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学生服の少年少女は今日も前線で戦います  作者: 彩雨カナエ
Chapter.5 この戦いに終焉を
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14.気弱な少女の幸福論

 眩しいくらいのライトが上から照らされる、そんな最後に目にしたものとは真逆の、永遠の暗闇の中に私はいた。


 見えない地面の上に立っていた。周りに何もないその空間は、イメージしていた死後の世界にそっくりだった。


 緊急手術で失敗したのか、遅れたのか、そもそも手遅れだったのか。そんなことはどうだっていい。結局、初めから私は死ぬ運命だった。ただそれだけだ。


 ずっとそう思ってきたはずなのに……どうしてだろう、涙が止まらなかった。

 一生懸命、勉強したから? 仲の良い友達が出来たから? それとも、何も自由にできなかったから?


「泣いていたら、君の可愛い顔が台無しだよ?」


 突然、後ろから聞き覚えの無い声がした。振り返ると、そこにあったのは……よく分からないぬいぐるみだった。


 え? 今なんて……。


「ごめんごめん、言ってみたかっただけさ」


 まるで心を読んでいるかのように、聞き返す前にあしらわれてしまった。しかもその声は、ちょこんと座ったぬいぐるみから発せられたようだった。


「なーんて、からかってごめんね。そのぬいぐるみ、どうかな? 可愛くない?」


いつの間にか背後に立っていたのは、ゆったりとした黒いフード付きの服を纏った女の人。真っ暗闇の中で、その銀髪と紅い目が際立って見えた。


「継ぎ接ぎだらけで……ちょっと……怖い……」


「えー……じゃあ次までに新しいの作らなきゃ」


 一体、彼女は何なのだろう。こんな場所にいるのだから、人間じゃないのかもしれない。


「そんなことは置いといて……私はテディ。死んだ人を異世界に送る女神だよ」


 女神……明らかに非現実的な話ではあるけれど、今いる場所だって非現実。何の躊躇いもなく、彼女の言うことを受け入れた。


「それでね。君のお願い、叶えてあげるよ。だから、よーく考えて言ってみて」


 私の願い……生きている間、何か夢を持ったことはあっただろうか。私が記憶している限りでは、そんなことは1度もなかった。


 ほんの少しの間だったけど……死をもって、幾つもの大切なものを失った。



 だから、思いつく私の願いはもう、これしかなかった。


「今までできなかった……色々なことを……経験したい……」


 外を走り回ったり、友達とはしゃいだり、殆ど何もできなかった人生を……取り戻したかった。


「そっか。じゃあ、向こうに送るよ」


 私を支えていた見えない何かがスッとなくなり、体が宙に投げ出されたような感覚に陥る。いや、違う。私は落下していた。


 これが私の、第二の人生の始まりだった。




「これで役者は揃った。さあ、物語の幕開けといこうか……」

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『学生服の少年少女は今日も前線で戦います』スピンオフ第1弾!!
『鍛冶屋を営む大男は今日も少しだけ働きます』
※「Chapter3-01.異世界では何の役にも立たない知識」までお読みになっている前提となっています。

彩雨カナエ Twitter @Rain_Nf3
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