にぃ(林)
相変わらず下手な文書だ……。
誰か僕に文章力分けて……。
ふわあああ。心の中であくびする。
「姉さん、すごいあくびだね」
「だって眠いんだもん」
というか表に出てたの? あくび。
笑いながら森が聞いてくるので、適当に返す。
だけどね、本当に眠いの。確か昨日はアニメを見て、ゲームの実績を解除して、パソコンで動画を見て寝た。十二時までには寝た気がするのになあ。
「姉さん昨日は色々とハシゴしてたからね、寝てないでしょ?」
寝たよ! ……三時頃に。
全然十二時じゃないじゃんあたし……。
なんていう気力もないので、重い瞼を開けるてることだけに集中する。
やばい、眠い……。森におぶってもらおうかな……?
そっと森を見ると、うーん、何も考えてない。これは、行ける?
なんて考えながら歩いていると道の先に見覚えのある鬣が見えた。あれは……。
「おーい! れーんれーん!」
あたしがそう呼ぶと、れんれんはこちらを振り向き、不機嫌そうにこちらに歩いてきた。
あ、あれ? 何かした?
「れんれんいうな!」
そう言って森に手を差し出し、それを見た森はカバンの中からスリッパを取り出しれんれんに渡す。
次の瞬間れんれんは、スパーン! とスリッパであたしの頭を叩いた。
「いったーい! なんで叩くの!」
「れんれんいうな! って!」
最後にポスンとスリッパであたしの頭を叩いて、れんれんは頭を撫でてくれた。
こ、これが飴と鞭ってやつ……?
んでも気持ちいい〜。
撫でられるのが気持ちよすぎて、頬が緩む。うへへ〜。と、あたしが笑っているとれんれんは恥ずかしそうに頬を赤らめ、手を引いた。
「ん? 何でやめたの?」
「いや、恥ずかしくなってな……」
「?」
あたしがれんれんの言葉の意味を考えていると後ろから声を掛けられた。
「な、なにしてるんですか?」
お? この声は──
「陽くーん!」
「あ、おはよう林」
──この声はクラスメイトの陽くん!
近所に住んでいる二年会計の子。男の子なのに綺麗な黒髪で、あたしでも嫉妬しちゃう。
陽くんはあたしが挨拶をすると笑顔で返してくれる。この笑顔がまた可愛らしい。ホントに男の子だよね?
ちょっと不安になってきた……。
「おはようございます。森さんに煉河さん」
陽くんはあたしの悩みを察するわけもなく、れんれんと森に挨拶をする。
「おはよう、陽くん」
「おはよーさん、陽」
陽くんの挨拶に続き、森とれんれんも答える。
たった二日で仲良くなったんだよね、この三人。まあ、森もれんれんやスイカちゃんと二、三日で仲良くなったしいつも通りかな?
その後あたし達は色んな話をしながら駅前を通り過ぎようとした時……。
「み、みんなー! おはよー!」
と後ろから声を掛けられ、振り返ってみると綺麗な髪を今日もストレートに下ろしているスイカちゃんが走っていた。
「おはよ! スイカちゃん!」
「お、おはよー、林ちゃん」
すっごい息が乱れてる……。大丈夫? スイカちゃん?
「なんで走ってきたの河川ちゃん……」
「み、みんながハアハア、いたからハアハア」
「だからって走るこたァねぇだろ」
「呼ぼうとしたけどハアハア、恥ず、かしく、てハアハア」
は、恥ずかしかったんだ……。
まあそんなこんなで、いつも通りのメンバー。
いつも通り話しているともう校門近くで、いろんな話をしてると楽しくなって。学校に着くのが早いと思っちゃう。
校門を抜け、昇降口、階段までは一緒。その先は三年と二年で分かれる。っても、階は同じだから休み時間ごとに会える。
「ふひー眠いよー」
自分の席に着いて即寝よう。そう思っていたのだけど陽くんが話し掛けてきた。
「朝から眠そうだもんね。でもダメだよいま寝たら……いや寝といた方がいいのかな?」
んにゃ? なにが言いたいのか分かりましぇん。
頭をかしげて悩む陽くんの声が段々と聞こえなくなり、意識が眠気に飲まれていく。もはやあたしの本能は寝ろと言っている。寝なさいと!
