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学生服の少年少女は今日も前線で戦います  作者: 彩雨カナエ
Chapter.5 この戦いに終焉を
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13.大切な仲間達

 地面を強く蹴りつけ、飛んでは鋭い爪を振り下ろし、即座に光弾を放ってくる。通じないと分かっている攻撃でも、させる余裕すら与えてくれないほど機敏に動くラスター。避けては打ち消し、避けては打ち消しの繰り返しだ。


「流石にもう疲れてきたんだけど……まだなの?」


「分からない……でも、こんなに魔素が持つんだろう……」


 充電式の機械をずっと使い続けていれば、当たり前だが充電切れで電源が落ちる。これと同様に、ラスターの動きだって十分な時間が経過すれば停止するはずだ。

 だが、動作が鈍くなっているとは到底感じられない。むしろ、疲労からか強くなっているように感じた。


 何か、見逃しているのかもしれない。

 体内に結晶があったら、絶対に魔素が不足する時が来る。ずっとラスターがここにいたということから、相当な容量を誇るものなのだろうか。それとも、交換式のバッテリーのようなものなのか。


 ラスターを作った者なら、ここまでの機械を作れるのだから、魔素を蓄える機構だって相当凄いものなのだろう。

 だったら中身は……二次電池、すなわち充電可能なものなのではないだろうか。例えば、携帯電話に使われているリチウムイオン電池とかのような。


 もし、携帯電話の充電が切れかかっているが、どうしても使いたい時はどうするか。そう、単純に「充電しながら使えばいい」のだ。


 その発想が完全に抜け落ちていた。魔素を流すには、ユーラのような魔法でない限りは必ず回路を接触させる必要があると聞いた。

 以上のことから、ラスターに常に魔素が供給されているとすれば、ほぼ常時接触している場所……この床が供給源に違いない。さっき幻影が生じたのも、ここに溜められた魔素が多すぎるのが原因か。


「エリー! 床だ! 床の表面を壊して!」


 それを聞いたエリーはこちらを向いて「え、何で?」と目をしかめる。


「説明してる暇なんて無いから、とにかく早く!」


「わ、分かったわよ! 床ね!」


 僕がラスターの砲台を引き付けている間に、後ろに下がったエリーが無防備な床面に向かって魔法を放つ。その真上に現れた光と炎の弾幕が、鉛直下向きに打ち出され、ラスターの生命線をバリバリと砕いていく。


 その直後、ずっと僕に向いていた首が、エリーの方へとシフトした。自分の構造がバレたことに気付いたのだ。

 翼の下から放たれた無数の砲弾が、彼女のいる舞い上がった黒煙の中に打ち込まれた。


「エリー!!」


 床を傷つけた、それ以上の轟音がダイレクトに耳に伝わる。衝撃も凄まじいもので、立っていられない程だった。


 そんな、まさか……。いやいや、どうせ煙の中からひょいと出てくるだろう。さっきみたいに……また出てくる……よね。


 ラスターは僕が攻撃できないことをお見通しなのか、僕に攻撃を加えず、エリーがどうなったかを確認しようと、爆心の方を向いていた。

 空間のほぼ全てを覆いつくす程に広がった黒い壁。時間が経つにつれて、少しずつ、少しずつ、色が薄まってゆく。


 その先に見えたものは、想像もしてなかった……いや、とても嬉しい光景だった。

 爆風で体勢が崩れ、焦げ付いた床に手をついていたエリーの前に、彼女を守るように深い青色の城が立ちはだかっていた。


 煙で見えていなかった壁の方に目をやると……2人がこちらへと駆けて来ていた。


「カズヤさん、エリーさん、遅れてすみません!」


 それは、後ろに2体のナイトを引き連れたアキと、壁をぶっ壊したであろう大剣を構えたルナだった。


「アキ! ルナ! 2人とも優先的に床を壊して!」


「分かりました!」「うん、分かった……」


 それを聞いたアキは、まだ見たことのなかった駒を召喚した。形状からして……ビショップか。

 まもなく壊されるであろう盤上に配置された駒から、四方にビームが発射される。見事な駒捌きで効率よく床を削っていった。


 大剣を握ったまま飛び上がり、壊し損ねていた部分にそれを振り下ろす。頑丈な壁をも1発で打ち砕く打撃に、床の石は無惨に散っていった。


「私も頑張らなくっちゃ……」


 エリーが再び同じ魔法を……ラスターの真上に弾幕を張り、それ目掛けて撃ちこんだ。本体には通用しなかったが、その足元の床はボロボロにひび割れていた。


 再び行動を始めたラスターが、彼女らを狙って弾を連射する。細かく、数も多いが、結局はこの攻撃も魔法。

 それに気付いた僕を、攻撃対象から外すのはよしてほしいな。


 弾に向かって放った逆魔法が、それらをことごとく打ち消した。機械が使う魔法なんて、結局はワンパターン。砲台から撃ち出される弾だって、根本は全く同じ魔法なのだ。


 パターン化さえしてしまえば、どんな戦いだってこっちのもの。


 魔法で攻撃するのが無意味だとようやく理解したのか、ラスターが僕に爪を向けて飛びかかってきた。


 しかし、その時がきたようで……ラスターは僕に腕を振り下ろす前に、動きを止めたのだった。


「これでやっと……魔王のところにいけるのね……」


「この金属、超硬いです! ルナさん、ちょっと剥がせませんか?」


「やってみる……。確かに硬い……けど……これくらいなら……」


 バキッという音が静かになった空間に反響する。それぞれ色々思うことがある……エリー以外全く関係のない会話をしてはいるが、遂に魔王城への入り口が開かれたのだ。


「帰ったら、ちょっと休んで倒しに行かなきゃ! 私達のパーティならもう、どんな敵だって倒せるわ!」


 魔王討伐への意気込みを、ハイテンションで叫ぶエリー。だが、たった今直面している問題が1つある。


「その……何か申し訳ないんだけど、ここからどうやって出るの?」


「……ノープランだったわ」


 ラスター戦に夢中で、地下迷宮で迷っていたら偶然辿り着いたのを、僕達はすっかり忘れていたのだった。

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『学生服の少年少女は今日も前線で戦います』スピンオフ第1弾!!
『鍛冶屋を営む大男は今日も少しだけ働きます』
※「Chapter3-01.異世界では何の役にも立たない知識」までお読みになっている前提となっています。

彩雨カナエ Twitter @Rain_Nf3
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