もあり、実家に戻ることにしました。

幸い会社は実家からでも通える距離でしたので、気持ちの整理がつくまでは実家にいて、落ち着いたら家に戻ることになりました。


実家に戻り、その足で妻の実家に向かいました。


「失礼します」

戸を開けると、

「よく来てくれましたね。夫はいつもの部屋にいますよ」

と義母がいつもと同じように迎え入れてくださいました。

私は義母と共に義父のいる居間に向かいました。

トントン

「あなた、Kさんが来ましたよ」

「ああ、入りたまえ」

「失礼いたします」

私は部屋に入るとすぐさま、

「娘さんと子供たちを守ることができず、誠に申し訳ありませんでした。」

と土下座をすると、

「K君、君がそんなことをする必要はないんだ。顔を上げてくれ」

「そうですよ。あなたのせいではありません。だから頭を上げてください」

「ですが!私が気を失いさえしなければ!妻はあの子たちは死なずにすんだかもしれません!」

「それは違う!それは違うぞK君!

 私たちが憎むべきは未だに逃げている犯人なんだ。君が責任を感じる必要はない」

「ですが、もしそうだとしても、私は自分が許せません!

 私が気を失いさえしなければ、犯人と相打ちになったとしても、娘さんと子供達は死なずに済んだかもしれない!

 私の頭の中ではずっとそんな考えがよぎるんです」

涙が溢れ止まりませんでした。

「K君、君が言ったもしもがあったとしても、その場合は君が死んでいただろう。そうなれば娘たちが悲しんでいただろう」

「ですが...」

「もう娘たちは死んでしまったんだ。これは変えようのない事実だ。君もわかっているだろう」

「はい...」

「死んだ者はもう戻ってはこない。すぐには立ち直れるとも思わない。

 だがいずれは、死んでいったみんなの為にも君は精一杯生きてくれ」

お義父さんの言葉は私の胸に染み込んでいきました。

涙を拭い、

「お義父さん...ありがとう..ございます」


「K君、昼食を一緒に食べないか?」

この後、昼食をお義父さん、お義母さんと共に頂き、妻と子供たちの墓前に花をたむけた後、実家に戻りました。


翌日、2週間ぶりに出社しました。


会社の皆さんには依然と同じように接してもらってはいますが、以前とは何かが違うという違和感があり居心地が悪く感じてしまいました。

家に帰れば、母が私に気を遣い世話を焼いてくれます。ですが私にはそれが腫れ物を扱うように思え、家でも気持ちが安らぐことはありませんでした。


それから3ヶ月の時が経ちましたが、私の心お中は依然重く冷たいまま、温もりを感じることはありませんでした。

〈これ以上は無理だ、私の、家族の家に帰ろう〉

そう思い、会社を辞め自宅に戻ることにしました。


それからの生活はとてもひどいものでした。

何もやる気が起きず、外に出るのは食料を買いに行く時だけ。

眠れば、悪夢にうなされすぐに目が覚めてしまいます。


あるよる、ふとこんな考えが頭によぎりました。

〈なぜ私がこんな目に合わなくてはいけないんだ。なぜ妻は息子は娘は死ななければいけなかったんだ。

 ...憎い。

 誰が憎い?

 未だに逃げ続けている犯人が憎い。

 どうしたい?

 犯人にも私と同じ思いを味せてやりたい。

 どうやって?