むにゃあ、おやすみぃ〜。
「やっぱり寝といた方がいいね──ってもう寝てる!?」
かすかに聞こえたその声を最後にあたしは本格的な睡眠に入ろうとした。
だけど、寝れなかった。
寝ようとした真っ最中にドアがバーン! と開いてその音で起こされちゃった。
「にゃ、にゃに〜?」
「あ、林起きた? あと猫語になってるよ」
「にゃ? そんにゃ事無いにゃー」
「どんだけ眠いの」
自由の女神像位かな? 自由の女神がどのくらいかは知らないけど。
「ものすごーーく眠いよー。でも、教室のドアがバーン! って開いたから目ぇ覚めちゃった」
「それは済まないな」
んなに? この堅物な声。
視線を上げるとそこにはネガメ──じゃない眼鏡をつけた生徒が立っていた。
「……だれ?」
「林!?」
あたしの言葉を聞いて陽くんが素っ頓狂な声を挙げる。
いや、本格的にだれ?
「林この人は生徒会長だよ」
「せいと、かいちょう?」
生徒怪鳥? なにそのイャン〇ックみたいなの?
そんな役職うちにあったっけ?
「その区切り方やめてよ! 案外面白かったし!」
「陽いま何と?」
「あ、いえ何でもないです。ところで今日は何か御用で?」
陽くんさり気ない爆弾発言を見事にフォローし、スルー!?
あの子只者じゃない……!
……というか生徒会長って気さくな人が多いと思ってたのに、こんなアニメみたいな厳格な生徒会長いるんだ。ホエー。
あたしが面白いものを見る目で見ているとこちらに気づいた生徒会長がこちらを向き一言。
「なにか?」
「ううん、なんでもないよ」
「そうか。……君、年上には敬語を使うものだろ」
「?」
「君は敬語を知らないのか?」
それぐらい知ってるよ。謙譲語とか尊敬語とかでしょ?
「あたし一応三年だよ?」
「なに?」
「留年しただけだから、年は変わらないよ?」
あたしがそう告げると生徒会長は顔を青くし後ずさった。
な、なに? その治療不可能なウイルス患者をみたお医者さんみたいな反応。
「どうしたんです? 会長」
「ば、バカがうつる……!」
「ほえ?」
あたしが席を立つと、
「や、やめたまえ! うつるじゃないか!」
失礼なことを言い出しさらに後ずさる生徒会長。
バカって病気なの……? いやいや、そんなわけないよ!
あたしは生徒会長へ向かって足を進めると生徒会長は恐怖に染まった顔であたしを見てきた。
どこまでも失礼な人だな!
「あのね、バカはうつらないよ。バカと一緒に勉強したら身につかないだけでね、バカはうつらないの」
失礼な生徒会長に優しく語りかける。
すると失礼な生徒会長は今までの自分の失態に気付いたようで即座に立ち上がりあたしに頭を下げ、
「済まない。頭が悪い人だと認識するとこうなってしまうんだ。ほんとに済まない」
え、なんでこの人生徒会長になれたの?
あたしの感覚がおかしいのかな? この人に学校の生徒代表を任せていい気がしないんだけど……。
というかこの人は陽くんに用があるんじゃないのかな?
「あの生徒会長? 僕に用があるんじゃないんですか?」
「そ、そうだったな」
ここで生徒会長が咳払いをし、口を開いた。
「陽、私は君の妹さんも生徒会に入れたいんだ」
「あーそうですか。妹も会計をしたいと言ってたので、ちょうどいいと思いますよ」
ほえ〜妹ちゃんも〜。ん? 妹……?
「妹!?」
「んあ!? な、なに林?」
「陽くんって妹いたの!?」
「え、い、いるけど? な、なに?」
なにって! なんで言ってくれないの!
今学期一番のカルチャーショックだよ! カルチャーショックの意味わかんないけど……。
「ま、そういう事だ。彼女は推薦してあるから、放課後生徒会室に来てくれ」
「あ、はい」
それだけ言うと失礼な生徒会長は教室を出ていった。
色々と失礼な人だったなあ。
失礼な生徒会長との会話のあと、入学式が始まった。今年も新入生の数が多いなあ……。
多すぎる新入生一人一人の名前が読まれていく中、あたしは眠気と格闘していた。
ね、寝ないよ……あたしは。寝ない、寝ない、寝な……。
「…………」
「ちょ、林! 寝ないでよ」
「んあ? 寝てないにゃあ〜」
「寝てたじゃん……」
寝てないって〜。
またウトウトし始める。ダメだ、寝よう……。
先生にバレない程度に体を傾け、寝やすい体勢にする。ここ、この勘だけど45°がぴったし。
みんな〜おやすみぃ〜。
『次に新入生代表』
んあ? 新入生代表の子には悪いけど、あたしは寝ます……。
『黒沢光さん、お願いします』
「なぬ!?」
「うおわ! どうしたの林!?」
「く、黒沢って……! 黒沢って言った!」
「そ、そうだね……言ったね……」
黒沢光って言ったよ!
