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sky the step  作者: 綾野 朱凜
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リスタート

蒼き翼



「今日の天気です。今日は、全国的に晴天となるでしょう。絶好の行楽日和となりそうです。一方、気温が例年に比べ、高くなりそうです。熱中症対策をシッカリとしてお出かけください。」

テレビを付けると、ニュースをやっていた。

只今の時刻。午前6時30分。日曜日にこんなに早く起きているのは珍しいだろう。

今朝の起床時刻は午前5時。

なぜ、私がこんなに早く起きているのか。

そう。今日は……。

「よっしゃぁああ!!晴れたぞ!!」

そう。今日は航空祭の日なのである。

こんな田舎ではあるが、割と大きい航空基地があり、年に一度の楽しみなのだ。毎年、前日練習も見に行くのだが、生憎、勤務が合わず見に行けれなかった。

私は、カバンに一眼レフのカメラとその望遠レンズと日焼け止め、そして財布を突っ込み、飼い猫に餌を与え

「行ってくるね」

と声をかけ、車の鍵を手に取り、ブルーインパルスのロゴが入った帽子を被り、家を出た。

私の愛車は、オープンカータイプの車で、車体の色は白。オプションでサイドミラーを水色にしてもらった。私の最近の流行りは、ドアを開けずにドアを乗り越えて車に乗ること。19にもなるいい歳した大人が何をやってんだかと言われるかもしれないが、たまに人がいないところでやるのが楽しいのだ。

先にカバンを助手席に置き、車から距離を置き、軽く助走をつけて

「よっ…と。」

と、まるでアクション映画のように軽やかに座席へ座った。

成功の満足感に浸りながらも、時計を気にしつつ、エンジンをかけ、家を出た。

高速道路の手前のコンビニで、ペットボトルのお茶を三本と、朝食、昼食を買った。

航空祭の会場で食べ物を買うと、割とお金がかかる。グッズを買うために、余計なお金は使わないようにしているのだ。

店を出たところで、ある青年に声をかけられた。黒髪の背が高い、美青年だった。

「あの〜すんまへん。ちょっとええですか?」

「はい?」

「こっから、美保基地ってどう行ったらええですか?」

あぁ、この人も私と同じか。そう思い、

「私も今から向かうんですけど、よかったら後ろ、ついて行きます?不安だったら一緒に乗って行ってもらってもいいですけど。」

「ええんですか!助かります。ほな、一緒に乗ってっても?」

「構いませんよ。」

私が車の方へ向かうと、

「はぁ〜えらいかっこええ車ですね。」

「ありがとうございます。どうぞ。狭いですけど。荷物、要らないもの下さい。トランクに入れるんで。」

彼から荷物を受け取るとトランクに入れ、私の荷物も一緒に入れた。

それから車を発進させ、高速道路に乗った。

「お姉さん名前は?」

「中島です。中島 里緒。あなたは?」

「園田 薫です。よろしくお願いします。」

「園田?いい名前ですね♪私の好きなパイロットさんと同じ名前です。」

「もしかして、5番機に乗ってた園田 健二さん?」

「そうです!知ってるんですか?」

「当たり前やないですか。ブルーインパルス好きで園田さん知らへん人なんて、おらへんよ。」

「園田さんはどこのご出身なんですか?」

「僕?僕は京都出身やけど、家の事情で大阪に10年ぐらいおるんですわ。」

「そうなんですか。」

「里緒さんは、おいくつなん?」

「何歳に見えます?」

「せやなぁ……21ぐらいにしとこか。」

「19です。」

「えらい大人っぽいですね。僕の3個下やないですか。」

「園田さん、22歳なんですか?もっと若く見えますよ。」

「おおきに。里緒さん………里緒ちゃんって呼んでもええ?」

「えぇ。大丈夫ですよ。」

「里緒ちゃんってなんの仕事してはるん?」

「普段はカフェ店員をしてます。」

「カフェ店員かぁ。かわいらしいなぁ。」

「園田さんは?」

「僕?僕は、小説の編集とか、校閲とかしてんねん。」

「本当ですか?私、一応小説も書いてるんですよ。」

「それ、ホンマ?え、なんていう名前?」

「綾野 朱凛です。」

「えっ?マジで?この前のヒューマン小説コンテストで優勝してるやん!マジかぁ………僕、あのコンテストの審査員やってん。」

「本当に⁈マジっすか………」

それから仕事の話や、自衛隊の話をした。

「さて、そろそろ喋ってられなくなってきましたね………」

「え?どーゆー事?」

私は笑って答えた。

大通りを一本外れて小さな路地を走る。

「ちょ、里緒ちゃん?この道あってるん?」

「当たり前じゃないですか!地元民ですよ。それにこっちの方が早いんです」

さらに奥へ奥へと進み、しばらくすると空港近くの大通りへ来た。

「駐車場あるかなぁ。」

「里緒ちゃん、今何時やと思ってん?まだ8時やで。」

「うそ!もう8時?やばい。無いかもしれない」

私は急いで空港に入り、なんとか車を止めた。

「凄い人やなぁ。こんなに多いんや。」

「うん。毎年こんな感じ。もしかして初めて?」

「うん。それにしてもやっぱり暑いな。」

「そうだね。さてと、行こっか。」

私たちは2人で基地へ向かった。

荷物検査を終え、基地へ着くともう、人で溢れかえっていた。

今年、3周年を迎えるC2や、今では、レア機となりつつあるC1などがエプロンに並んでいる。

2人で感嘆の声を上げていると、ふと、私のケータイが鳴った。

「はい。もしもし。あ!園田さん!はい、はい。あ、はーい。じゃぁ、C2格納庫の前にいますね。はい。はい。はーい。失礼しまーす。」

「里緒ちゃん?今の電話って…。」

「元、ブルーインパルスのパイロット、Edenこと、園田さんだけど?」

「え?知り合いなん?」

「高校生の時に書いたブルーインパルスがテーマの小説が賞を取った時に、それが園田さんの耳に届いたらしくて、取材させてもらって、それからの付き合いかな。」

「マジかぁ。ホンマ凄いなぁ」

と話していると、

「里緒ちゃーん!久しぶり!」

「Edenさーん!お久しぶりです!」

私たちはお互いに近づき、まるで展示飛行を終えたブルーインパルスのクルーのように、再会を喜びあった。ガッチリと握手をした。

「元気そうだね。また、綺麗になったんじゃ無い?」

「本当ですか?ありがとうございます!」

「里緒ちゃん、その人彼氏さん?」

「あぁ、ちゃいます。ちゃいます。」

と言って彼はEdenさんに自己紹介と私達が知り合った経緯を話した。

「なるほどね。それにしても奇遇だね。苗字が同じだなんて」

「Edenさん、今日はお休みですか?」

「うん。無理言って四連休取って来ちゃった。まぁ、その分今月はちゃんと働いたけどね。」

私はそれに笑顔で答えた。

「さてと、行きますか!」

私達、不思議な縁で繋がった摩訶不思議な3人は人混みの中へ繰り出して行った。



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