四
偉そうにシリアス調です。
すいませんm(_ _)m
今日もいつも通りの日常だと思っていたんだ。
まさか、まさか姉さんが……。
「ふうー、やっと授業終わったー」
今日の授業は五時間目まで、いつもよりは遊べる時間が増えたんだ。
何しようかな〜、レンとゲームでもするかな〜。
なんて、浮かれていると廊下を歩く人影を見つけた。いや、授業終わりなんだし人はいるだろって思うでしょ? その人が、僕の姉、森林林とこの学校の生徒会長だったら? 確実に気になるでしょ?
「なんであの二人一緒に歩いてたんだ?」
「どの二人だ?」
「ほら、姉さんと生徒会長が一緒に歩いてるの」
「あ、本当ですね」
「こりゃまた不思議な組み合わせだな」
ホントに不思議な組み合わせだよ。確か姉さんから聞いた話だと、生徒会長は姉さんみたいなバカな人は苦手、というか嫌いって。
それなのにあの二人が一緒にいる。生徒会長がわざわざバカに近づいたってことになるわけだ。
「なにか、よからぬ事が……?」
「考えすぎだろ、お前」
「そうだよね」
僕の考えすぎだね。うん。
──翌日──。四月二十八日。
「な、なんだこれ……」
今朝、学校に行くと校門前の掲示板に人だかりが出来ていた。
なんか有名人が来るとかかな? なんてお気楽に掲示板前に来た僕らはその掲示内容に息を飲んだ。
『在学中生徒の個人情報が漏洩した』
掲示板に貼られた新聞部の記事。その一つの文は場合によっては警察沙汰になる事だ。
「な、なに? これ……」
「見てのとおりだろ……」
「ハア!? じゃ、じゃあ僕達の個人情報世間にダダ漏れってこと!?」
「そう、なりますよね……」
なんてこった……。
こんなこと、どうやったって隠し通せるわけがない。
「みんな、落ち着いてくれ!」
慌てふためく生徒達をよく通る声で一喝したのは我が校の生徒会長。彼は自分の住所が全世界に晒されていというのに毅然とした態度で立っていた。
「オレは、全校生徒の個人情報を誰かに渡る前に消しておいた! だから、安心してくれ!」
は?
彼は当然のように立っているが、誰かに渡る前に消した? そんなのは不可能だ。まず、誰にも渡ってないなんて証明、できるわけが無い。生徒会長がどこかで僕らの個人情報が晒されてるのを見たということは、他の第三者が見て保存した可能性だってある。
どこからか声が上がった。
「誰にも渡ってないなんて、なんでわかんだよ!」
おお、僕の気持ちを代弁してくれた。ありがとう、見知らぬ後輩よ。
「オレはな、情報が漏洩した瞬間に立ち会ってたんだよ」
「…………」
は?
いま、あの人なんてった? 立ち会ってたって言った?
「間違って個人情報を流してしまったのは、森林林さんだ」
「…………………………は?」
「え、あたし?」
つまり、この騒動の元凶は──僕の姉である森林林?
「嘘だァァァあぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァ!!!」
その後のことは覚えてないけど、気付いたら僕は保健室のベッドの上で寝ていた。
「『なんで僕はここにいるんですか?』っていいたいんですね」
「正解です。で、どこなんですか萌栞先生」
まあ、どこにいるのかは大体予想がついたんだけどね。
「ほけんしつですよ」
「ですよねー」
はあ、三年間保健室なんて行ったのことなかったのに……。そんなことどうでもいいんだけど。
「まさか、しょっくでたおれるなんて。せんせいもびっくりしましたよ」
「あはは」
乾いた笑いしかでない。
だって、姉さんがうちの学校にいる全生徒の個人情報を間違えて流出したなんて……。
「……っ」
「にじげんめまで、やすんでていいですよ。あたまいたそうですし」
「すいません……。ありがとうございます」
「いえ……。真相は貴方達にしか究明できないので」
「え?」
「なんでもないですよ~、おだいじに〜」
……また流暢に喋ってた。
人の心を読めるとか訳の分からない先生だったはずなのにさらによく分からなくなったよ。
「お、森、大丈夫か?」
「ああ、うんピンピンしてるよ」
あのあと二時限目まで休んで三時限目。
教室に入ってそうそうに僕を心配してくれたのは意外にもレンだった。
レン、お前優しかったんだな……。
「森くん、大丈夫……?」
次に心配してくれたのは河川ちゃん。
はあ〜、君が来てくれれば僕は二時限目を無理してでも出たよ。
「お前、ショックで倒れるタイプだったんだな」
「泡吹いて倒れてる人初めて見たよ……」
「え、泡吹いてたの僕!?」
「「うん」」
oh.ノー!