眠気が吹き飛び、あたしの視線は壇上に向いた。
壇上には陽くんと同じ綺麗な黒髪の女の子が立っていた。すごく可愛い、声が綺麗……。
あの子が……陽くんの妹ちゃん。
その後も式中あたしは起きてたよ。でも、全然頭に入ってこなかったし、校歌すら歌えなかった。
「うーん、あの子が陽くんの妹ちゃんかあ……」
「そうだよ、身内だからかもしれないけど、可愛かったでしょ」
「うん、可愛かった」
あんな子が身内にいるんだから羨ましい。
あたしが姉にいる森は幸せ者だね!
あ、そう言えば……。
「あの子も、生徒会会計になるの?」
「多分なると思うよ。ほら朝に会長言ってたでしょ『推薦しといた』ってさ」
ほえ〜。
兄妹揃ってお金に強いのかな? なら、あたしの経済状況を改善してほしいよ。
うーん、会ってみたいなあ。
「ねえねえ陽くん」
「なに?」
「あたしも生徒会室に行っていい?」
「……へ?」
「だーかーらー! あたしも生徒会室に行ってもいい?」
「だ、ダメだよ。何か用がなきゃ」
「えーなんでー」
もう、陽くんのいけず!
いいもん、今度陽くんの前でクレープ美味しそうに食べてやる!
あたしがプイッと顔を逸らすと、陽くんが困ってる気配を感じた。
あれ、あたし酷いことした? いやいや、してない。ただそっぽ向いただけだもん。
チラッと横目で見ると陽くんは呆れたようにあたしを見ていた。呆れられてる!? ウッソ!
呆れられてる事にビックリしていると、不意に教室のドアが開き、入学式でみた綺麗な黒髪が目に入った。
あ、あの子は──
「陽くんの妹ちゃん!」
「ふぇ? そ、そうですけど……なにか?」
おー! この距離でも可愛い!
あたしは席を立ち陽くんの妹ちゃんに近づく。
結構背が高い。160はあるかな?
「可愛い……」
「ふぇ!? な、なんですかいきなり…………」
あたしが漏らした感想に反応し陽くんの妹ちゃんが頬を赤く染める。そんな反応すら可愛い。
むぅ、なんでこんなに可愛いの?
あたしがジーッと見つめると更に頬を赤くしていき、茹で蛸みたいになっていく。
と、見かねたのか陽くんが、
「光、僕に用?」
「う、うんそうよ」
助け舟を出した。
陽くんの妹ちゃん──光ちゃんというらしい──はあたしの隣を抜け陽くんに近づく。
「お兄ちゃん、わたしも生徒会に入るわ」
「うん、知ってる」
「ふぇぇ!? なんで知ってるのよ!」
「今朝ね生徒会長に推薦したって言われたからね」
光ちゃん、いちいち反応が可愛い。
あたしは光ちゃんをみてニヤけていると後ろから、
「何ニヤけてんだお前」
と声を掛けられた。
お、この声は──
「れーんれーん! ブゴハッ!」
れんれんの名前を言った途端に頭を叩かれた。
「いったーい! なんでたたくの!」
「今朝も言ったろ! れんれんって呼ぶなって!」
うう……。あれ、冗談だと思ってた。
「姉さん、これは仕方ない」
「なんで助けてくれないの! 大好きなお姉ちゃんがスリッパじゃなくて手で叩かれてるんだよ!」
「もう一度いうね姉さん。……仕方ない」
「なんでそんな事言うのよ!」
もう、森なんて知らない!
「林ちゃん大丈夫?」
うう、スイカちゃんの優しさが染みるぅ〜。
「スイカちゃん、あたしのお姉ちゃんになってぇ〜」
「ええ!? む、無理だよお……」
知ってた……。
あたし達の様子を見ていた陽くん達がこっちに歩いてきた。
良く見ると、光ちゃんが陽くんの後ろに隠れている。あたしを怖いものを見るように見てくるし……。あれ? 何かやった?
「えっと、みんな。そこを開けてもらえる?」
「おう、すまね。おい林はやくどけよ」
ねえ、あたしにだけあたり強くない?
