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8話 俺とブラック・ディアーと解体所

鑑定してみると間違いない。ブラック・ディアーと表示される。

鹿型魔物らしく頭に大きな角が生えている。アレで刺されたら痛いじゃ済まなさそうだな。

さて、奴はこちらに気付いていない。ヨーヨーにこっそりと攻撃しろと言えばやってくれるんだろうけど、今回ヨーヨーは休憩してもらおう。

ヨーヨーに頼り切ってはこれから先、キツイものになるだろうから少しでも戦って成長しなければ。

と言っても無理な運動が出来ない俺が近接戦なんて到底無理だ。だから朝手に入れたばかりのあれを試運転として使ってみようか。


風魔法に意識を集中すると不思議と使い方が頭の中に流れ込む。

ふむふむ、なるほどなるほど?こう対象に向かって右手を突き出して?右手に力を流し込むような感覚を思い浮かべて?唱えると


「"風弾(エアショット)"。っとわぁ!?」


手のひらから強烈な風の弾が飛び出た!?しかもその反動で俺自身が吹っ飛ばされたがヨーヨーに何とか受け止めてもらった。

あーくそ、また口から血が出てきやがった。

ブラック・ディアーはどうなった?もしかして逃げられたか?


風弾が通った後は草が避けるように広がっていた。その先を進んでみると……あ、いた。

まだ息はあるが、風弾の勢いで巨木にぶつかったのか、ピクピクと震えるだけだ。鳴き声を発することすらままならないようだ。

可哀想だが、この世は、特にこのファンタジーな世界では弱肉強食だ。

俺は息も絶え絶えのブラック・ディアーの喉元にナイフを突き刺し、絶命させた。


うーん、いい気分なわけじゃない。もちろん抵抗はあったが、仕方ないと自分に言い聞かせる。

そうでもしないと、こいつを殺した罪の意識でさらに吐いてしまいそうだからな。

そうじゃなくても今ちょっとえづきそうなんだけどね。

ところで、こいつどうしようかな。でかいし、俺は持って行けそうにないぞ?


ヨーヨーも無理だと体を横に震わせる。

じゃあアイテムボックスに入るんじゃないのかな?とやけくそ気味にブラック・ディアーの死体の足をアイテムボックスの中に入れると――うぉっ!?掃除機の如く吸い取りやがった。

……びっくりしたが、これで解決だな。よし、ギルドに戻ろうか。



「あの、戻ってくるの速すぎじゃないですか?普通ブラック・ディアー探して狩って来るまで半日かかるんですよ?」

「そう言われても……」


俺とヨーヨーは自分のペースで特別何かをしたとも思えない。ブラック・ディアーと遭遇できたのも運が良かったからだし他の冒険者のスピードなんて知ったこっちゃあない。

だからパムルさん、そんな変なものを見る目止めてください。そこは尊敬するようなまなざしで見て下さい。


「流石はブーシェさんが言ってた人だけありますね。ついてきてください、解体所まで行きますので。」


その口ぶりからしてブーシェさん昔は俺の様な冒険者だったのだが、膝に矢を受けてしまったアレなのだろうか。

ん?


「解体所?」

「えぇ、今回の依頼はあくまでブラック・ディアーの肉ですからね。解体して肉と別の部位……皮などに分けるんです。依頼の部位意外は冒険者のものとなります。」


なるほどね、確かに料理人が鹿の皮貰ったところでどうすることもできないだろうし皮の買い取り分金がかさむ。

なら冒険者が頂いた方がお互い損はない。

俺の場合皮はどうしようかなー触った時見た目と反してふわふわしてたからコートにしてみようか。


そうこう考えてるうちに解体所に着いたみたいだ……うっ血の臭いがキツイ。吐きそう。

何とか腹に押し込めて吐くのは阻止したぞ……だが進んで入りたくはないな。せめてマスク、近くで売ってないかなぁ


何やらパムルさんが血の付いたエプロンをしているおっさんと話し込んでいる。

あのおっさんが解体する人なのか、会話が終わると俺に近付いてきた。


「おう、兄ちゃんがブラック・ディアーを狩ってきたんだってな。どれ、見せてみな。」

「分かりました。」


アイテムボックスに手を突っ込み、ブラック・ディアーの死体を取り出す。

取り出す際には力は必要ないみたいで重さを感じることなく床に置くことが出来た。


「ほぉ!兄ちゃん、いい個体を狩って来たじゃねぇか!」


ん?いい個体?


「ブラック・ディアーに良いも悪いもあるんですか?」

「あぁあるな。兄ちゃんが狩ってきたコイツ、角がでけぇだろ?普通のブラック・ディアーじゃそうはいかねぇんだ。良くて人の親指程度しか生えてねぇんだ。」


え、そんなに小さい角なのか。それに比べたら俺のブラック・ディアーは親指どころじゃない。大人の腕に相当する長さを持っている。


「恐らくこいつはブラック・ディアーのボスに近い存在だろうな。それを見つけるたぁ運がいい。」

「確か肉も全然質が違うんでしたっけ?」

「おうよ、俺ぁちょっと長いくらいの角のブラック・ディアーの肉を食ったがそれだけでも大分違ったぜ。」

「となると、ケンさんの報酬も追加されますね。」


話を聞いているうちに俺の報酬が増額したようです。増えるのならそれに越したことは無いな。有難くいただこう。

しかし角か。それももらえるみたいだけど何に使えるんだろ。


「角って何かに使えるんですか?」

「こいつの角はな、特効薬になるんだよ。」

「特効薬!?」


おっと思わず大声を出してしまった。おっさんをビックリさせてしまったな。

だが、特効薬とは聞き捨てならないな。もしかしてその特効薬は――


「喀血症に使えるんですか!?」

「喀血症?いや?それには効かねぇぞ。」


慈悲は無かった。

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