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学生服の少年少女は今日も前線で戦います  作者: 彩雨カナエ
Chapter.2 魔王軍とやらを倒さなきゃいけないらしい
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04.JKとJSを因数分解したい

 冒険者達の歓声が止まない中、僕達はその間を通り町に戻った。面倒なのが絡んでくるのではないかと少し心配だったが、意外にも言われたのは「お前すげえな!」とか「逆演算初めて見たぞ!」だった。数学と理科以外で褒められるなど滅多にないことだったので、嬉しかった。でも、注目の的になるのは嫌かな。


 宿屋に戻ると受付のお姉さんがカウンターに頬杖をつき、こっちを見てニヤニヤしている。


「君たちさあ、今回ので凄い額の臨時収入があるじゃない? だからさ……宿泊費ぼったくていい?」


「ダメです」


 堂々としたぼったくり宣言に対して僕の即答し、それを聞いた彼女は溜息を漏らす。まず「いいよ」という馬鹿な人は居ないだろう。


「まあ仕方ないかぁ……エリーはうちのお得意様だし、逃したくないからね」


 その気があるなら、最初からそんなことを言わないで欲しい。


「でも、3人で泊まれる部屋無いんだよね……あ、いいこと思いついた! 3階に普段使わない大部屋があるんだけど、部屋ごと貸そうか? 1か月20万シルンで」


 それぞれ1人部屋に泊まるという選択肢が無いのが誠に遺憾である。他の冒険者も泊まるから、部屋を圧迫するのは良くないかもしれないが。

 しかも月20万シルンというのはかなりお得だ。2人部屋1泊で8000シルン。つまり1人当たり4000シルンだ。1か月を30日と概算すると「4000×3×30=360000」。置いてある棚などの家具も自由に使っていいとのことなので、このチャンスを逃すわけにはいかない。


「あ、じゃあそれで」


「念願の家賃収入ゲット!!」


 宿屋というよりもアパート化しているが気にしたら負けである。


 夕食をとった後、階段を昨日よりも多く上り案内された部屋は確かに広かった。アンティーク調のクローゼットが3つに大きめのベッドが2つ。勿論トイレとシャワーは完備だ。

 あれ? 毎回ベッドが1つ少なくないかな?


「エリー、その小さい子気にしないで楽しめよっ!」


「な、何もしないですから!!」


 昨日から定期的に行われている謎の会話を見届けた後、1日中動き回り疲れた体を休ませるためベッドに倒れこむ。


「う゛っ……」


 腹に違和感のある重みを感じ首を上げると、そこにはアキが跨っていた。


「ベッド独り占めはズルいですよ!」


「いや、そこは女子同士一緒に寝ればいいんじゃ……あっ……」


 エリーの方に目を移すと、もう1つのベッドの上で足をぶらぶらしながら、知らないふりをしている。だが、そこに追い打ちをかけたのはアキの口から溢れた一言だった。


「いや、流石に公共の場でパンツ丸出しで寝ているような人と一緒なのは……」


「その話はやめてえええええええええええ!!」


 この問題はエリーをパーティから追い出さない限り一向に解決できないだろう。ベッドに縛り付けちゃえば良いのかもしれないが、あの寝相で縄ごと引き千切られてしまう可能性がある。


「じゃあ、私ちょっと出掛けてくるから。先にシャワー浴びといてね」


 そう言い残して部屋から出ていくエリー。ときに僕が大工達と工事をしていた時に何かしていたような……。


「お先にいいですか?」


「ああ、別にいいよ」


 シャワールームの扉がガチャっと閉まる。そして、僕だけの時間がやってきた。

 それにしても、曲線作りは飽きてしまった。1人微分大会などという遊びもあるのだが、ただただ疲れるだけである。何をすればいいものか。

 パーティに居るのは……JK(女子高校生)のエリーとJS(女子小学生)のアキ。今まで気付かなかったが、「JK+JS」って「J(K+S)」に因数分解できるじゃないか。個人的にはこの方が纏まりがあって良いと思う。エリーに因数分解スキルが備わっているか分からないから、客観的な判定は不可能だ。


 そんな下らない暇つぶしをしていると、アキの声が聞こえてきた。


「あの、カズヤさん……着替え……そっちに置いてきちゃいました」


「別に気にしないし、そのまま出てくれば?」


「えっ……まあ、タオルあるから……いいかな」


 扉を開けて出てきたのは、髪を濡らし体に白いバスタオルを巻きつけたアキ。それはどうでもいいのだが、ここで予想外の事故が起きる。


「ただいまーって……アンタ達何してんの!?」


 勢いよく部屋に入ってきたエリーが、そのままこちらへ向かってくる。何故だろう。嫌な予感しかしない。


「この変態が!!」


 案の定、僕の腹にエリーの拳が直撃する。これも毎度のことだが、断じて僕は悪くない。


「その、言いにくいんですけど……パンツ見せびらかしてる方が変態なのでは……?」


 その言葉を聞いて下を向き、それに気づいたエリーの顔はどんどん真っ赤に染まっていく。パンチをする前、閉まった扉にスカートの端を挟んでしまったようだ。

 エリーは慌ててスカートを引っ張り、半裸のアキにスポッと服を着せる。


「……それ何?」


 僕が指を差したのはエリーが持ち帰ってきた大きめの紙袋。何か買ってきたのだろうか。


「ああ、これ? 2人の為に用意した服よ」


 紙袋から出てきたのは……今着ているものと同じブレザーと、これもまたアキの制服と同じもの。そしてTシャツが数枚。


「その制服、オーダーメイドなのよ。カズヤのブレザーには演算高速化、アキのには演算付加軽減の特殊効果付きで……何でそんな顔してるの?」


 特殊効果付き、つまりマジックアイテムを縫い込んで作った服ということだ。しかもオーダーメイドとなるとかなり値が張るのではないだろうか。


「これ……全部でいくら?」


「ざっと、50万シルンってとこね」


「「今朝の報酬!!」」


 僕とアキの鋭いツッコミが重なる。案外、エリーよりもアキの方が気が合うのかもしれない。

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『学生服の少年少女は今日も前線で戦います』スピンオフ第1弾!!
『鍛冶屋を営む大男は今日も少しだけ働きます』
※「Chapter3-01.異世界では何の役にも立たない知識」までお読みになっている前提となっています。

彩雨カナエ Twitter @Rain_Nf3
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