あんなに人がいる場所で泡吹いて倒れるとか、死ねますよ!
はあ……。
「ため息つくなって、あの林が個人情報流出なんてヘマしねえって」
「そ、そうだよ……」
「確かにね、姉さんがそんな事するはずないもんね」
そうだ。姉さんはバカに見えるけど、パソコンやゲーム機などの操作は得意なんだ。どこをどうすればこうなるとかは、すぐに分かるはず。
「じゃ、怪しいのって……」
「あの生徒会長か?」
「いやでも……」
「いーや、ありえるかもな」
「へ?」
「聞いただろ? あの噂」
「あの噂……? ああ、あれねでもあれって──」
「事実かなんて知らねえ。だけどよ、今はあの噂しか信じられねぇだろ」
僕達の言うあの噂って言うのはこの前の入学式で言われてた生徒会長の不正の事だ。
生徒会長が勝手に点数をいじって一人の生徒を留年させたっていう話。
「とまあ、とりあえず、俺は聞き込みするわ」
「なんで聞き込み?」
「決まってんだろ、生徒会長の裏とんだよ」
「う、裏とるって……」
「実はな、四月三十日までに犯人見つけねえと、林が退学させられちまうんだってよ」
「え…………」
その後の授業なんて、耳に入るわけもなく、僕はただただ姉さんのこれからを考えてた。そして、昼頃。
だって、姉さんが退学させられちゃうんだよ? あんなに楽しそうに学校を楽しんでる人が、一つのミスで退学だよ?
「レンは……、もう行ったのかな?」
「ここにいんぞ」
「うわっぷ!?」
まさか返事を返されるとは思ってなかったから驚いて変な声出たよ!
「どうしたんだよ? まさか、お前も生徒会長の裏とんのか?」
「そ、そういう訳じゃないけどさ」
「……? ならなんだよ」
「……いやさ、姉さんあんなに楽しそうに学校に来てるのに、もし、もしもだよ? 生徒会長が犯人なら、何でこんなことしたのかな?」
「あ? んなもん決まってんだろ。バカが気に食わねえからだよ」
「え?」
「あいつ、林と会った時に言ったそうだぜ『ば、バカがうつる……!』ってな」
「それとこれと、何の関係が……、え、そゆこと?」
「合点早いなお前」
すぐに合点がいった。
生徒会長はバカな人が嫌いで、姉さんは生粋のバカだったから生徒会長に目を付けられてた。そして、進級試験の時に不正で留年させられ、最終的には退学まで持っていくと──。
「まずいよ!」
「おお……。突然立つなよ」
「は、早く生徒会長に自白させなきゃ……」
「おう、そんなあたふたしながら言われても説得力ねえけどな」
善は急げ!
僕が教室のドアに向かおうとするとレンが襟をガシッと掴んできた。ちょ、伸びちゃうよ!
「何すんのさ!」
「お前バカだろ。証拠も無しに自白する訳ねえだろうが」
「あそっか!」
「お前、こういう局面になると途端に林みたくなるよな……」
嬉しくない。
よし、早速証拠集めだ! なんて言ってもどこかは当たればいいのか、全く見当もない。
「これ無理かもね」
「諦めんなよ」
だって、生徒会長っていつも一人でいるんだよ? そんな人の事をどうやって調べればいいのさー。
誰か、生徒会長に近い人間が知り合いにいれば……ん?
「あ、陽くんと光ちゃん」
「あ? んだって?」
「陽くんと光ちゃんなら、生徒会長が何したか分かるかもよ!」
「おお! そうだな!」
よし、善は急げ!
本日二回目のダッシュをしようとした所にまたしても静止の手が。
陽くんと光ちゃんが教室前に立っていた。しかも、いやに神妙な顔で。
嫌な予感しかしないんだけど……。
「ど、どうしたの? 二人とも?」
「あ、あの、その」
いつもなら流暢に喋る陽くんが口をモゴモゴとさせてる。ちょっと待って、本当に嫌な予感しかしないんだけど。
「あの、わたしたち、生徒会長が何してたのか、全く知らないんです」
「へ?」
次に口を開いた光ちゃんの口から聞けたのはこれから僕達が聞こうとしていた事だった。
え、知らない? なんで、なんで知らないのさ。
ありえないでしょ……。
「あの、林がやってないってことは分かってるんです。ですけど……」
「生徒会長が林さんを退学させようとするともわたし、思えなくて」
「…………」
もう、何も言えなかった。僕らにとって、唯一の希望が何も知らなかった。その事実が僕の心に酷く突き刺さった。
「おう、お前ら。すまねえな、変な気ぃつかわしちゃって」
レンがそう言って、二人を帰すと今度は僕に向かって、
「あと二日だ。大丈夫だって、あと二日で確実に尻尾掴んでやろうぜ」
僕はその優しい言葉にすら、返事が出来なかった。
──翌日──四月二十九日
姉さん退学まで二十四時間をきった。
なんで、こんな事になったんだと、昨日の夜から悩んで気付いたら四時だった。
明日までになにか、証拠を掴まないと姉さんが……。
ここまで詰めても、見落としちゃったら意味が無いよね。よし、いつも通りに過ごして、尚且つ証拠を見つける!
