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学生服の少年少女は今日も前線で戦います  作者: 彩雨カナエ
Chapter.1 できれば平穏に異世界を満喫したかった
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03.JKと地面は垂直に交わる

 僕が頷いたのを確認した女の子は、こちらに向かって手を差し伸べて、満面の笑みで元気よくこう言った。


「私、エリー! よろしく!」


 それに応えるべく、僕はその手を握る。


「僕はカズヤ、こちらこそよろしく」


 普段笑うことなど無い僕が非常用の営業スマイルをしたつもりが、エリーの「あ、うん」という引き気味のリアクションで察した。顔、すんごいひきつってた。僕の表情筋は中3くらいで多分死んでる。


「あれ……カズヤ、魔力がほぼゼロ…………」


 あ、僕やっぱり弱いんだ。


『私とパーティを組んで!!』


 何故、僕に頼んだのだろうか。別に強い人なんてそこら中にいるはずだ。強い人は強い人と組めば良いのではないか。


「でも、何で僕なの?」


「何でって……さっき逆魔法使ったじゃないの!」


 「逆魔法、何それ?」って顔をした僕に呆れたのか、エリーは溜息を漏らす。他に使える魔法を聞かれた僕は、「無い」と断言した。ここに来たばかりだと伝えると、魔法について色々説明してくれた。1時間くらい立ちっぱなしで。


 その話を要約するとこんな感じだ。


 「魔法」とは、「魔法の式」をエネルギーに変換し具現したもののこと。「赤、青、緑、黄、紫、白、黒、無」の8属性があり、これらの一部には有利不利の相性がある。「赤、青、緑」は三つ巴の関係、「黄、紫」は対立、残りの3つは特に相性が無い。


 「魔法の式」は先程の属性、軌道、破壊力等の成分を暗号化した大容量の文字列……だと思ってくれればいいらしい。エリー曰く、結局何なのかよく分からないとのこと。

 また、「魔法の式」を「魔法」として展開する行為を「魔法の演算」といい、この能力の指標が「魔力」で、高い人ほど強い魔法が使える。「演算」に必要な力を「魔力」と呼ぶこともあるらしい。


 それに対して、視覚的に認識または脳内でイメージした「魔法」から「魔法の式」を組み立てる行為を「魔法の逆演算」という。「演算」は練習を繰り返すことで誰でもできるようになるが、「逆演算」は違う。

 どうやら、「魔力」と「逆演算力」は依存せず、元々の脳のスペックが影響するようだ。その為、「逆演算」が出来る人はかなり少ないらしい。エリーも今までに一人しか会ったことが無いとか……。


 では何故、僕をパーティに誘ったのか。


 敵と戦う際には攻撃だけでは無く防御も必要になる。「魔法の逆演算」はそのどちらにも有効なものなのだ。攻撃時にはイメージした魔法を逆演算し、それを演算することで頭に思い描いた魔法をその場で使用できる。


 魔法に対する防御方法は幾つかあるが、受け流す方法を除くと主に二つ。「迎え撃つ」か「打ち消す」である。「迎え撃つ」とは相手のよりも強い魔法をぶつけて押し切る、ということ。これに対し「打ち消す」というのは、「逆魔法」、その名の通り相手の「魔法」と式の成分が真逆な魔法をぶつけて相殺する方法だ。


 前者の場合、相手より強ければいいだけの話だが、後者には重大な欠点がある。それは、相手の魔法の式が分かっている前提であること。

 「魔法の式」から「逆魔法の式」を導くことを「逆魔法化」というようで、「逆演算」と物凄く紛らわしい。だが、似ているだけあって「逆魔法化」は「逆演算力」が必要なようだ。


 以上のことを纏めると僕は、相手の魔法を「逆演算」し、その式を「逆魔法化」、そして「演算」することで、木が吐いた炎を打ち消したということだ。後から聞いたが、あの木の炎は一応魔法の1つらしいが超弱いので、僕でも打ち消せたんだとか。


「それで……カズヤが逆演算できるみたいだから…………組んでほしいの!」


 つまり僕とエリーが組むことで、エリーは僕の逆演算で戦闘が有利になり、その代わり僕はエリーに守って貰えるのだ。


「それで、何をすればいいの?」


「まずは……伝達魔法の練習ね。私に魔法の式を伝えられなきゃ意味ないし」


 首を傾げる僕を見て、「テレパシーみたいなやつ」と付け加えた。なるほど、理解。


「で、どうやるの。それ」


「さっき手を繋いだ時に勝手にネットワークを作っといたから、私に送ることを意識すれば出来ると思う。試しに何か送ってみて」


 魔法って凄いな。「何か」と言われると超迷うタイプの僕は、この無駄なことに頭を使う。何かないものか。前には横を向いて大きなあくびをしているエリー。

 そういえば気にしてなかったけど、エリーが着てるのってどう見ても制服だよな。現役の女子高校生か何かか。いや、ここは異世界だしそれは無いはずだ。


 そうだ。エリーの頭を適当に点J、足を点Kとおくと線分JKが地面と垂直に交わっているではないか。という謎過ぎる思考回路により、僕がエリーに送ったメッセージは「線分JKが地面と垂直!」。よく考えたらとんでもない怪文書なのだが、僕に悪気は一切ない。


 送った直後、目の前のエリーの顔が一気に紅潮し、胸にぽんと手を置いた。そして……


「じ、JK(女子高校生)に向かって…………何が垂直よ、このヘンタイっ!」


 エリーはこっちに傘を向けて魔法を放ってきた。かろうじて避けれたものの、怒りは収まらないようで……


「どうせ私はつるつるですよっ!!」


 あ、殺される。エリーは容赦なく僕に向かってビームを連射してくるのだった。前じゃなくて後ろの話なんですけど。ていうか本当に女子高校生だったみたいだ。異世界でも制服ってあるんだね。

 もう一度言っておくが、僕に悪気は無い。断じて無い。

 強いて言うなら、アルファベットの「J」の次が「K」なのが悪い。

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『学生服の少年少女は今日も前線で戦います』スピンオフ第1弾!!
『鍛冶屋を営む大男は今日も少しだけ働きます』
※「Chapter3-01.異世界では何の役にも立たない知識」までお読みになっている前提となっています。

彩雨カナエ Twitter @Rain_Nf3
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