「あー、その子。やっぱり陽くんの妹ちゃんだ」
と、森が光ちゃんに気付き、話しかける。
フッ、無駄よ森! あたしの事を怖いものを見る目で見た子が! 森をまともに捉えるわけ────
「はい、えっとお兄ちゃんの友達……ですか?」
「うん。僕は森林森」
「わたしは黒沢光といいます。よろしく──あら? 森林?」
「一応僕はご近所さんだよ」
「ああ。やっぱり」
あれ!? なんで!?
あたしのことを怖いものを見る目で見たのに! なんで世間話してるのよ!
「俺は火野煉河、でコッチが水谷河川」
「よ、よろしくお願いします……。水谷河川といいます……」
「はい。お兄ちゃんの友達なら今後ともよろしくお願いします」
ええー!? スイカちゃんは分かるけど、れんれんを怖がらない!?
なんの違いがあるの!?
「あ、あのね。あたしは森林──」
「──知ってます」
「森林林って──え? 知ってる?」
いつどこでってそっか! あたし学校のアイドルだもんね! 新入生まで知ってるなんて、さすがあたし!
そう思い頬を緩ませニヤニヤしていると光ちゃん──みっちゃんが口を開く。
「ええ、生徒会長から聞きました。……問題児だと」
「そうかあ。生徒会長さんもあたしのことを……問題児!?」
「ええそういう風に聞きましたよ?」
どこまでも失礼な人だなあ……。
もう、あたしのことを問題児だなんて! 校長先生にしか言われたことないもん!
萌栞先生は「こせいがあるってことだよ〜」って言ってくれたし!
「もう……帰る」
「ね、姉さん?」
「どうした林? お前らしくねぇぞ?」
「そ、そうだよ林ちゃん。林ちゃんらしくないよ」
もういいもん。あたしは問題児だもん。
「あわわわ……。ただの冗談だったのに……」
「え、光あれ冗談なの?」
え、冗談なの?
「ほんとに?」
「あの、そんなに落ち込まれると思ってなかったから……」
な、なーんだ。そうだったんだ。
冗談なら良かったとホッとしたあたしをよそに、陽くんがみっちゃんを叱ろうとしてるのが見えた。
あれー? これはまずいのでは……?
「光! 言っていいことと悪いことがあるだろ!」
「ご、ごめんなさい! でもお兄ちゃん? そんな小学生に怒るみたいに怒らなくても……」
うん、確かに小学生を怒る口調だった。
でも陽くんは言い訳と捉えたのか更に表情を固くしみっちゃんの肩をガシッ! と掴んだ。
「なんであんなことを言ったんだ!」
「うう……。だって、可愛いって言われて、わたしをからかってるんだと思っちゃって……」
ええー!? からかってると思われたの!?
それは初耳……。って! そうじゃないよ! 陽くんを早く止めないと。
あたしは陽くんに近づき手を取った。陽くんは驚いたようにあたしを見て申し訳なさそうな顔をしている。
うう、そんな顔しないでよ。あたしも悪いのに……。
一度バレないように息を吸い陽くんの目をキッと見る。
「あたしはもう大丈夫だよ? それに誤解させちゃったあたしもわるいし、これはえっと……喧嘩両成敗? だよ!」
「林……」
「森林さん……」
あれ? あたしいい事した?
二人は驚いた顔を見合わせ、あたしに向き直った。
すると、
「喧嘩両成敗ではないね」
「喧嘩両成敗って事ではないと思います」
「……」
え?
喧嘩両成敗じゃない……?
じゃあこれなんて言うのよ! 両成敗してないって事? なに? あの時あたしは何を言えば良かったの!?
「あ! お兄ちゃん! 時間」
「え……? オア! 本当だ! ごめん林、後でちゃんと謝るから。光いくよ!」
ええー。
あたしの中では謝る謝らないではなくて、喧嘩両成敗じゃないって言葉が駆け巡ってるんだけど……。
あたしが呆然と立ち尽くしていると、森がポンッと肩を叩き教室へ帰っていった。それに続いてれんれんも肩にポンッと手を置き教室へ、スイカちゃんは「あはは……」と笑って教室へ戻っていった。
「……」
自分で言うのもなんだけど、いつも周りを振り回しているあたしが振り回された日だった。
合格祈願の御守りを買ってもらったので絶対に受かって、電撃文庫の新人賞も取る!
(取りたい)
アドバイスお願い致します。誤字脱字などの御指摘、辛口な意見ドシドシ受け付けてるので。