その気合いとともに僕は姉さんよりも先に学校へ向かった。
「ふうー、早く見つけない、と?」
姉さんよりも早く家を出て学校に着いたのが六時半。早過ぎたかな? とも思ったけど部活とかやってる人もいるし、それ以外もボチボチ登校してる。
そんな中で浮いた存在に見えるレンがいた。
「な、何してんの?」
「おう森、証拠集めだよ」
「こんな朝早くから?」
「お前も人の事言えねえだろうが」
確かに。
と言ってもレンがこんな朝早くに起きれてるって凄いと思う。いつもなんだかんだ言ってても、レンも姉さんが好きなんだね。本当に優しいやつだよ。
「よし、どうする?」
「え、何をするのか決めてなかったの?」
「当たり前だろ? 普通に昨日聞き込みしても情報が集まらないんじゃ、他に案なんて浮かぶかよ」
嘘だろこいつ。
ええ、聞き込みは確かに昨日ほぼほぼ終わらしてるし、やることって……。
「現場検証?」
「は?」
「姉さん達がいたコンピューター室に行ってみない?」
「ああー、なるほどな。なんかパソコン中にデータがあるかもしれねえしな」
「そうそう。じゃ、職員室でコンピューター室の鍵借りてくるよ」
そう言って僕は鍵を借りに職員室へ走った。
「借りてきたよー!」
「おう」
学校で調べたいことがあるって言ったら案外簡単に貸してくれてびっくりしたよ。
ガチャ。
よし、鍵開いたね。
「失礼しまーす」
「律義だな」
「うるさいなあ」
ドアを開け中に入ると、コンピューター室独特の匂いが鼻をついた。
多分80台はあると思われるパソコンは一つも稼働しているわけもなく、モニターも使われる時を待つように暗いままだ。
「ってか暗いな」
「そうだね、電気電気……」
コンピューター室ってなんでかカーテンが閉まってること多いんだよね。
入ってすぐのところにある電源をパチッと点けると、疎らではあるが電気が点き始めた。
「ってもよ林達がどこ使ってたかなんて分かんのかよ」
「……あ」
「そこら辺なにも考えてなかったのかよ……」
し、仕方ないだろ! 姉さんが退学なんてって考えてたら四時だったんだから! 寝不足だよ寝不足!
このあとどうすればいいんだ。そんな事を考えながら教室を見回すと、とある物体が目に入った。
「はあ……。ん? ──あれって」
「あ? どうした?」
「レン、見つけたよ。────決定的な証拠を、ね」
「???」
これで、姉さんは退学を免れる……!
お昼頃、僕はコンピューター室で見つけた決定的証拠を確認すべく、職員室へ向かった。
先生に事情を説明すると、予想と違いすんなりと通してくれた。
「…………」
「………………」
「……………………」
捜し物はすぐには見つからなかった。
だけど、それは確実に見つかると確信し、僕はマウスホイールを動かし続けた。
「……………………あっ! あった!」
そして、きた。
姉さんの無実を証明する証拠。そして、
────生徒会長の犯行を決定づける証拠を……。
「なんだね君たち」
「ごめんね、生徒会長」
僕と姉さん、生徒会長にいつも集まってるメンツをコンピューター室に集め、この会話を聞いてもらうために萌栞先生を呼んだ。
「飯淵だ」
「飯淵くん」
生徒会長とは確実に三年間一緒だけど、名前を今初めて聞いた気がするよ。
「なぜここに呼んだんだね?」
「それはね──」
「──それはテメェが犯人だって事を証明するためだ」
ちょ、僕のセリフ!
飯淵くんはというと、なんだそんな事か、と言った感じに佇んでた。
この程度なら動揺しないか。
「なぜ、私が犯人だと言えるのかね? 犯人は、森林森くんの姉である森林林だと私は言ったはずだが?」
「姉さんは、ああ見えてパソコンとかの操作は得意なんだ。だから、姉さんが間違えて個人情報を流出するわけがないんだよ」
ちょっと詰めすぎたかな?
