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共通① 始まり


森の深く、私は空を眺めていた。

かすかに喉が乾く感覚はある。

けれど飲み物も食べ物もなくなった。

空腹はひどくなりもうなにも感じなくなった。

きっと少しずつ、天に近づいているのだ。


――――だんだんと、暗闇は迫る。

重い目蓋が、瞳から光を奪っていく。


――――――私はこのまま死んでしまうのだろうか?


『お嬢さん。ごきげんいかがかな』


ぼんやりと歪んだ男の姿、声だけが耳へ。


『君はこのままだと、死ぬよ』


嫌だ。


『……死にたくない』

―――――――――――




〔お腹減ったなああああ!!〕

「……静かにして、私が叫んだと思われるでしょ!!」


〔お腹が減ったなあ……〕

「はいはい……わかったわ。

適当な小動物をシめるから、静かにしてて!」


私はいま、ペンダントの中の男と会話している。


なぜ、そんなありえないことをしているか。話はさかのぼること10年前。


私は森の小さな家で、父さん母さんと暮らしていた。


森の近くで大型の獣が暴れて、両親は私を逃がすのに精一杯で、獣に殺された。


当時まだ小さかった私は空腹で死にかけていた。


そこで私を助けたのが、吸血鬼のガブリス。

助けたといっても、食べものをくれたわけではない。

与えられたのは彼の血だった。


ただ、永遠の命と身体能力が備わった。

彼は私を吸血鬼にかえた代償で実体をなくし、ペンダントで回復中なのである。


その恩を返すため、私は首からペンダントを下げて、彼の力の回復をサポートをしている。


〔……ロウゼッタ、あとをつけられている。〕


おそらくバンパイアバスター。

彼等は吸血鬼を殺すことを生業としている組織。


きっと人の多い所なら、武器を振り回すことはしない。


それに私が吸血鬼だと、まだ知られたわけじゃないはず。


私は吸血鬼となったが、太陽の下を歩けるし、吸血はしない。

十字架、聖水、ニンニク、木のクイ、銀の弾丸、の影響も受けない。


だけど不死なので捕らえられたら最後、苦しみながら生きることになるのは目に見えている。


人混みに紛れてまこう。

―――――



「ここまでくれば……」


「うわああああ!」


男の悲鳴が聞こえたきがした―――――


〔なにかいるよ。人間ではないね〕

いったいなにがあったんだろう。

私はいてもたってもいられなくて、声がしたほうへ向かった。


「どうしたんですか!?」


黒と白を基調とした衣服、おそらく神父の少年が、割れたビンの散らばる場に立ち尽くしていた。


〔下級ヴァンパイアか……〕


自我をなくした吸血鬼がたくさんの人を襲っていた。

たぶん神父の少年は彼等を助けようとして、歯がたたないんだ。「いくよ、ガブリス!」


吸血鬼となった日にガブリスから教えられたが―――――どうやら私には魔女の血が流れているらしい。


〔やれやれ、回復からまた一歩遠退いたなァ……〕


私は力を一点に集め、はぐれ吸血鬼へ叩きつけた。


「すごい……貴女は女神様ですか!?」


神父少年に盛大な勘違いをされてしまった。

いえ、吸血鬼です。とは言えないし、曖昧に返事を濁そう。


「……司祭様に報告しないと!

ささっ、女神様どうぞこちらへ!」


「いいえ、私は、困るわ……」

――――――――



吸血鬼の墓場、もとい教会へ連れてこられてしまった。



「ポピエル、貴方はまた……!

すみませんお嬢さん。」


「いえいえ~じゃあ私はこれで……」

「待ってください。近頃は吸血鬼が頻繁に出没しています。

くれぐれも夜道を一人であるくような真似はしないでください」


ミルドエル司祭が真剣な顔をしている。


「……ええ、もちろんです」

夜じゃないのに、さっきいたけどね。


「貴女は吸血鬼を倒したそうですね」


すうっと、帰ろうとしたのに、呼び止められてしまった。

やはり疑われているようだ。


「し、司祭様……疑わしきは罰せずっていいますよね?」


「疑うなどまさか……女神様がご降臨なさるとはおめでたいですねホピエル」


「はい!」


よし、いまのうちに出よう。



「ふう……」

〔あーまた力が減った気がする〕


「しかたないでしょ、あそこで逃げたら怪しいもの」


そろそろ夕暮れ、今日の宿屋を探さないと。


「おいしい?」


ガブリスがペンダントから匂いだけ食べる。


〔うん〕


彼がこうなったのは私を生かしたから。

やっぱり罪悪感があるわ。


早く元の姿に戻して、食べ物を匂いだけじゃなくて、味や食間も楽しめるようにしてあげたいな。


翌日、宿から出て再び町を歩き始めた。


〔ロウゼッタ、ヴァンパイアバスターの気配が近い!〕

挿絵(By みてみん)

――――まずい。油断していた。


「ちょっと待ってよ、そこのかわいこちゃん」

挿絵(By みてみん)


ガブリスの言葉通りにヴァンパイアバスターの男が現れた。


「私に何か用?」

怪しまれないように、冷静に対応する。


「オレ、ヴァンパイアバスターなんだけど、この辺りで吸血鬼を見なかったかな」

「見ていないわ」

そらすと怪しまれるので、目をはっきり見て答えた。


「そうか……じゃあね、吸血鬼のお嬢さん」

男は手をひらりひらりと振って去る。


「え……?」

彼はなぜか私が吸血鬼だと気がついていながら見逃した。


私のことはいつでも殺せる。きっとそれを意味しているのだろう。



「なあ聞いたか……」

「ああ」

街中を歩いていると、噂話が聞こえてきた。


「夜な夜な吸血鬼のボスが暴れまわってるらしいな」


―――吸血鬼をかばうつもりはないが、こういうものは大抵森からでできた獣が暴れているとか、そういうことだったりが多い。

吸血鬼はガブリスの回復に使えそうだから、念のため調べてみよう。


〔ロウゼッタ。その吸血鬼を調べるのはやめておいたほうがいい〕


(どうして?)


〔ただの獣ならまだいいが、もしも本当に吸血鬼だったらどうするんだ〕


(でも、私ってそこらの吸血鬼より強いじゃない。

もちろん貴方からもらった力の強さもあるだろうけど)


〔雑魚ならいいが、もしも始祖に匹敵する強さだったら〕


(たしかに始祖ならまずいわね……どうしよう)



→【わかった。ガブリスのいうとおりにするわ】

【えー。いやだ!絶対調べる!】


〔懸命な判断だ。さあ何か食べよう!〕


(ガブリス貴方もしかして、食事したいだけなんじゃないの?)


〔ははは、まさか〕

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