 妻と子供たちにした事と同じことをやってやろう〉

もうこの時から、いやそれ以前から私は壊れていたのかもしれません。


翌日私は考えました。今の自分に人を殺すことができるのか。

今の私では覚悟を決めていても、その時には躊躇してしまうだろう。

そう考え、殺すことにためらいを覚えないように、まずは隣の家の犬で試すことにしました。

 善は急げということで、その日の夜に行動に移しました。


二階の窓から隣の状況を確認すると、電気は消えており既に寝ているようでした。


目標の犬はケンと言い、とてもおとなしい性格で基本的に鳴いたりする様なことはなく、

また、名前を呼べばすぐに出てくる位には私にも懐いていると言うこともあり、連れ出す事は難しくはありませんでした。


ケンを連れ出し、車で家から少し離れた山奥にある今は使われていない小屋に向かいました。


小屋に向かっている最中、ケンはとても嬉しそうに尻尾を振っていました。

彼は私が何処か楽しい場所に連れて行ってくれると思っているのかもしれません。

今から行おうとしている事を知らないのだから仕方ありません。

ですが、私はケンの期待を裏切ることをしようとしています。

やはり心は痛みますが、これも私から家族を奪った犯人に復讐するため仕方ない犠牲です。


20分ほどで小屋に着き、車から降ろそうとするとケンもいつもの私とは何かが違うとわかったようで抵抗していましたが、

やっとのことで小屋に入り奥の柱に括り付けると、いつも殆ど鳴く事の無いケンがとても大きな声で鳴きとても五月蠅いので口もロープで縛りました。


ふう、やっと静かになった。


ケンはとても怯えた目で私を見てきます。

〈これも殺された家族の復讐の為に必要な事なんだ、諦めてくれ。〉

そう心の中で呟き首に手をかけました。


精一杯の謝罪と感謝の気持ちを込め、徐々に力を込めていきました。

ケンは一生懸命逃げようと暴れていますが、逃げられる筈がありません。


段々と大人しくなり、もう抵抗する力も無いようです。

私の手の中で命の火が消えていく感覚は今でも忘れることは出来ません。


ケンは完全に動かなくなり、私は手を放し縛っていたロープを解きました。


そして埋葬するため、小屋の裏手に穴を掘ることにしました。

ですがその場所はごろごろとした石がとても多く掘り終るのに30分ほどかかってしまいました。


ケンを埋葬し、自宅に戻りました。


戻る途中に、

〈今回のようにいきなり行動するのではなく、次からはいろいろと準備をしてから行動しないといけないな。

 次の練習台は誰になってもらおうか。復讐の仕方はどうしようか〉

そんなことをを考えているうちに家に到着しました。


その日は風呂に入った後すぐに寝てしまいました。


 翌日、外が少々騒がしいことに気づき、目を覚ましました。

何かと思い外に出てみると、

「M崎さんおはようございます。どうかなさったんですか?」

「S宮さんおはようございます。家のケンが居なくなってしまったんです。首輪につないでいた鎖も外されているようで、誰かに連れて行かれたかもしれないんです。

 S宮さんは何かご存じありませんか?」


「いや、私は特に見ていないですね。心配でしょうけど大丈夫じゃないですか?きっとすぐにひょっこり帰ってきますよ。」


「でも、鎖が外されているんですよ。心配で仕方ありません。あの子は私たち夫婦にとっては息子みたいなものなんです。」


「そうだったんですね。でも大丈夫ですよ。きっと鎖も動いている途中で外れただけですよ。」


「そう..,でしょうか。そうならいいんですけど。」


「きっとそうですよ。2、3日待ってみてそれでも帰ってこなかったら警察に相談してみればいいんじゃないですか?」


「そうですね。そうしてみます。お騒がせしてすみませんでした。」


「そんな事気にしないでください。私もケンが戻ってくるように願っています。」


失礼します。と家に戻りました。


自室に戻り一息つき、

〈そうか、ケンは私にとってはただの隣の家のペットでもあの人たちにとっては家族だったのか。

 もしや私は取り返しのつかない事をしてしまったんじゃないだろうか。

 ...いや、違う。そうじゃない!

 今ここで引き返してしまってはケンの命は無駄になってしまうじゃないか!そんなことになればケンがうかばれない!

 私は止まってはいけないんだ!