だけど、この詰めた発言が飯淵くんには効果てきめんだったようだ。
まさか姉さんが、あのバカな姉さんがパソコンの操作が得意だということに若干だけど動揺してる。
「だ、だが、人は万能ではない……。このようなミスもするだろう」
「些細なミスなら姉さんは沢山するよ。「しないよ!」だけど、こんな分かりやすいミスするかな?」
「か、彼女ならやりかねない」
「さっきも言ったように、姉さんはパソコンの操作が得意なんだ。あんなに大きなミス、姉さんは一回もしたことがない」
少し動揺してるだけで崩れない。
生徒会長ってメンタル強くなきゃなれないのかな? でも、多分確実に追い詰めてる。確証はないけどそう思う。
「それに、キミが一緒にいたなら姉さんがそんなミスをするのを止められたはずだよ?」
「…………」
「もし、仮に姉さんがやってたとしても、止めなかったキミにも問題があるよね?」
「…………」
黙ってしまった。
認めてくれるなら嬉しいけど、多分飯淵くんは認めないと思う。
「……」
黙っていた飯淵くんは突然僕に近づいてきた。
「へ? い、飯淵くん?」
「ふざけるな!」
彼はそこで崩れた。
今まで上手く運び、明日には邪魔者が学校から消えると思っていた時にこれだ。
彼が僕達の前で初めて怒りを露わにした瞬間だった。
「証拠なんて1つもないくせに! 何を言うか!」
「証拠なら、あるぞ」
「なにぃ?」
レンの一言に飯淵くんは動揺した。
やっぱり、彼は知らなかったんだ、この部屋が特別な部屋だったことを。
土台は出来た。あとは、僕が最後の切り札を出すときだ。
「飯淵くん、知ってた?」
「何をだ!」
「このコンピューター室ってね、監視カメラがあるんだよ、しかも音まで撮れるやつ」
「な、なんだと?」
やっぱり。
この情報はきっと教室をよく見回す人しか知らなかったんだと思う。だって僕も今朝知ったんだからね。
僕はコンピューター室の右後ろに立ち、その角に指をさした。そこには、気づく人は気付く球体があった。
「ほら、ここに」
「な、な、な……」
そして、もうひとつ。
僕はポケットに無理やり詰め込んだ一つのケースを出した。
「な、、なんだそれは」
「DVDだよ。この監視カメラのね」
「!?」
お昼頃、職員室に行った時に焼いてもらったんだよね。うちの学校の先生って優しい。
「どうする? 飯淵くん、見る?」
「ぐぬぬぬ……!」
「今ここで点けてもいいんだよ?」
「………!!」
もう言葉も出ないらしい。
「もういいですよ〜」
「……なっ!?」
萌栞先生が手を叩き、終わりを宣言すると飯淵くんはその場に崩れ落ちた。
「私は……、私は……、完璧な学園生活を提供したかった……、ただ、それだけだったんだ……」
その言葉を最後に彼は萌栞先生に連れていかれた。
萌栞先生には証拠として、DVDを持って行ってもらったけど、あれは見てもらえるのかな?
その後、姉さんの退学の話は消え、代わりに生徒会長飯淵くんが退学処分になった。
この騒動のトリックは単純だったみたいで、飯淵くんは姉さんを「文化祭のポスター作り」と偽りコンピューター室に向かったらしい。そこで、作業をし、姉さんがトイレに立った瞬間に何かしらキーを押すと個人情報が流出するようにパソコンに仕組んだんだ。正直どうやってそのプログラムを作ったのか謎なんだけどね。で、姉さんが戻ってきて文字を打ち込もうとしたら個人情報流出、それを飯淵くんが防いで、姉さんを悪人に仕立て上げた。自作自演だった、てわけ。
「うーん、あたしあの時酷い言われようだったよね?」
「そうか?」
「そうだよ! 森とブッチー二人揃ってあたしの事を「ああ見えて〜」って!」
「仕方ないじゃん姉さん。ってか、ブッチーって飯淵くんのこと?」
「そうだよ!」
「ま、またあだ名つけたの……?」
「よく思い浮かぶよ」
「なんでそんなに思い浮かぶのか謎です」
さっきまで退学になっちゃうかもしれなかった姉さんは、何事もなかったかのように今、こうして僕達と家へ帰っている。
たった二日間の出来事だったけど、その二日間が僕にとっては非日常だった。
「やっぱりいつもの日常が一番だよね」
「何してんのしーん! 早く帰ろー!」
「うん、そうだね!」
ここで一応四月編終わりです。
書きなれないシリアス調でしたので、至らないところもあると思います。
おかしな所や、クソつまらない所などあったら教えて下さい。直します。
では、また1ヶ月ぐらい後にお会いしましょうね。