 犯人に復讐するまでは!!〉

そう新たに強く決心を固め、次は誰に練習台になってもらうかを決めるため出かけることにしました。


 次の練習台を探しているうちに10日間が経ちました。

未だに次の目標は決まってはいませんが、ある出会いがありました。


その出会いと言うのは、5日ほど前に家の近所の公園の前を通った際に見かけた少年です。

少年は毎夜公園で一人、ブランコに座っていました。


始めは何か理由があり公園で親を待っているのだろうと考え、遠くから様子を見ていただけでしたが、

次の日もその次の日も少年は毎夜公園で一人、何かを待っているようでした。


さすがの私も心配になり、2日前にその少年にいったい何故毎夜この公園にいるのか声を掛けました。


そしてその子の名前はN君だということ。

また、N君は会社からリストラされ酒浸りの父親から虐待を受けており、母親もN君を守ろうとはせず見ているだけ。

これ以上は殺されると思い、両親から逃げるために昼間は友達の家を渡り歩き、

夜はこのいつもいる公園で夜を明かすという生活を10日ほど続けていたそうです。


確かによく見るとN君の服は汚れており、もう何日も家に帰っていないことがわかりました。

その日、私はN君を家に連れて帰りました。


家に戻りN君を風呂に入れ、その間に食事の用意をしました。


なんだか久しぶりに自分以外の為に料理をした気がします。

妻や子供たちが居た頃は時々ですが妻の代わりに料理をしていたのですが、最近は私一人が食べるだけだったので適当に済ませることがほとんどでした。


「お風呂ありがとうございました。」

「気にしなくてもいいんだよ。熱かったり冷たかったりしなかったかな?」

「はい、丁度良かったです」

「それならよかった。もう少しで食事もできるからソファーにでも座って待っていなさい」

「いいえ、僕にも何か手伝わせてください!」

「...そうかい、じゃあこの食器を並べておいてもらえるかな」

「はい!任せてください」

N君はそういうとテキパキと食器を並べてくれました。


〈私にはわからない。なぜこんなにいい子なのにこの子の両親は彼を虐待していたのだろう〉


「おじさんどうかしたんですか?」

「いや、なんでもない。ほら、ご飯もできた。N君もそこに座って一緒に食べよう」

「はい!」


夕食にはハヤシライスを作りました。


「今はこんなものしかできなくて申し訳ないけどどうぞ食べなさい」

「いいえ、とてもおいしそうです。いただきます!」

「はい、いただきます」


「...どうかな」

「とってもおいしいです。」

「そうかい、ありがとう。お世辞でもうれしいよ」

「お世辞なんかじゃありません。

 本当に..おいしいんです。こんなにおい..おいしいごはんを..食べるのは久しぶりで...」


N君はそう涙を零しながら、本当においしそうに私の料理を食べてくれました。


「まだまだおかわりもいっぱいあるから、どんどん食べなさい」

「あり...がとうござい..ます」


私の作ったご飯をおいしそうに食べているN君の姿が殺された子供たちと重なってしまい、目頭が熱くなります。

いけないいけない、こんな小さな子に弱い部分を見せるわけにはいかない。


「ちょっと私はトイレに行ってくるから、N君はゆっくり食べていなさい」

「はい」


洗面所に行き顔を洗い、強く頬を叩き気合を入れ食事に戻りました。

そのあとは雑談をしながら食事を楽しみました。

本当に久しぶりの楽しい食事でした。



「ご馳走様でした!」

「はい、お粗末さまでした」

「後片付けは僕にさせてください!」

「そんな事気にしなくてもいいんだよ。後片付けは私がしておくから、N君はテレビでも見てゆっくりしていなさい」

「いいえ、そのくらい僕にさせてください!僕にも少しでもお返しをしたいんです!お願いします!」

「そうかい...じゃあ、お願いしようかな」

「はい!任せてください!」

そう言ったN君は、やはりテキパキと後片付けをしてくれました。


私はソファーに腰掛けこれからの事をすこし考えることにしました。

一つ、次の復讐の為の練習相手のこと

二つ、N君の今後のこと

三つ、これからの私の生活の事


まず一つ目のターゲットの事ですが、ある程度決まりました。

次の練習相手をしてもらおうと思っているのはN君の父親です。

確かにリストラは悲劇だと思います。ですが、それを理由に自分の子供に暴力をふるうのは明らかに間違っています。

しかも子供が殺されるかもしれないと思うほどの暴力というのは考えられません。

私はどうしてもN君の父親のした事が許せません。なので次の練習相手になってもらうことにしました。


二つ目のN君の今後については、できる限りのことをしてあげたいと思っています。


三つ目のこれからの私の生活は復讐のための練習とN君との生活を両立させるために気合を入れなおさなければいけない。


そんなことを考えていると、


「後片付け終わりました!」

「ありがとう。一緒にテレビでも見ようか」

「はい!」


それから布団に入るまでの間、とてもゆったりとした時間を過ごすことが出来ました。

そして、この幸せな時間を与えてくれたN君の為にもすぐにでも次の練習に取り掛かろうと心に難く決意しました。

この物語はもう少し続きます。

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